検察、異例の無罪論告 金沢地裁の窃盗事件
被告に謝罪
窃盗罪に問われたが、有力な証拠とされた防犯カメラの映像が別人と断定された男性被告(62)の論告求刑公判が20日、金沢地裁(入子光臣裁判官)で開かれ、検察側は無罪とする異例の論告をした。さらに「起訴したこと、166日間拘置したことを申し訳なく思っています」と被告に謝罪した。
検察側は4月、拘置取り消しを請求、被告は約半年ぶりに釈放されている。被告は次回期日で、無罪判決が言い渡される見通し。
起訴状によると、被告は昨年8月、石川県白山市のコンビニの現金自動預払機(ATM)で、不正に入手した他人のキャッシュカードで5回にわたり現金計100万円を引き出したとされる。松任署が同10月、窃盗容疑で逮捕。金沢地検が11月、同罪で起訴した。
公判では、被告は一貫し無罪を主張。検察側は、盗んだとされる100万円の使途やキャッシュカードの入手方法について明らかにしなかった。弁護側の提案で検察側が防犯カメラに写った男の映像を鑑定。別人とする結果が得られ、地裁は証拠として採用した。
弁護人によると、被告は検察官の取り調べで、カメラの男と同一人物だと再三問い詰められ「現場には行ったことがないが、男は自分だ」とする供述調書にサインしたという。6月に開かれた第6回公判で、被告は「(男は)自分でもそっくりだと思い『自分かもしれない』と言ってしまった」と話した。