「チーズ中道」を流行らせたい人達
2024年12月9日、ニコニコ大百科とピクシブ百科事典に「チーズ中道」なる単語の記事が作成された。いわゆる差別語の「三種のチーズ牛丼顔」を表す「チーズ」に政治的スタンスの「中道」をくっつけた蔑称であるが、一般語として全く定着しておらず、記事が作られた両サイトにて記事不要論が噴出した。それに対して捨て垢と思しきアカウントが記事の存続を強硬に主張し、差し戻し編集を行うなど編集合戦となった。
この記事では「チーズ中道」という蔑称を定着させようとする人々の正体を明かし、彼らが百科事典サイトで行ってきたルールを無視した傍若無人な振る舞いを記録し、彼らが論拠とする主張の粗を指摘する。
言葉の起源はどこなのか
そもそも、この言葉はいったいどこから生まれたのだろうか。ヒントはピクシブ百科事典の記事の初版にある。
元々は身内鯖の「加速の会」でチー牛と中道を合わせて作られた造語であり身内用語。Twitter(現X)では2024年9月22日に初出が確認された。下記は初出のリンクである。
https://x.com/Vw3xQgopRV2351/status/1837800445416558847
この「加速の会」で検索すると同名のYouTubeチャンネルが引っかかった。このチャンネルは一切動画を投稿していないが、アイコンとDiscordへのリンクが設定されており、これが「身内鯖の『加速の会』」ということなのだろう。そして、その身内ネタをXで初めて出したのが引用部後半のリンクにある「ハムカツピザ油(@Vw3xQgopRV2351)」というユーザーのようである。
この「ハムカツピザ油」なるユーザーは他の仲間内どうしで自分たちが定義した「チーズ中道」への憎悪を煽り、この言葉を執拗に連呼することで単語の定着を図ったようである。また、この界隈を追っていると「『チーズ中道』の普及と啓発、注意喚起」を目的としたXのコミュニティが見つかった。2022年6月に作られた比較的長い歴史「ハムカツピザ油」はこのコミュニティのモデレーターをしていることが確認できた。
このメンバーを見る限り、このコミュニティの中心人物は管理人とモデレーターを兼任している「Neeetb」(@Fsdjaklfafd・@Neeetb)という人物だと推測できる。こちらはどちらも鍵垢であるが、プロフを見る限りただのオタクのように見え、右翼色を強く出している他ユーザーとはやや異色である。しかし、こちらを調べてみると彼のブログと本アカウント(@Neeetb_Discord)を発見。Discordでボット運用や荒らし対策を行っているサーバーの管理者を自称している。おそらく、技術提供を通じて「加速の会」にも中心的な立場で加わっているのであろう。
「Neeetb」のブログを見ると、少なくとも11年以上の社会人経験があること、2019年選挙では自民党以外に投票したことを明言しており、2020年からDiscordでの政治活動に没頭しだしたようである。また、N国やつばさの党の前身であるオリーブの木による陰謀論に同調するなど過激な主張に惹かれていったようである。2024年になってN国もつばさの党も他者への妨害行為を執拗に繰り返したことで、一般的には選挙の安全性や公平性を覆そうとする危険な勢力という見方が広まったが、未だに右翼コミュニティを支えている様子からして、まだ彼らを信じているようである。
また、モデレーターの「日本の夜明け ~右派連合~(@uha_thinktank)」というユーザーも精力的に活動している。彼は「ハムカツピザ油」とともにXで「チーズ中道」を連呼するだけでなく、自身のYouTubeチャンネルを使ってこの言葉の定着を図ろうとしているようである。しかし、彼はXで1500人以上のフォロワーがいるにもかかわらず、YouTubeの登録者数はわずか10人で動画の再生回数も芳しくない。
