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新型コロナウイルスに対抗する生物学的「ファクターX」を考察する

これまでnoteは読者としてのみ利用してきましたが、書く方ことにも参画したいと思い、初投稿としてこのテーマを選びました。BCGのセクションに最新論文の情報を加筆し、目次を付けました(2020.8.2)。下記は画像の出典の説明です。

<a href="https://pixabay.com/ja/users/geralt-9301/?utm_source=link-attribution&amp;utm_medium=referral&amp;utm_campaign=image&amp;utm_content=5174671">Gerd Altmann</a>による<a href="https://pixabay.com/ja/?utm_source=link-attribution&amp;utm_medium=referral&amp;utm_campaign=image&amp;utm_content=5174671">Pixabay</a>からの画像

はじめに

間違いなく歴史に爪痕を残しつつあるCOVID-19、その蔓延は世界中に広がり、本note執筆時で世界の感染者数は本日6月14日時点で7,787,271人、死亡者数は430,139人となっている(COVID-19 Dashboard by the Center for Systems Science and Engineering (CSSE) at Johns Hopkins Universityのデータに基づく)。日本では4月初旬にピークアウトしたが、世界ではまだ1週間で感染者が100万人ペースで増加している。(注:本日加筆時点8月2日で、世界の感染者数は17,859,763人、死亡者数は685,179人に増加し、日本の患者も再燃状態)

国別の患者数も2ヶ月前と様相が異なり、米国(2,074,526人)に次いでブラジル(850,514人)、ロシア(519,458人)、インド(320,922人)と続く。日本の患者数は桁が違って17,293人。3月頃(当時はイタリアでの蔓延がひどかった)から、なぜ国ごとに大きな違い、とくに死亡者のデータから想定される重症化の程度が異なるのかについて疑問を抱いていた。

もちろん、日本ではすでに100年前の新型インフルエンザ「スペイン風邪」の頃から、マスクの着用やうがい、感染者や高リスク者の隔離などの衛生観念の浸透が下地としてあり、自宅の中に土足で入らないなどの古くからの伝統も感染予防にはプラスに作用しただろう。あるいは、挨拶の仕方として握手よりはお辞儀であったり、あまりハグをしない習慣なども関係しているかもしれない。(末尾に関連リンク追加)

さらに、日本の医療体制は国民皆保険制度に基づいており、医療へのアクセスの格差は諸外国に比べればきわめて少ない。日本の対COVID-19ポリシーは「医療崩壊をさせない」ことが第一とされた。例えば、私が所属する東北大学の附属病院に、もし重症感染者が入院し、ECMO(体外式膜型人工肺)を必要とする患者が1名出れば、他の手術はすべて不可能になるくらいの負荷がかかる。病気はCOVID-19だけではない。そのために日本でPCR検査は「集団感染(クラスター)を生じさせない」いわゆる「クラスター対策」の一環として行われ、検査数が押さえられたことから、陽性者=感染者は少なく見積もられた可能性は否めない。だが、死亡者数で比較すると、米国の115,436名に比して、日本では圧倒的に少ない927名なのだ。

【追記】5月29日付けの専門家会議資料に基づけば、生物学的な要因以外で重要な点は以下のようにまとめられるだろう。

①国民皆保険による医療へのアクセス、地方でも医療レベルや公衆衛生水準が高いこと、
②市民の衛生意識の高さ、元々の生活習慣、政府からの行動変容の要請に対する協力の度合い
③中国由来・欧州等由来の感染拡大の早期検出
④我が国のクラスター対策

国別の死亡者数は人口数の影響を受けるので、人口あたりの死亡者に換算しいて比較するべきである。worldometterというサイトのCOVID-19 CORONAVIRUS PANDEMICという日々更新されている公開データでは、人口100万人あたりの死亡者数が表に示されている。ダントツはサンマリノ共和国(イタリアの中の小国)で1,238人(人口が少ないので統計学的には外れ値)、以下8位までが欧州の国々で、次いで米国が355名。人口100万人あたりブラジルの死亡者は201人、ロシアは47人、日本はさらに桁が下って7人だが、韓国は5人、さらにタイが0.8人、台湾は0.3人、ベトナムではまだCOVID-19の死亡者がいない。このように、国別の人口あたり死亡者数には大きな違いがある。

より正確には、COVID-19の感染者数を分母にして致死率を比較すべきところだが、感染者数はPCR検査数に依存するので、ここでは人口当たりの死亡者数をもとに、世界におけるCOVID-19の重症化の違いが生じる「生物学的な」背景、あるいは生物学的な「ファクターX」について考察する。

