選挙の様相一変、SNSとどう向き合うか 自民党・逢沢一郎選挙制度調査会長に聞く【政界Web】
真偽判断にAI活用?
SNSが大きく影響したとされる兵庫県知事選や、候補者と無関係なポスターが多数掲示されて問題となった東京都知事選など、これまでの選挙の常識が覆される事態が続いている。 インターネット上で偽・誤情報が流れ、「当選」より「収益」を目的とした動画なども相次ぐ状況に、どう対応していくのか。長く選挙制度の改革論議に携わってきた自民党の逢沢一郎選挙制度調査会長に聞いた。(時事通信政治部 外崎大貴) 【写真】東京都知事選の結果を受けて記者会見する石丸伸二氏 ―選挙でのSNS利用に関する課題は。 SNSが大きな影響力を持つようになって、例えば兵庫県知事選では、何が正しい情報か分からず混乱するという状況が、ネットによって作り出された。かなりの有権者が、正しい情報か確認する術を持たないまま、投票先を決めてしまったようだ。 選挙は民主主義を構成する基礎であり原点だ。有権者が選挙に臨む基本的な環境・条件が大きく揺さぶられており、看過できない。昔ながらの町議選などでは、デマを流布するビラや怪文書が出回っていたが、影響力はある意味で限定的だ。対してネットは、全く新しい状況を作り出している。 ―偽・誤情報への対策は。 公職選挙法に「虚偽事項公表罪」があるが、限られた選挙期間中に何が虚偽の情報かを速やかに判断し、誰が流布したか特定し、法を適用し処罰の対象にしていくことには、技術的な難しさがある。一番長い知事選、参院選で17日間、短い町村長・議選は5日間だ。選挙結果が出てしまえば、それを否定するわけにはいかなくなる。この法律が有効に機能した事例があるか勉強しないといけないが、やはり難しい。まして、ネットで誤情報が拡散され「炎上」してしまえば、鎮めるのは非常に難しい。何ができるのか整理しなければならない。 ―そもそも、情報が真実か否か判断がつかない。 その通りだ。しかし、ネットを使って作為的に誤情報を流布したり、真偽の確かめようもない情報を流布したりして、ある特定の候補に打撃を与えることは規制、抑制する必要がある。どう実効性を確保するか、知恵を出さなければいけない。自民党内の一部には、人工知能(AI)の活用を高いレベルに引き上げるべきだとの主張もあった。あらゆるツールを駆使して対応する態度は大事にしたい。ただ、AIで判断するということを、法律に落とし込むのは難しいだろう。