あまり深追いはしないが、このコミュニティには他にも高校生や大学生と思しきアカウントも参加している。要するに「チーズ中道」なる言葉は若年層からなる(Neeetbは10年ほど社会人経験があるようだが)Discordの右翼系鯖の身内で作られた造語で、そのメンバーが中心になってXやYouTube等で外に流行らせようと試みていたのである。
記事の何が問題なのか
さて、話を冒頭のニコニコ大百科とピクシブ百科事典に戻したい。2024年12月9日に両サイトにて「チーズ中道」の記事が作られたが、これに対し、他のユーザーは議論により記事の白紙化や実質的な削除を行ったが、これを無視して差し戻すユーザーが現れ編集合戦となった。
これには記事作成・編集のプロセスに関わる問題と記事の正当性に関わる問題の両方を抱えている。
記事作成・編集プロセスに関わる問題
この記事を作成や編集するにあたって、いくつかサイトの利用規約に違反すると思しき行為が行われている。
ニコニコ大百科版の初版編集者は「Pii_」というユーザーであるが、このユーザーは編集歴が浅く、その上「チーズ中道」の記事しか編集していない。また、同じニコニコ大百科版を編集した「ゲゲっく」というユーザーも同様に「チーズ中道」しか編集していない。
同様に、捨て垢と思われるアカウントによる記事編集はピクシブでも行われており、初版を作成した「happy」とこれに加筆した「拓也さん」「ゆう」「新規」のいずれもプロフ画像を設定していないアカウントであった。また、「Polaris Jack」というユーザーもプロフ画像を設定せず編集を行ってが、「チーズ中道」コミュニティのメンバーの「Polarisずんだもん(@Polaris2004ad)」のプロフに掲載されていたインスタのIDが「polaris.jack」であるため、彼のものと思われる。
さらに、Wikipediaでも記事を作成しようと試みた形跡も残っており、荒らし扱いされて記事を削除されただけでなく、この名前で記事を作成することを凍結させられている。にもかかわらず、wikiwikiにて「チーズ中道wiki」なるサイトを作成し、そこの「Wikipedia風説明」にて記事のテンプレートを保存してルール違反したことへの反省の色が見られない。ちなみに、このテンプレートはニコニコ、ピクシブ、Wikipediaで掲載されたものとほぼ同じようである。
こうした複数の捨て垢による編集に加え、他ユーザーの意見を無視して差し戻し編集を繰り返したことも問題である。Wikipedia同様、ニコニコでもピクシブでも記事作成自体が荒らしとみなされ、有志によって記事の白紙化や実質的な削除の処理がなされたが、初版作成者らはこれを複数にわたって差し戻した。特に、ニコニコでは削除処理が掲示板の多数の合意のもとで行われたにもかかわらず、「Pii_」はそれを無視して複数回にわたって差し戻しを行った。「ゲゲっく」や第三のユーザー「ゲスト(シンド)」もこれに加担。編集コメントは「Pii_」のコピペであり、複垢による自演であることを隠さなかった。
ニコニコ大百科では大規模な記事編集を行う際には掲示板の合意を得るのがローカルルールであり、実質的削除も多数の前例がある処理である。これを覆した「Pii_」の言い分はこの処理を「不正な編集」と断定するだけであった。その後、2度目の削除の際に合意を覆す根拠を求められると「ニコニコ活動ガイドライン第4条(筆者注:「他者の表現を妨害することは認めません」)に基づき削除の正当性がない」と主張したが、同ガイドライン第2条(当事者間での解決)や第3条(表現の自由は無制限ではない)という前提を無視した乱暴な議論で強い根拠にはなってなかった。
記事の正当性に関わる問題
そもそも、オンライン百科事典というのはある言葉が定着した後にその言葉の定義や意味を解説するためのものである。しかし、「チーズ中道」の場合、記事作成にふさわしい一般語として定着しているレベルに達したとは言えない。それはニコニコ大百科版の記事で作成した側も認めている。