注:繰り返すが、筆者は「社会的・文化的な」背景を無視する訳でも軽んじるつもりでもない。ただ、生命科学研究者として、自分のexpertiseが少しでも役に立つ問題として考えたいという動機に基づいている。社会的・文化的背景については拙ブログ記事「COVID-19重症化に関わる生物学的「ファクターX」は?:その1」(2020.5.31)を参照のこと。
注:「ファクターX」は山中伸弥さんがCOVID-19に関して自ら立ち上げたHPで用いられた「日本人に新型コロナウイルス感染者や重傷者が少ない要因」に基づいており、社会的・文化的要因も含められている。

COVID-19とBCG?

さて、日本が実際にCOVID-19のピークに達する少し前、Twitter経由でJSatoNotesというブログにたどり着いた。

If I were North American/West European/Australian, I would take BCG vaccination now against the novel coronavirus pandemic.(2020.3.26)

この記事では、BCGの接種が行われている国では、COVID-19の広がり方が遅いという「相関性」があることについて指摘されていたのだ。BCGは、結核を予防するワクチンの通称であり、ワクチン開発に関わったフランスのパスツール研究所の研究者の名前を冠した菌:Bacille Calmette-Guerin(カルメットとゲランの菌)の頭文字をとったものであり、現在、日本では生後1歳までに接種される。

「え? でもBCGの効果って、20歳くらいまででは???」というのが私の最初の感想であった。

注:COVID-19予防のための BCG 接種は適用外なのでできません。
一般社団法人 日本結核・非結核性抗酸菌症学会からの見解
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と BCG ワクチンの接種に関して(PDF)」(2020.4.6)

だが、私がこの仮説が面白いと思った理由は、結核菌に対する「特異的な」効果ではなく、いわば「オフターゲット」な効果として、BCGが「trained immunity(訓練免疫)」を誘導し、その効果がエピジェネティックな変化を引き起こして、長期に持続する、という新たな視点に基づいていたからだ。(ただし、どのくらい持続するかは個人により異なる。BCGを打ってもツベルクリン反応が陽性にならない人がいることを思い出してもらえばよい。)

BCGのオフターゲット効果についての説明は、筆者もダイヤモンド・オンラインに執筆したが(「コロナにBCGは「有効」なのか?東北大・大隅教授が緊急解説」)、より詳しくは以下の個人ブログをお勧めしたい。

たけぴの言っちゃったもん負け:【コロナウイルス】BCGがCOVID-19の重症化を抑制する可能性について(2020.5.3)、BCG接種により自然免疫は強化されるのか?(2020.5.13)

JSato氏はその後も丁寧に公開データをくまなく調べ、BCGの義務化の有無やその時期との関係や、単にBCGワクチンなら皆同じかというとそうではなく、BCG Tokyo株というパスツール研のオリジナル株に近いものがもっともCOVID-19抑制効果があるのではないか、さらに、BCGの接種の有無だけでなく、そもそも結核自体の感染率が高い国々では、COVID-19重症化が少ない、ということも指摘された。感染症の専門家でも医学者でもない市民が参画してシチズンサイエンスがつくられていることを強く感じた。

BCGの接種とCOVID-19の重症化に負の相関関係があったとしても、それは「因果関係」かどうかはわからない。もっとも直接的な証明は、実際に非BCG接種国でBCGを接種し、COVID-19感染予防効果があったかどうかの臨床研究の結果を待たなければならない。実際、そのようなトライアルはオランダとオーストラリアで実施中である。

筆者は、上記に準ずるエビデンスとして、高齢者施設で日常生活自立度の低い方を対象として、BCGに肺炎予防効果があるかどうかを調べた研究にたどり着いた。

大類孝先生(当時は東北大学老年内科)の科学研究費の報告書(2004年):BCGワクチン療法による高齢者肺炎の予防法の確立

(以下、科研費報告書からの引用)高齢者介護施設に入所中のADLの低下した155名の高齢者を対象とし、ツ反を施行し陽性群及び陰性群に分け、さらに陰性群を無作為にBCG接種群及び非接種群に割り付けをした。そして、BCG接種4週間後に再びツベルクリン反応を施行し、陽性者を陽転群とし、その後2年間にわたり各群における肺炎の発症率を前向きに追跡調査した。その結果、ツ反陰性群では44名中19名(42%)に、陽転群では41名中6名(15%)に、ツ反陽性群では67名中9名(13%)に新たな肺炎の発症が確認され、ツ反陽転群では陰性群に比して肺炎の発症率が有意に抑制された(p=0.03)。以上の結果より、BCG接種は細胞性免疫の低下した寝たきり高齢者において、肺炎発症の予防効果を有する事が明らかにされた。

