「軍艦島は地獄島」との誤った印象を韓国が世界に向けて宣伝するきっかけをつくったNHK番組「緑なき島」をめぐり、NHKがようやく軍艦島で撮影されたか確認が得られていないと認めた。ただ、NHKは「強い遺憾の意」を表明するだけで、かたくなに謝罪は拒否した。これでは不十分だ。
「緑なき島」の映像は韓国の公共放送KBSや放送局MBC、そして釜山にある韓国国立日帝強制動員歴史館でも「強制労働の“証拠”」として使われてきた。歴史館では「軍艦島」について、「陸地の炭鉱と比べ労働環境が劣悪であり、死亡事故がおきたことから『地獄島』と呼ばれていた。ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の世界遺産に登録されたが、この中に含まれている強制動員の歴史は必ず記憶されなければならない」と説明していた。
「緑なき島」について、NHKの前田晃伸前会長は「当時端島で生き生きと暮らす人たちの様子を取り上げた」(令和3年の参院総務委員会)と説明した。確かに、歴史問題や労働環境を特集したものではない。番組の内容を使い、歴史戦に悪用したのは韓国側だ。
それでも韓国のプロパガンダに番組の中の映像が勝手に使われたことがわかっても、NHKの動きは鈍かった。自民党の保守系議員たちが何度国会で質問しても、NHK側は「別の炭鉱で撮影された映像が使用されたというような事実は確認されませんでした」(前田氏)といった答えを繰り返してきた。
NHKは無許可使用への対応を検討してきたというが、それでも現在の稲葉延雄会長が「(昭和30年放映の)『緑なき島』の映像は韓国の法律上あるいは著作権の保護期間を過ぎており、展示の取りやめなどを求めることは法的な根拠もなく、実効性に限界がある」(令和5年の参院決算委員会)と語るように、消極的な姿勢を示してきた。
元島民や一般財団法人「産業遺産国民会議」による徹底的な検証と国会での追及がなければ、今回、NHKが誤りを認めることはなかったであろう。
NHKは、元島民側の主張を踏まえ、「ご迷惑をおかけし悪かった」と素直に謝罪すべきだ。そして、どうして番組の映像がいわゆる徴用工問題に影響を与えたかの検証番組をつくり、世に広めることが公共放送としての役割ではないか。(有元隆志)