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【レビュー】人間ラブドール製造所でラブドールになってきたレポ

こんにちは、いつも「同人女の戯言」というタイトルで、雑談エッセイ記事を書いている30代オタク女です。
趣味は同人活動、可愛い男の子がBでLするラブストーリーを綴って本にすることですが、若い頃はコスプレをしたりもしておりまして、ロリータを嗜んでいました。といっても、アラサーになってからはご無沙汰です。若さと勢いでやってたけど、もういい年だしな〜と思いながら日陰で小説を書いている。まあ、そういう、どこにでもいるようなオタクです。

そんな私が「人間ラブドール製造所」の存在を知ったのはコロナ禍真っ最中の2020年頃でした。たしか、緊縛写真を探している時に偶然見つけました。なんで緊縛写真なんか探してたのかはちょっと覚えてないのですが、たぶん同人誌の資料関係だったと思います。

人間ラブドール製造所がどんな場所かということは、私がここで文章で説明するより、公式サイトを見ていただいた方が早いと思うので、公式サイトから引用します。

「人間やめたい」そう思ったことはありませんか?

ただそこに存在するだけで愛される存在になりたい。

なんだかパッとしない日々で
考えることに疲れたり、
いつもと違う刺激が欲しかったり、
美しさへの羨望や変身願望があったり、
誰にも言えない願望があったり。

人間ラブドール製造所は、
ラブドール風メイクを施し写真撮影ができる場所。
製造所に入ったらあなたはもうお人形。
だんだんと会話ができなくなっていきます。

まるで人形のように愛玩される
耽美で非日常な体験を提供します。

「人間ラブドール製造所」公式サイトより

平たく言えば変身写真ですね。
第一印象は、コンセプトが面白いな、でした。
私はオタクなので、オタクの常としてドールとかフィギュアも嗜みます。ぬい活という言葉が市民権を得て久しいですが、私もゲームセンターのプライズぬいぐるみに作家さんのお洋服を着せて飾ってみたり、カフェに行く時に連れて行って、ケーキと写真を撮ってSNSにアップしたりします。
今は里子に出してしまいましたが、スーパードルフィーや中国産のキャストドールをお迎えしたこともあるし、実家には作家もののビスクドールが飾ってある。
まあそんな感じなので、「人形」というものには人並みに思い入れがありました。だから「人間の人形化」というコンセプトにも胸がうずうずします。それもラブドール。等身大の女性の人形、時としてアダルトグッズ的な意味合いを内包しているもの。

アダルトグッズ的な……という部分について、私の感情はフラットです。嫌悪も抱かないけど、特段テンションが上がる訳でもなく。それは私が同人BL作家として、「アダルトコンテンツの供給側」に立っているからかもしれません。性という巨大なカルチャーに対して、尊敬の念を抱いているし、いちアマチュア作家として、めちゃくちゃ真面目に向き合ってくる。オフィスビルで真剣な顔してエナドリ飲みながらポルノ小説書いてんだもん。体格差カップルのベッド事情がわからなくて体格差もののアダルト動画片っ端から舐めるように見たり、それで児ポコンテンツに追突してしまってゲロ吐いたり、毎日Amazonのアダルトグッズのレビューを巡回して使えそうな感想をスクラップしたりさ。真剣に取り組んでると何がエロなのかわからなくなってくるんですよね。ラブドールはBLジャンルではそんなに存在感のあるグッズではありませんが、性的ないやらしさを感じるより先に「ラブドールが内包する文学性とかストーリー性ってどんな感じかな……」とか考えてしまうくらいには、私は「創作するサイドのオタク」です。

しかし、とはいえ、自分をラブドールにする……被写体自分……となると、さすがに若干気が引けます。いやだって私さあ! そんな美人じゃないしさあ! お人形になりたいと思ったことはある気がする、でなけりゃ10代の頃にロリータ嗜んだりしない、でも、我30代ぞ??? 普通に「お人形遊びしてる子供がいる」年齢だっていうのに、お人形さんになりた〜い! じゃないのよ。いや、でも人間の人形化ってコンセプト最高に"""アガる"""んだよな、オタクはみんなプランツドールやローゼンメイデンが好き……(クソデカ主語)