最初はLancetという臨床研究で著名な雑誌のCorrespondenceに2002年に報告されている(Correspondenceは「論文」ではないが、臨床研究の報告がEditorによって保証されて掲載されるもの)。なお、リンク先のPDFの前半は別のCorrespondenceなのでタイトルが内容と異なるので注意。

【追記】大類先生のCorrespondenceが東北大学リポジトリに掲載されました(2020.6.18)。Nakayama et al.: BCG vaccination prevents pneumonia in immobile elderly patients.

この臨床研究は大規模なものではないし、長期に渡るオフターゲット効果を見たものではないが、COVID-19が当初「新型肺炎」と呼ばれたように、重症化する患者には特徴的な肺炎がみられたことを鑑みると、少なくとも私にとっては、生物学的な「ファクターX」として「BCG接種」をイチオシにしたい気持ちになるには充分であった。

3月末の時点ではこのBCG仮説のファンはまだ医学・生物学系に少なかったが、その後、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之招聘教授が何回もTV出演でお話しになったり、免疫学がご専門の前阪大総長、現国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 理事長の平野俊夫先生も、日本医師会COVID-19有識者会議のサイトに公表された原稿の中で触れられるくらいまでには市民権を得たと言えるだろう。また、元東京大学医科学研究所准教授の小柳津直樹先生もBCG仮説サポーターの一人である。藤田医科大学の宮川剛教授も、BCG仮説を支持する原稿をプレプリントサーバのmedRxivに公開されている。(本note文末にリンク先まとめ)

7月31日付けでScience Advancesという米国の雑誌に、BCG接種義務化がCOVID-19蔓延を防ぐという解析結果が査読を受けた論文として発表されました。

以下に要旨の拙訳を載せておく。この次に重要となるエビデンスは、実際に投与効果とCOVID-19の発症率や重症化率を調べた結果だが、これはあと数ヶ月かかるだろう。

BCGワクチン接種は、さまざまな感染症のリスクを低下させる可能性があり、もしそうであれば、COVID-19に対する防御因子として機能する可能性がある。本論文では、少なくとも2000年まではBCGワクチン接種を義務づけていた国と義務づけていない国を比較した。報告バイアスによる系統的な影響を最小限にするために、国別アウトブレイクの最初の30日間における確定症例(135カ国)と死亡者(134カ国)の日ごとの増加率を分析した。30 日間のウィンドウは、国別のパンデミックの発症時に開始するように調整した。線形混合モデルでは、年齢中央値、一人当たりの国内総生産、人口密度、人口規模、純移民率、および様々な文化的側面(個人主義など)を調整した後、BCGの義務化政策が患者数と死亡者数の増加率に有意な効果を示すことが明らかになった。我々の分析は、BCGワクチン接種の義務化がCOVID-19との闘いにおいて有効であることを示唆している。

その他の生物学的「ファクターX」候補?

さて、皆が面白いと思って下さるようになると、さらに他の独自の仮説を探したくなるのが筆者の性質。BCG接種は「後天的な要因」であるが、さらに生得的な「生物学的な差」としての「ファクターX」は無いのだろうか?

当初は「肺炎」が着目されていたが、重症化の症状の様態についての理解が進むと、COVID-19は呼吸器系に限った疾患ではなく、全身性の臓器不全を引き起こすことがわかってきた。その中心となる病態は「血栓症」である。

週刊ダイヤモンド連載「大人のための最先端理科 生命科学 第267回 新型コロナの治療法を探せ! ワクチンと薬の開発最前線」でも触れたが、肺へのウイルス(SARS-CoV-2)感染により細胞に炎症が起きると、「サイトカイン」という伝達物質が細胞から分泌される。この量が多くなると「サイトカインストーム」という暴走状態となって、全身で血液の凝固異常が起き、血栓が形成される。あるいは、肺炎自体は重症でなくても、肥満や糖尿病等などに関係して血管が弱い傾向があれば、肺炎自体はそんなに重症ではなくても、ウイルスが血管の細胞に侵入して血管壁を傷つけることにより血栓が形成され、心筋梗塞や脳梗塞に至る。

