盗みを繰り返していた可能性
三菱UFJ銀行の貸金庫を利用している60歳代のある男性は、事件発覚後、自分も被害に遭っていないか電話相談で問い合わせをしたときのことを明かす。
「『私の貸金庫は盗難被害に遭っていないでしょうか?』と尋ねると、電話口の担当者は『はい。お客様の貸金庫は被害に遭っていませんので、ご安心ください』と言いました。そこで、『なぜ、私の貸金庫の中身が大丈夫なのか、わかったのか?』と畳みかけると、担当者は黙り込んでしまった。
銀行は、貸金庫の中身に何が入っているのか、知らないはずです。にもかかわらず『何も取られていない』なんて即答できるのは、いったいどういうことなのでしょうか。どのような調査をしてそう断言するのか、詳細に説明してもらえないと納得がいきません」
不信感は募るばかりだが、今回窃取に及んだ元行員は、かなりの数の貸金庫を開け、価値の高い品物を選んで盗みを繰り返したのではないだろうか。
メガバンクで働く高橋寛さん(仮名)は「その可能性はありますよね」と述べる。
「大金を一気におろす際、銀行にとやかく言われるのが面倒くさいから、貸金庫に多額の現金を入れるお客様もいます。あとは銀行のペイオフ対策として利用する人もいます。銀行が破綻した場合1000万円とその利息までしか保護されないんです。でも、貸金庫に現金を入れておけば、それは資産なので全額守られるんですよ」(前出の高橋さん)
十数億円もの窃取をしておきながら、元行員がいまだ逮捕に至っていない理由とは。そして、犯行の手口とはどのようなものだったのか――。
後編記事『なぜ、まだ「逮捕」されないのか…三菱UFJ銀行元行員が貸金庫から十数億円を盗んだ「大胆すぎる犯行手口」』でさらに詳報します。