家賃11万円のワンルームマンションの八階で、私は「イイナー」とぼやきました。その時の私は正社員だったのですが、三つの店舗を掛け持ちしてて(ラウンダーってやつですね)、毎日違うところに通勤してました。で、通勤時間と距離の関係で住みたくもないのに家賃がクソみたいに高い東京都千代田区の真ん中に住んでました。複数の店舗ぐるぐる回ってるから同僚と大して密な関係を築けるわけもなく。婚活もやってみたけど諦めて、もしかしたら一生独り身なのかな〜、みたいに思ってる、ぼっちの、社会の歯車でした。
一応彼氏はいました。彼氏は少し前までブラック企業に勤めていて、その時の年収は私の半分でした。ずっと不健康な生活をしていたから太っていて、身なりも実に残念だった。そんな人だったけど、私は婚活で敗退した負け組だったし、長野県から「君と付き合いたいから東京に行く!」と啖呵を切って転職活動を頑張り、上京してきたところに絆されて付き合ってた。話が合うし、一緒にいると自然体でいられたから、まあ結婚はできなくても付き合うくらいはいいか、と思っていた。付き合うっつっても、私達の交際はプラトニックでした。我々はお互いに不能だったし、恋愛というより「めっちゃ仲良い友達」って感じだったのです。だから無理にセックスするつもりもなかった。私はBLを書き、自分の同人誌にR18と記載しながら、性欲を抱いたことがなく、セックスの良さも全くわからないまま30年ちかくも生きていた。

人間ラブドールという単語を眺めながら、私は「愛ってなんやろな」と思いました。
これは夏目漱石の「こころ」に出てくる一節ですが、

もし愛という不可思議なものに両端があって、その高い端には神聖な感じが働いて、低い端には性慾が動いているとすれば、

夏目漱石「こころ」

愛に両端があって、性欲は低い方。ラブドールが請け負う愛は、低い方だろうか。でも、標高ゼロの水平線上を彷徨ってる身としては、「愛されるために生まれてきて、愛するためだけに存在しているお人形」ってめちゃくちゃ高次の存在なんだよな。いいなあ、と思いました。いいなあと思って生活しているうちに、私はコロナ禍に巻き込まれる形で職場を追い出され、クソ高い家賃のマンションに住む理由をなくしました。
たまたま新築の都営住宅の1LDKの部屋の抽選に応募したら当たったので、彼氏に「良かったら家賃折半で一緒に住まへん?」と声をかけました。私たちはおんなじ寝室で、枕を並べて、セックスせずにぐーすか寝るカップルでした。愛に両端があるとするなら、私たちの愛は高いところにあるんだろうか。いや、そんな綺麗なもんじゃないな。ただの標高ゼロ地点、というだけで。

とか言ってたのに翌年、私たちはなぜか結婚しました。それには、彼氏の転職が成功したからだったり、同居生活が割といい感じに回ってたからだったり、ノリだったり、色んな理由がありますが、いずれも大した理由ではありませんでした。でもその理由の中には「無理にセックスしなくてもいい相手だから」という、性欲の一致が含まれていたように思います。
で、せっかくだからと私はウェディングドレスを着て、青山のスタジオで写真を撮りました。
あと、色打掛を着て明治神宮で写真を撮りました。

写真の中にいる私は、なかなか幸せそうでした。幸せそうに見えるように、カメラマンさんが頑張ってくれたからでしょうか。いや、もしかしたら本当に幸せだったのかもしれない。お友達婚だから不幸なんていう道理はない。でも、あんまよく知らん親の友達に「そんなのダメよ!」って無茶苦茶非難されたりもしました。大恋愛しないと、結婚してはいけないという考えの人でした。恋愛は結婚に必須なのか、ダメなんだろうか。何故だろう。

愛ってなんだろなー、ということがよくわからないまま既婚者になった私は、その時突然、「よっしゃ人間ラブドールにもなってやろう」と思いました。ウェディングドレスだの打掛だの、人生最大のコスプレ写真です。ならラブドールになってもいいじゃん、と思いました。
あと、「愛」にまつわる比較写真として残しておきたかったというか、プラトニック婚とラブドールという二種類の「愛の両端」を俄然並べてみたくなったのです。

2022年のことでした。コロナ禍も少し落ち着きを見せ、夏インテの遠征ができそうだと踏んだ私はイベントスケジュールに合わせて人間ラブドール製造所さんに製造予約の連絡を入れました。