血栓の治療のためには「抗凝固剤」が使われる。一般的な薬剤として、例えば「ワルファリン」があるが、この容量はデリケートであることが知られていた。1日の投与量が0.5mg程度で効く人がいれば、10mgで初めて効く人がいるなど、効き目の個人差が非常に大きいのだ。ワルファリンの投与量の調整がうまく行かないと、脳出血や消化管出血など重大な出血性の副作用が生じたり、逆に効果が不十分となると血栓が生じる。

ワルファリンの投与要件には個人間でばらつきが大きく、個人の薬剤に対する感受性に寄与する遺伝的要因を明らかにする必要性がある。そのため、ワルファリンの容量を決めるのに影響のある遺伝子型の探索が行われ、2010年に以下の論文が遺伝学の権威ある雑誌に出版されていた。この論文はFacebook友のソニーコンピュータサイエンス研究所所長の北野宏明さんから教えて頂いたものである。

Ross et al.: Worldwide allele frequency distribution of four polymorphisms associated with warfarin dose requirements. J Hum Genet, 55, 582–589, 2010

この論文では、ヒトゲノム多様性プロジェクト(Human Genome Diversity Project-Centre Etude Polymorphism Humain, HGDP-CEPH) worldwide sample)により集められた世界全体の963例と、カナダの欧州、東アジア、南アジア系の人々316例を解析し、ワルファリンの容量と関係のありそうな4つの遺伝子の1塩基多型(SNPs)に着目し、とくにVKORC1という遺伝子の rs9923231というSNPが特徴的な地理的差異を示すことを報告している。

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VKORC1という遺伝子はVitamin K epoxide reductase subunit 1というタンパク質を規定し、このタンパク質がワルファリンの標的なのだ。実は血液凝固にはビタミンKが関わっている。

ここで着目すべき点は、アフリカ系では対立遺伝子の「T型」がほとんど見られず「C型」が多く、逆に東アジアでは「T型」が非常に多く「C型」が少ないことが示されている。アジア系でも東アジア系と南・中央アジアでは、この遺伝子多型の分布には大きな差異があり、南・中央アジアはどちらかといえばアフリカ由来のパターンに近い。欧州ではアフリカと東アジアの中間のような分布である。つまり、VKORC1遺伝子の「T型」は生物学的な「ファクターX」の候補となりうる。

米国や英国では、国の中のいわゆる「人種」ごとのCOVID-19の感染者数や死亡者数を報告しているが、「アジア系」には上記の「東アジア系と南・中央アジア系」が両方含まれているので、疫学的な相関性を簡単に調べることができない。また、すでに述べたように、COVID-19の感染や重症化には、経済的な問題等が非常に大きいため、生物学的背景の比較はきわめて困難である。したがって、COVID-19の重症化とVKORC1遺伝子の多型については、T型とC型が半々くらいである欧州の事例について、重症化と遺伝子型との相関性が取れるかどうかが鍵となるだろう。

そうこうしている間に、他にも興味深いプレプリントが公開された。

Ellinghaus et al.: The ABO blood group locus and a chromosome 3 gene cluster associate with SARS-CoV-2 respiratory failure in an Italian-Spanish genome-wide association analysis. medRxiv, 2020, doi: https://doi.org/10.1101/2020.05.31.20114991

イタリアとスペインの感染者、非感染者、1000人規模での遺伝子解析を行い、8,582,968個のSNPsから有意なものとして、ACE2(アンギオテンシン受容体)を規定する遺伝子に関連したSNPが見つかった。ACE2はコロナウイルスとの結合に関係し、種々の病態とも関係すると思われるので想定内であり、例えばCOVID-19発症・重症化の男女の差については、ACE2の発現量の差などもありえるかもしれない。

この未査読公開原稿では、もう1つ興味深いことに、なんとABO式血液型に関係するSNPsが有意なものとして見出されたのだ。同様の発表は以下としても公開された。

Zhao et al.: Relationship between the ABO Blood Group and the COVID-19 Susceptibility. medRxiv, 2020. doi: https://doi.org/10.1101/2020.03.11.20031096

さらに、米国の民間企業で遺伝子解析を行う23andMeという会社も独自に解析結果に基づきプレスリリースを行っており、これら、現時点で「査読を経ていない」、つまり、専門家からのお墨付きを得ていない3つの情報源からは、「ABO式血液型では0型はA型に比して9-18%程度COVID-19に罹患しにくい」という結論が得られている。ただし、日本の人口構成では、A型がもっとも多いので、これは日本人にとっての生物学的「ファクターX」ではないと考えた方が良いだろう。

ただし、血液型は赤血球表面の糖鎖の違いに基づいており、ACEが関連する血管障害に血液型が関係する可能性はありうる。例えば以下の論文。

Luo et al.: Rs495828 Polymorphism of the ABO Gene Is a Predictor of Enalapril-Induced Cough in Chinese Patients With Essential Hypertension. Pharmacogenet Genetics, 24(6):306-13. doi: 10.1097/FPC.0000000000000050.

