2024年を象徴する出来事【5月 京都・八坂神社の一件】あるインバウンド系観光事業者の声
京都・八坂神社の件とは
2024年5月23日夜、京都市東山区に位置する八坂神社において、外国人ガイドが率いるツアー客4名のグループの参拝行為をめぐって、日本人女性(Xアカウント名:藤野氏)が注意したとされ、その後口論に発展。その後に撮影された口論の様子を映す動画が同撮影者の手によって公開されると、ネット全体に飛び火して壮絶なガイド攻撃が見られました。
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あるツーリズム事業者の声
インバウンド観光業従事Aさんに話を聞いた⸺
まあ、あそこはちょっと厄介なんですよ。この仕事を始めてから気づきましたけどね。業界関係者なら誰でも知ってるのでは?
①振り方、②鈴の音、③柵に当たる音と、3つの要素がありますが、一連の騒動ではそれがゴッチャになっている印象を受けました。主張や証言が曖昧だったので仕方がないですが、曖昧な「音」という表現が先行してました。あの出回った動画の影響もあり、音が大きかったのかと人々に印象を与えたようです。
「柵に当たる」といってもイメージしにくいと思います。柵の前に立って上を見上げると、若干ですが鈴緒は柵の上方内側についていることが見て取れます。その証拠に垂らした状態では鈴緒は柵に対してやや前方に垂れ、最初から柵に接触しています。つまり手を鈴緒から離すと、元の位置に戻ろうとする力が作用するものの、柵があるため当たりやすいというわけです。
そして鈴緒の下端付近に付いている、文字の刻まれた六角柱状の木製部分(桐枠)もポイント。鈴緒も桐枠も重くて太い。その重厚な趣向があだとなって、インバウンド客のみならず苦労することがあります。鈴緒全体の重さと柵への近接、それが要因となって重みが原因で離したタイミングでそのままゴンと当たってしまうことが悪意なく起こりえますし、実際にたくさんのお客さんが当ててしまうケースを見てきました。ボールを投げる動作で考えてみましよう。すぐ体の前に壁があると腕を振り切れません。同様に八坂神社本殿では柵あるために前方に振り切らないほど前方の可動分が少ない。その制約のなかで前後に振って鈴に当てる。まるでドラのようにです。重くて太い鈴緒に対して主にしならせることだけで力を伝えるのは日本人でも手を焼く場合があります。
こうした事情により、最後に当てないためにはそっと手を離す必要があります。日本在住者ならちょっと言われてたら勘が働きますが、「日本どころかアジアも初めて」といった観光客が音を出してしまうのは、やはり温かいまなざしで見つめてあげてほしいものです。
次に鈴の音の話を。当たる当たらないとは別に、重たいので老齢者のみならず苦労することは珍しくありません。誰しも鳴らしたいものですよ、日本人でも訪日客でも。だからみんな頑張る。鈴と鈴緒は一体化あるいは接触しているのが普通。八坂本殿は、鈴緒と鈴が接地せずに紐状のものでつながり、鈴が鈴緒から見て奥側にある。振るだけでは鈴に力は伝わらない。そのため物理的に当てる感じ。小さなお寺の鐘のイメージ。鈴に当てて音を出す。方向なんか意識せずに軽く揺らすと音が鳴る一般的なつくりとは違います。振って鳴らすというより、前後に振って鈴緒上部で鈴に当てて音を出す。コツがいりますね。重い重厚な趣向の鈴緒で力を伝えてしならせて、若干離れてた鈴に当てるのは若い日本人でも苦労する場面が多くあると思いますよ。初訪日の高齢者が苦労したのは当然です。八坂本殿だとかなり若い人でないと「鳴らしすぎ」がそもそも発生しにくい造りになっています。
こうした構造的な特徴は伏見稲荷などと比較し大きく異なります。他の神社では通常起きない出来事です。悪意をもって当てるというのは泥酔した人物くらいしかありえず非現実的。数千人を見てきましたが、ワザとなんて一人も見たことありません。
日本の「しめやかさ」はすぐには分かってもらえるものではなく、どうしても賑やかに元気よくなりがちなんですね。「ハイハイもう十分!」と思うくらい鳴らすことが珍しくない。担当したことはありませんが中華系も派手になりがち。文化の違いでしょうね。八坂神社本殿でそれこそ騒がしいくらい鳴らす中華系訪日グループ(ガイドなし)には注意したこともあります。別に謝ることもなかったのですが、ひと言ふた言でその場を後にしました。それで何か憤りを覚えたとかはなかったですし、納得がいかないからとついて回るようなことはしませんでしたね。とはいえ、この辺りは職業柄と言いますか、慣れていますので一般の方とは違った反応かもしれません。
老齢の訪日客が苦労してうまく扱えなくても体力と構造を考慮してあげるのがホスピタリティというものではないでしょうか。事情を知らない一般の方が見ると「けしからん!」となるのは理解できますが、一歩相手に踏み込んで「一生懸命だったり慣れてないだけだったりするのかな」と思う心の余裕があれば対応は違っていたと思いますね。一定の寛容なまなざしをもって接することが大切だと思います。
動画に関しては、もちろんガイドが最後に声を荒げたのは控えるべきでしたが、極限の状況ですからね。おそらくは大したことない行為で数分間ついてこられて、カメラも向けられて。「英語話せますか」で「差別ですか」と仰天するような返しをされて。何とか冷静を保っていたところを女性が「rudeはお前やと」とケンカ腰で煽られてキレちゃったんでしょうね。察するものがあります。
ただ、よく言われたような「逆ギレ」ではないですよ。なにより、あの切り取りはアンフェアかなと思いました。撮影者が不快に思ったにしろ、あの仕打ちはないですよね。動画画像なしで「こんなことがありました」って投稿だけでよかったんじゃないですかね。(2024年8月)
桐枠とは
https://search.rakuten.co.jp/search/mall/%E9%88%B4%E7%B7%92/
鈴緒の根元にある木製六角形状のもの


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