選挙の様相一変、SNSとどう向き合うか 自民党・逢沢一郎選挙制度調査会長に聞く【政界Web】
「切り抜き動画」規制論も
―喫緊の対策として、SNS事業者などに対応を求める情報流通プラットフォーム対処法(プロバイダー責任制限法)の見直しも考えられる。 プロバイダーの責任は非常に大きい。若者世代を始め、新聞もテレビも見ない国民が相当増えた。常に手にしているスマートフォンから情報を得ている。ネット空間ではさまざまな情報が飛び交い、なかなか真偽の判断がつかない状況だ。さらに、自分と同じ考え方の意見が表示されることが多く、自分は正しいと思ってしまう。 ―「切り抜き動画」も人気だ。 選挙がある種のコンテンツ化している。選挙活動中の候補者の動画を切り抜いた「切り抜き動画」をユーチューブに配信して収益を稼ぐことが、東京都知事選や兵庫県知事選でも確認されている。結果的に特定の候補者を煽ることもあるし、話題になればなるほど収益が得られる構図もある。表現の自由などにも関わってくるが、選挙を一つの材料にして収益を上げていくことは、やはり禁止すべきだという意見がある。情報流通プラットフォーム対処法の運用を拡大・強化することにも関わるが、非常にセンシティブなことで、よく与野党で議論したい。
ポスターの品位規定、早期成立を
―SNS規制やAI活用には時間がかかりそうだが、来年も都議選や参院選など大型選挙が続く。公選法改正の議論をどう進めていくのか。 まずは来年の都議選までに選挙ポスターの問題に対応しなければならない。都知事選では、ある政治団体が数多くの候補者を立て、常識や良識を超えるポスターが掲示された。中には品位が疑われるものや、候補者の氏名が明記されていないもの、QRコードで営業に関する情報に誘導するものまであった。与野党で協議し、ポスターに候補者名の明記を義務付けるほか、宣伝に罰金を科すなど、品位保持の規定を設ける公選法改正案を作った。できるだけ早く成立させなければならない。 ―ポスターに顔写真の掲載を義務付ける案も検討されていたが、なぜ断念したのか。 今でも田舎の町村議選などでは、候補者名だけが大書きされたポスターや、似顔絵が描かれている手作りのポスターがある。小さい町なら、候補者の顔写真がなくても「どこの誰」と分かるからだ。顔写真を義務化すると、こうしたポスターが作れなくなってしまい、かえって立候補の自由を制限することにもなりかねない。