2024年12月9日現在、この言葉をGoogleで検索しても20数件しかヒットしない。要するに、まだネット上でほとんど使用されていない言葉である。
先述の「ハムカツピザ油」もニコニコ大百科の急上昇ランキング入りに喜ぶなど記事を言葉の普及に利用していることを隠さない。つまり、この言葉を流行らせたい側は百科事典サイトの目的と手段を履き違え、蔑称を流行らせる手段として記事を利用したのである。
この行為を認めることはオンライン百科事典の根幹を根本から崩してしまう危険性がある。なぜなら、「流行らせるため」という理由でこの世に存在しない単語の記事が文字の組み合わせの通りだけほぼ無限に作成されてしまい、それが既成事実として扱われてしまう。いくらWikipediaよりも採用基準がゆるいニコニコやピクシブにおいても、それはもはや「百科事典」と呼べる代物ではなくなってしまう。
2024/12/30追記:ニコニコでは相変わらず削除合戦が行われているようだが、「ゲゲっく」が使用頻度の記載をすべて削除。定着していない言葉だということが都合が悪かったのだろうか。後に「認知度は上がっている」と自分たちが主張していたことを捻じ曲げてまでゴリ押したい姿勢には苦笑しかない。
既にtwitter(旧X)で拡散されており、一般的な単語へと昇華している。極中道への反発が著しく拡散を加速させたのであろう。今や宣伝目的などと騒いでいた彼らも無視できないレベルでの認知度になっている。
荒らしへの対応が遅いと言われるニコニコ大百科では編集合戦になった結果、記事が存続したまま掲示板のレスバトルに発展してしまった。記事の存続派は主に次の点を論拠としていた。
掲示板での多数決による合意は少数意見を無視した不当なものである
「チー牛」や「ネトウヨ/パヨク」などの蔑称記事も運営に黙認されてるのに、この記事だけ問題にするのはおかしい
急上昇ランキングにも載るほど注目があるんだから記事の意義はある
記事が気に入らないなら「嫌なら見るな」で済む話
1については、「多数決による合意」というのがニコニコ大百科における慣習的なルールとして定着しているが、それと異なる方法で合意形成を目指すべきだと主張する側がその具体的方法を提示していない。先述のように、この言葉を流行らせたいグループは言葉を定着させる目的で記事を利用しているのだから、牛歩戦術による時間稼ぎのために主張していると思われても仕方がない。
2については、「なぜ実質的削除が運営によって黙認されているのか」と表裏一体の主張である。したがって、これは実質的削除に反対する論拠になり得ない。
3については、急上昇ランキングに載ったのは主に記事の存在に疑問を持つ声が多数寄せられたこと、掲示板の合意を無視する編集を行ったことで議論が紛糾したためで、この言葉が定着した根拠としては不適切である。なお、12月26日夜以降、掲示板で朝から晩まで熱心に存続を訴えていたユーザーが発言しなくなり、急上昇ランキングから「チーズ中道」がランク外になっている。
4は、3の主張と組み合わせて考えると詭弁であることがわかる。要するに、「嫌なら見るな」が徹底されて否定的なコメントがなくなった場合、記事は否定されないので存続する。逆に記事に対して否定的なコメントが増えると急上昇ランキングに載り、記事の存在意義があるので存続する。つまり、どっちにしろ記事が存続するという誤った二分法に基づいて主張されていたのである。
このように、ニコニコ・ピクシブにおける「チーズ中道」の記事はオンライン百科事典の目的と手段を履き違えた記事であり、その正当化根拠もあまりにお粗末なものであった。
「チーズ中道」の定義は適切か
