ノロウィルスが猛威をふるったこの冬。生牡蠣を控えたという人もいるだろうが、食あたりの危険があるのは牡蠣だけではない。A記者が体験談を語る。
「都内の和食店でサバの刺身を食べた翌朝、原因不明の激しい腹痛に見舞われたんです。感じたことのない痛みが延々と続き、体をくの字に曲げて悶えるしかありませんでした」
痛みに耐えかねたA記者が病院にかけこむと、胃の中にピュルピュル動く体長2cmほどの“白い生き物”が見つかった。
その正体は「アニサキス」だという。
栗原クリニック東京・日本橋の栗原毅院長が語る。
「アニサキスは、もともとは魚類の寄生虫なんです。それが人間の体内に入ると、胃や腸の壁に頭を突っ込んで喰い破ろうとする習性がある。そのとき、激烈な痛みをもたらすんです」
しかも、胃の中を自由に動き、小腸へと移動することもあるという。腸壁は胃壁より薄いため、食い破られるリスクも高いし、痛みはより強い。
最悪、腸閉塞を併発し、開腹手術が必要になる場合もあるというが、どんな魚が危ないのか。
「アニサキスは普段、成虫の状態でクジラやイルカの胃の中に寄生していて、その虫卵がフンと一緒に海中に排泄されます。 その後、海中で成長した幼虫が中間宿主のオキアミに摂取され、今度はそれを餌にするサバ、イカ、イワシ、タラなどに寄生し、その体内で体長2cmから3cmまで成長する」
アニサキスは新鮮な魚にしか寄生せず、またマイナス20度以下で24時間以上冷凍すれば死滅するため 冷凍魚を扱う回転寿司より、市場直送の新鮮な魚を扱う高級店のほうが注意が必要だという。
「アニサキス症の患者は3月から4月に最も多くなります。明確な理由はわかりませんが、その時期にアニサキスの活動が一番活発になるということでしょう。
サバなども旬を迎えますからね。これからが“本番”ということです」
国立感染症研究所によれば、アニサキスによる食中毒は全国で年間7300件も発生するという。何か予防策はあるのだろうか。
「加熱調理をするとアニサキスは死にますから、焼き魚は問題ありません。生魚を食べる場合、外国産などいったん冷凍した魚は安全です。
新鮮な国産にこだわるなら、とにかくよく噛んで食べること。噛みちぎればアニサキスは死ぬ。それぐらいしか方法はないですね」
悩ましい限りだが、刺し身を食べるときは十分な注意と覚悟を。
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