また、発生生物学にexpertiseがある研究者としては、あるSNPが遠く離れた遺伝子の発現に影響する可能性は否定できないので、実は血液型に関わるSNPが、まったく異なる遺伝子のスイッチのON/OFFを制御することによりCOVID-19の病態に関わることもありえるのかもしれないと想像を膨らませている。

まとめ

日本は昨年のうちに実は別種のコロナウイルスに感染していたのではないか、という仮説も散見されるが、その可能性は今後、抗体検査の結果がさらに明らかになれば否定されるのではと筆者は考える。

生物学的な素因は多岐にわたり、個人個人のレベルで言えば、生物学的な要因以外の関与も大きいので、何が重症化度に関わるか、何が生死を決めるかを予測することは困難である。

山中さんも「ファクターX」の候補として生物学的な要因以外にいくつも候補を挙げており、「ファクターX」はX1, X2, ...など復数の因子の組み合わせかもしれないが、今後、着目すべき医学・生命科学研究として、感染のメカニズムだけでなく、サイトカインストーム、血液凝固、その他、多臓器連関についても注意深く探求することが重要だろう。それらはすべて、将来の予防法、治療法の確立に役立つはずだ。

【追記】日本人にとっての「ファクターX」も興味深いが、なぜ10代以下の感染者が少ないのかについても筆者は興味を抱いている。下記に載せた図は筆者の同僚である東北大学大学院医学系研究科、押谷仁先生のところからEmerging Infectious Diseasesという雑誌に発表された論文より引用したものであり、日本の感染例3,184例を解析した結果である。20代がクラスターを生み出すスプレッダーになったこともわかる。

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参考リンク集:

宮坂昌之先生のBCG関連論文:Is BCG vaccination causally related to reduced COVID‐19 mortality? EMBO Mol Med (2020) 12:e12661 https://doi.org/10.15252/emmm.202012661(この他にも日経メディカル等のメディア露出あり)

平野俊夫先生の日本医師会COVID-19有識者会議のサイト公表原稿:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はサイトカインストーム症候群である(2020.5.28)

藤田医科大学の宮川剛教授のプレプリント:Association of BCG vaccination policy and tuberculosis burden with incidence and mortality of COVID-19. medRxiv, 2020.  doi: https://doi.org/10.1101/2020.03.30.20048165

元東京大学医科学研究所准教授の小柳津直樹先生の資料(2020.6.8)

はてな匿名ダイアリー:日本でCOVIDの死者が少ない理由まとめ(2020.5.18)

BCG接種義務化との関係についての査読付き論文:Mandated Bacillus Calmette-Guérin (BCG) vaccination predicts flattened curves for the spread of COVID-19. Science Advances 31 Jul 2020:DOI: 10.1126/sciadv.abc1463

本note記事等をもとに取材記事が文藝春秋八月号に掲載されました。


大隅典子の関連サイト:

ブログ:仙台通信
Twitter:@sendaitribune
研究室HP:東北大学大学院医学系研究科発生発達神経科学分野

著者プロフィール

東京医科歯科大学歯学部卒、歯学博士。同大学歯学部助手、国立精神・神経センター神経研究所室長を経て、1998年より東北大学大学院医学系研究科教授。2006年より東北大学総長特別補佐、2008年に東北大学ディスティングイッシュトプロフェッサーの称号授与。2015年より医学系研究科附属創生応用医学研究センター長を拝命。2004〜2008年度、CREST「ニューロン新生の分子基盤と精神機能への影響の解明」研究代表を、2007〜2011年度、東北大学脳科学グローバルCOE拠点リーダーを、2016年〜新学術領域「個性」創発脳領域代表を務める。「ナイスステップな研究者2006」に選定。第20〜22期日本学術会議第二部会員、第23期、第24期同連携会員。専門分野は発生生物学、分子神経科学、神経発生学。著書に『脳の発生・発達:神経発生学入門』(朝倉書店)、『脳から見た自閉症 「障害」と「個性」のあいだ』(ブルーバックス)、『脳の誕生—発生・発達・進化の謎を解く』(ちくま新書)、訳書に『エッセンシャル発生生物学』(羊土社)、『心を生み出す遺伝子』(岩波現代文庫)など。








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