ここまで見たように「チーズ中道」を流行らせたい人々の議論や行動は荒唐無稽で他者を尊重せず、差別心に満ちたものであり、彼らの声に耳を貸す意味はほとんどない。しかし、Xの一部界隈では「チーズ中道」が蔑称として一応の広まりを見せてしまっているのも事実である。そのため、ここでは「チーズ中道」の定義が「チー牛」同様、自分が嫌いなものを定義に押し込めた結果、定義としての厳密性を持ち合わせず、現実にも即していないことを指摘したい。彼らが主張する定義は以下の通りである。
・ネトウヨ・パヨクでない事が唯一のアイデンティティ
・旧ネトウヨの世代交代で卒業した反ウヨ 、反サヨ
・賢ぶった逆張り精神を強力に持つ
・人権と社会正義に敏感でそちらに立ちたがる
・減税はポピュリズムであると主張
・現実主義と思い込んだ現状主義者
・日本の外交姿勢に譲歩と妥協を求める
・淫夢でアジア友好という淫夢アジア主義
・岸田応援団
・世界史界隈
ツッコミどころが多いが最も顕著な誤りなのが反減税派と岸田文雄が「中道」であるとする理解であろう。
2024年12月現在、減税を中心的な争点に挙げているのはれいわ新選組と国民民主党である。前者は急進左派であるため中道がこれに反対するのは理解できる。しかし、国民民主党は立憲民主党と同じ連合を支持母体とする一方で、原発を容認し、憲法における自衛隊と緊急事態条項の明記を訴えており、ときには「ゆ党」と揶揄され、中道から中道右派に分類される。したがって、必ずしも減税に反対する人々が中道とは限らず、むしろ国民民主党の減税策を支持するほうが中道的ではないだろうか。
また、岸田文雄が中道であるという見方も疑わしい。確かに岸田は自民党内では穏健な立場に位置し、憲法改正にも消極的な政治家でも知られるが、岸田政権では安倍晋三の国葬儀を執り行ったほか、防衛費を増額するための増税も検討、選択的夫婦別姓や同性婚に対しても消極的な発言を行うなど保守層へのアピールも欠かさなかった(それが保守層に支持されたかは別だが)。したがって、岸田を支持することが必ずしも中道的な立場になるとは言えないのである。
この定義の最大の問題点は嫌いな属性を一つの概念に押し込めたかったのか、あるいは政治に関する知識が不足していたせいか、あまりにも定義が漠然としていてあらゆる人々がこの定義の一部に引っかかってしまう点であろう。
「減税がポピュリズムだと主張する」ことはマスメディアや専門家も行う議論である。実際、「減税 ポピュリズム」で検索すると右派も左派もあらゆる識者が減税がポピュリズム的だ指摘している。それらをまとめて「中道」と呼ぶのはあまりにも雑な議論である。そもそも、「ポピュリズム」という言葉は「固定的な支持基盤を超え、幅広く国民に直接訴える政治スタイル」を意味し、必ずしも否定的な意味を含んでいるわけではない。
加えて、「日本の外交姿勢に譲歩と妥協を求める」とあるが、日本の外交姿勢は戦後から常に積極的平和主義と親西側イデオロギーに基づく協調姿勢であった。自民党政権期でも、社会党政権期でも、民主党政権期でもそれは全く変わっていない。たしかにこの姿勢は中道的なのかもしれないが、自らの利益を追求して外交的に孤立したロシア・北朝鮮、満洲事変後の日本に比べれば、妥協的だからといってそれだけで悪く言われる筋合いはない。
また、「チーズ中道」を流行らせたい人々は中道を「チー牛(≒キモオタ)」と結びつけるが、彼らにもアニメアイコンやエロ絵をRPするだけのアカウント(Neeetbなど。また、ピクシブ百科事典を編集した捨て垢の多くがエロ絵師をフォローし、エロ絵をブックマークしていた)、淫夢厨やヒカマーが存在する。世界史界隈云々についても、「加速の会」の元ネタが歴史シミュレーションゲーム「Hearts of Iron4」の大型mod「Red flood」に登場する「加速主義」だと推測でき、やはり世界史界隈の影響を受けたものと思われる。
自分たちと近い属性を叩くのはブーメランだという指摘が来ることも十分に予想できるはずなのだが、彼らはなぜか客観視できず、自らの「他者を叩きたい」という感情を優先させ、暴走しているのである。果たしてそのような姿勢で政治を語ってよいのだろうか?