製造にあたって、ここまでつらつら書いてきた思い入れ、のようなものを、先方にお伝えすることもできました。私はBL小説作家である、私は性的に不能である、私は結婚したばかりだ。
しかし、私は敢えて何も書かず「お任せします」で押し通しました。
何故なら私はこれから人形になるからです。人形の私にこれまでの人生はありません。職業も、趣味も、配偶者もありません。よく考えたら性欲もないから、敢えて不能であるとか書く必要性もない気がしてきました。

当日は、八月でした。
私は運がないことに前日から予定外の生理が来ていて、サニタリーショーツを履くしかない状態で、ぐぬぬぬ、と唸りました。
ラブドールが生理なんて。
生々しく、不完全に、私は人形ではないと突きつけられている気がします。でも、血を流す人形って、逆に芸術性を感じるような気もする。セックスをする人形、セックスをしない人間、妊娠しない人形、身体的に妊娠可能な私。

ドアチャイムを鳴らし、合言葉を言う。
そうして、私はお人形さんになりました。
梱包材に包まれて箱から出され、私の意思と関係ないところで名前をつけられ、物語が与えられていく。

そしてそれらひとつひとつが写真に収められて、……私は元の人間に戻り、手元には写真だけが残る。
不思議な没入体験でした。
私の中の、愛に対する葛藤みたいなものは、全部切り取られて写真の中に収まっていました。

私は「しあん」という名前の、美容師がカットモデル目的で購入したラブドール、という世界を、私の存在のどこかに内包しながらそろりと東京に帰りました。


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出荷されたばかりの「しあん」
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なかなか可愛いでしょ?
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衣装も自分で選んだものではないです。

余談ですが、その日の生理は私にとって、長いお休みの前の最後の生理になりました。(厳密には最後じゃなかったかも、1〜2回きたかな、でも1回だったような気がする)
妊活してたので。妊娠しまして。友達結婚した相手の、シリンジで吸い上げた精子を体内に注入するような素っ気ない妊活で、私は男の子を授かりました。

女体の私と、女体から切り離された私、愛とか生殖、何か妙に感慨深いものを感じたのですが、なんだか上手く書けません。わからん。生き物として生まれる、繁殖する、という行動と、愛とかセックスとかって、近接しているようであまりにも遠くて、少しずつ大きくなっていくお腹を抱えながらぼけーっと「人間ラブドール」の「しあん」を眺めていました。
せっかくだから体験レポ書きたいなあ、みたいな気持ちはずっとあったのですが、この不思議な感慨に名前をつけるのが難しくて、ウーンウーンって唸ってる間に臨月が来て、息子が産まれて、目まぐるしく育児して。
写真撮影した当日はぼんやりした、非現実的で浮かれた「変身写真」に対する気持ちは、その間にゆっくり私に同化していきました。ちょうど、コーヒーにお砂糖を入れるのに似ていると思います。砂糖を入れた瞬間、まずジュワッと砂糖が色付いて、コーヒーは「砂糖入りのコーヒー」に劇的な変化を遂げます。でも、その時点でコーヒーに口をつけても甘い味はしない。ただの「コーヒーに砂糖を入れたもの」だから。
で、そこから、時間をかけて砂糖が溶けていって「コーヒーと砂糖」から「均一な甘いコーヒー」へ変化していく。
ラブドールと「私」から、「ラブドールという行為を内包する私」への変化です。

で、そんな折、ちょうど先週のことですが、お休みしていた生理が戻ってきました。
元の体に戻ったなあ、という気持ちと同時に、私はしあんのことを思い出しました。
そして、また、しあんになりたいなあ、と思いました。
子供がいてもいなくても、妊娠してもしなくても、愛のありように迷っている私は、変わらず私だ。

しあんは、私ではありません。私の意思が一切反映されていない、被写体として私の肉体を借りただけのお人形です。でも、あの瞬間、結婚して、生理があって、子供はまだいなくて、漠然と愛について悩んでいた私そのものでもある。

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別のスタジオで撮った10ヶ月後の「しあん」だった私

こういうのって何ていうんでしょうね。現代アートか?
結局のところ、私の語彙ではちょっとうまいこと表現できなさそうなのですが、とりあえずただの変身写真とか、コスプレに留まらずおもしれー体験ができたのは間違いないです。

というわけで、レポートを終わります。
ここまで読んでくださった方、よかったら人間ラブドール製造所さんに行ってみてください。男性でも製造して頂けるみたいです。たぶん女である私とはまた違う素敵な経験になると思います。

おしまい。

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