連続テレビ小説「おむすび」脚本家・根本ノンジさん寄稿──平成を生きた「私たちの物語」を描きたい

2024/10/07

「栄養士」「ギャル」「平成」という大きなキーワードが整い、チーフ監督であり、修羅場をくぐってきた歴戦の猛将といった雰囲気の野田雄介(のだゆうすけ)さんをはじめ、すてきなスタッフの皆さんが次々と合流し、この三つのキーワードをどうやったら半年という長丁場の作品として、視聴者の皆さんに楽しんでもらえるのかを何度も何度もブレストを重ね、大きな全体構成ができていった。

「食」と同じくらい、私が脚本を描く際、こだわることがある。それは「人生は、笑いと涙で出来ている」というもの。涙と笑いではなく、笑いが先。
 
 子どものころ、いつも両親が朝ドラを見ていた。息子が朝ドラの脚本を描くと聞いたら、きっと喜んでくれただろう。しかし母親は19年前に不慮の事故で亡くなった。明日当たり前に会えると思っていた人が突然いなくなる喪失感は言葉にできないほど強く心に刻まれている。その数年後、父親が食道癌(がん)で亡くなった。父親は胃を切除し、胃ろうになり、食べたいものも食べられなくなった。そのとき、病院で管理栄養士の方に最後までお世話になった。栄養士という仕事をテーマの一つにしたのも、そんな思いからだった。

 この物語に出てくる人々は、歴史に名を残すような偉業を成し遂げた人でもなければ、突出した才能を持った人でもない。我々の身近にいるごく平凡な人ばかりだ。笑ったり、怒ったり、泣いたり、愚痴ったりしながら日常の中に、小さな幸せや拠(より)所を見つけて、自分たちのペースで生きていく。登場人物は実在の人物ではない。でも今回のドラマを描くにあたり取材に協力していただいた数多くの方々が体験したこと、思い、声が詰まっている。だからまるっきり架空の話ではない。これは平成という時代を生きた私たちの物語だと思っている。その気持ちを忘れずに、心を込めて、精一杯最後まで描きたいと思う。


プロフィール

根本ノンジ(ねもと・のんじ)
1969年生まれ、千葉県出身。劇団の作・演出を務めながら、人気テレビ番組などの構成作家として活躍。2001年からは脚本家としての活動を開始し、数々のヒットドラマや映画の脚本を手がける。近年の主な執筆作品に、ドラマ「相棒」「監察医 朝顔」「サ道」「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」「合理的にあり得ない~探偵・上水流涼子の解明~」「パリピ孔明」など。NHKでは、「正直不動産」「初恋芸人」「男の操」などの脚本を担当。

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