実のところ、彼らは「チーズ中道」厳格な定義を決めぬまま、ただの罵倒語として使っているのではないか。それを確かめるべく、YouTubeチャンネル「日本の夜明け」が公開しているDiscord上の議論を聞いてみると、意外な事実が発覚した。
(左派が頭が固くて、右派のほうが柔軟な思考ができるという話題)
防衛省防衛研究所政策研究部防衛政策研究室長高橋杉雄先生のファン(サーバー管理者?、以下B):「なんかあの、中立の奴らもことごとくブロックしてますから」
COCRGI OGAITE(以下、C):「チーズ中道ね」
B:「チーズだろうがねえ、歯磨き粉だろうがなんでも僕はいいんですけど」
C:「wwww」
B:「なんでもいいんですよ、僕は別に、あの別に容姿はなんでもいいんですけど、エイリアンでも橋本環奈でも(聞き取れない)『僕は何の変哲もない真ん中の日本人です』みたいな」
C:「あー」
B:「『死ねよ』(聞き取れない)つーか、配信ではあんまり言っちゃいけないけど」
C:「まあまあまあ、そのー、まあね」
B:「リアルで会っても殴りたくなってくる」
結局、言葉を使う側も容姿は関係ないと認めているではないか。SNSやオンライン百科事典で「チーズ」と煽ってきた人々の努力と熱意は何だったのであろうか。
それにしても、YouTubeという公の場で、見ず知らずの他人に対し平気で暴言を吐く参加者たちに呆れるしかない。本人たちは真面目な話をしているつもりなのだろうが、ただ狭いコミュニティの中で二分間憎悪のように自分の正しさを確かめ合っているに過ぎないのである。
さいごに
ここまで「チーズ中道」に関する問題点を指摘した。
「チーズ中道」は右翼系のDiscord鯖「加速の会」の内部で作られた身内ノリの造語で、このグループのメンバーと思しき人物がニコニコ大百科、ピクシブ百科事典、Wikipediaに記事を作成して定着を図ろうとした。そこで他ユーザーの反対によって削除や白紙化が実施されると、記事作成者らは反省することなくサイトのルールに反して差し戻しを行い、弱い議論でこれを擁護した。また、彼らによる「チーズ中道」の定義は曖昧かつ政治的知識が不足したものであった。
右翼思想の根幹となる保守主義は簡単に言えば「郷に入っては郷に従え」というその地の伝統や習慣を尊重する思想である。「加速の会」は右翼系のグループであるが、各サイトの慣習法やルールを無視する姿勢はもはや保守主義とは言えず、自らに都合の良いルールを一方的に押し付ける全体主義的傾向がある。もっと言えば、これこそ右翼が忌み嫌うポリコレ仕草と何ら変わりがないやり方だ。要するに、右翼としても赤点なのである。
正直、こうした記事を作成することも「チーズ中道」という言葉の定着に一役買っていることは否めない。しかし、この言葉を利用してインターネットを荒らしている人々の存在とその醜態について記録することはその言葉を使用する者の欺瞞を周知する上で重要であろう。
インターネット上の言論の自由は最大限に尊重されるべきであるが、だからといって無責任に他人に迷惑をかけてよいわけではない。当たり前だが、公の場での言動には責任が伴うし、過ちには償いが課される。
もし、この単語がスラングとして定着してしまい、オンライン百科事典の記事が作られることになった場合、この言葉の起源にある「加速の会」メンバーらが起こしたルールを無視した行動、稚拙な議論も記事として併記されることを切に願う。
おまけ①:「加速の会」について
「加速の会」についてもう少し掘り下げてみたい。
「加速の会」YouTubeチャンネルのアイコンを画像検索すると「保守自由党」なるグループがこのアイコンを使用していたことが判明した。このグループは保守系のDiscord鯖で、2021年9月にごく短期間だけホームページを更新し、Twitterでの活動に移行しているようである。
このTwitterでの活動の事情が少しややこしい。現在、保守自由党のアカウントは「保守自由党新広報局【公式】(@sinnhosyukouhou)」と「【後継】保守自由党新広報局【公式】(@hosyujiyu)」という2つのアカウントに分裂している。どうも2024年6月にサーバーの乗っ取りがあってそれ以降分裂しているらしい。なお、魚拓によると、前者のアイコンは乗っ取り以降に変更されたもののようである。もしかすると、やたらと淫夢厨を嫌うのはこうした事情も関係しているのだろう。
とにもかにくも、この「保守自由党」のDiscord鯖への招待リンクを踏むと「日本の夜明け(保守自由党跡地)」と出ており、組織としては解散したものと思われる。しかし、「日本の夜明け」というのは「チーズ中道」コミュニティのモデレーターをしているアカウントの名前とも一致することや、同じモデレーターの「ファドのゆっくり解説」も参加していたことからすると、「保守自由党」が「加速の会」の前身的なグループだと考えられる。
おまけ②:「日本の夜明け」について
続けて「日本の夜明け」についても掘り下げてみたい。
「日本の夜明け 右派連合」で検索すると、Wikiを発見。沿革ページには組織の詳しい経緯があり、そこに「保守自由党」の記載もあった。元々「右派連合」と名乗っていた組織が2023年に「保守自由党」と合流し、「日本の夜明け」に改名したとのこと。
「日本の夜明け」はご丁寧に幹部のリストも作っている。役員会所長の「ファドメル」はXのIDを「Fadmell」にしている「ファドのゆっくり解説」のことだろう。このほか、「聯合艦隊」や「独裁者」など「チーズ中道」コミュニティのメンバーの名前がある。
また、このサイトには「危険人物リスト」というページがあり、サーバー内でトラブルを起こしたとされる人物が晒し上げられており、いじめに近いことが行われていたこともわかる。なお、このページとほぼ同じ内容の「やばい人物Wiki」という古いサイトも存在するが、なぜかURLがhttps://wikiwiki.jp/yajuu114514/という淫夢厨仕様になっている。
おまけ③:「ネット国会」について
「日本の夜明け」の幹部紹介に「ネット国会」という単語が登場する。この言葉をどこかで見たなあと思い、これまでのリンクを調べてみると、「Neeetb」のブログに「ネット国会に参加していた」という記事を発見。これまで接点がなかった「Neeetb」と「日本の夜明け」を結びつける重要なキーワードである。
「ネット国会」とは、Discord上で国会を模した政治的な議論を行うためのサーバーであり、サーバー募集掲示板によると、現実の国会のように政党も存在するという。2024年末現在も動いているようだが、公式サイトの「政党別獲得議席数」のグラフには「日本の夜明け」の記載はない。別の名称に変更したのか、はたまた会派ごと抜けてしまったのだろうか。
「Neeetb」はもともと自民党に不満を持っていたようだが、あまり政治・歴史・軍事には詳しくなく、ネット国会の参加者からアドバイスを求めることで知識を得たようである。そこで知識をつけた結果が「オリーブの木」の陰謀論への共感だったことを考えると、「ネット国会」という試みは異なるイデオロギーを持つ人々の対話を促すより、より過激なイデオロギーに向かわせたようである。
政治の知識に対する不安
実のところ、政治に関してそこまで知識が豊富ではありません。
サーバーに居る人たちと対等に会話できるのか、かなり不安がありました。
・特に苦手な分野はこちら戦前、戦後あたりの歴史的な知識
・憲法、法律の知識
・軍事
知識不足を乗り切る「アドバイスシーキング」
「アドバイスシーキング」とは、コミュニケーションスキルの一つです。
その意味とは、文字通り「アドバイスを求めること」です。
知識が足りないせいで卑屈になる必要はなく、分からないことを素直に質問してみました。
質問してみれば、詳しい人から色々教えてもらえます。
建設的な話し合いに発展することが多く、自分自身も多くの知識が得られます。
どんな思想を持とうが、誰から知識を教わろうが、個々人の自由である。しかし、ネット上の正体もわからない見ず知らずの人間に教わることは、時として知らない内に過激思想を叩き込まれれるリスクがある。過激思想に染まった人間は、Neeetbらのように、自らの正義のためなら他人を攻撃したり傷つけることも厭わなくなってしまう。
人類の歴史、政治の歴史とはそうした過激思想による暴走を積み重ねて現代社会の基礎(人権・法律・司法など)を形作ってきた。時としてこれらの基礎が社会の機能不全を引き起こし、目の上のたんこぶのように感じることもあるだろう。しかし、邪魔だからといってこれを取っ払ってしまえば、容易に他人を傷つけ合うという過ちの歴史に逆戻りするのである。
どうか、こうならないよう、この記事の読者たちには信頼の置ける文献や情報源から歴史を学ぶよう心がけてほしい。


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