「インフルエンザワクチンでは脳症を予防できない」
という方が一定数いらっしゃいますが、んなこたありません
インフルワクチンは脳症を含む重症化全般に対し予防効果が示されています。
ただ、インフルワクチンは効果が実感しづらいのも事実。
ここで一旦まとめておきましょう
◎インフルエンザワクチンを毎年打つ理由は?
簡単に言うと「あんまり効果が長持ちしないから」です。
2回打てばほぼ生涯にわたり発症を予防できる麻疹ウイルスなどと違って、
インフルやコロナワクチン(レプリコンを除く)は1ヵ月ごとに数%ずつくらい効果が落ちていきます。
加えて、インフル・コロナは変異しやすいという厄介な性質も持っているため、
毎年秋~冬くらいに、現行の流行株にあわせたワクチン接種がおすすめなわけですね
◎どうやってワクチンの株を決めてるの?
WHOがインフルエンザ協力センターという機関を設けておりまして、
そこで常に最新のインフルエンザの情報をめちゃくちゃ収集しています。
ここで毎年、「この年に流行りそうな株はコレやな…」という感じでワクチンにする株を決定し、
それに応じて厚生労働省や国立感染症研究所、製薬会社などがワクチンを製造している感じです。
ただ、たまにそういう目論見を無に帰すとんでもねえミュータントが出現することがあります。
直近では2009年に流行した新型インフルエンザがそれですね。
この時は累計死者数が28万人にのぼりました。
そのひとつ前、1918年の新型インフルエンザ(通称・スペイン風邪)は全世界の死者数が5000万~1億人と推計されています。
ちなみに当時の世界人口は18~19億人くらいです。
インフルエンザやばすぎる。
◎インフルワクチンの効果は?
「インフルエンザワクチン打ったのに発症した!つまりインフルワクチンに効果は無い!」
という0か100かでしか考えられない素朴な知性の人がよく居ますが、感染症というものはそんなシンプルではありません。
インフルワクチンの効果については「発症予防効果」「重症化予防効果」の2つにざっくり分けて考える必要があります。
一般にインフルワクチンの「有効性」と表現する場合、前者の「発症予防効果」を指すことがわりと多いです。
厚生労働省の資料によると、2015/16シーズンにおいて6歳未満の小児を対象とした研究では、
インフルエンザワクチンの発症予防効果は60%であったとされています。
これについては年や地域によって数字が前後しますが、
乳幼児に関しては概ね20~60%くらいの発症予防効果である、という報告が多いですね
では、重症化予防の方はどうか?
これも年によって異なりますが、
2022-23年シーズンの米国の報告によると、小児全体(17歳以下)においてインフルエンザワクチンの重症化予防効果は48%だったとされています。
ここで定義されている「重症化」は「入院が必要な症例」を指し、肺炎も脳炎も全て含んだものです。
いずれも等しく「入院管理が必要なほどにインフルエンザが重症化した状態」として扱っているので、
脳炎だけ特別枠で集計する必要性に乏しいです
◎日本小児科学会が「脳症の阻止はできない」って書いてるけど?
2014年の小児科学会の見解のごく一部だけを切り取って↑のように主張するアホがいますし、
それを鵜呑みにしてしまった残念な医者も少数ながら存在します。
出典もきちんと読もうぜ。
この見解の当該部分を箇条書きにしてみましょう。
・インフルエンザ脳症患者とインフルエンザ罹患者の間で接種率に差は無かった
・よって、インフルエンザ脳症の阻止という点でのワクチンの有効性は低い(アホはここだけ切り取る)
・しかしワクチンはインフルエンザの発症リスク自体を下げるので、その結果として脳症の発症リスクを減じることが期待できる
・そもそもワクチンで重篤な合併症が起きるリスクは極めて低いので、打てるなら絶対に打った方が良い
…まあ確かに小児科学会さんの提言が分かりづらいのは事実ですし、
疫学が分かんないと↑の内容も理解しづらいですが、
一言でまとめると、小児科学会さんは一貫して「インフルワクチンを打った方が良い」というスタンスを貫いています
◎自然な免疫が一番!ワクチンなんかに頼るから体が弱るんじゃないか?
ワクチンや感染防御策を全くとらずに大自然のジャングルで1ヵ月暮らして何の病気にもならなければその考え方でOKだよ!
参考文献
厚生労働省「令和6年度インフルエンザQ&A」
mhlw.go.jp/stf/seisakunit
厚生労働省「インフルエンザワクチン(季節性)」
mhlw.go.jp/stf/seisakunit
日本小児科学会「乳幼児(6歳未満)に対するインフルエンザワクチン接種について」
jpeds.or.jp/modules/activi
Does influenza vaccination attenuate the severity of breakthrough infections? A narrative review and recommendations for further research
sciencedirect.com/science/articl
Vaccine Effectiveness Against Pediatric Influenza-A–Associated Urgent Care, Emergency Department, and Hospital Encounters During the 2022–2023 Season: VISION Network
academic.oup.com/cid/article-ab
Quote
たけのこ
@nonbiri_4taiyo
医者10年目ですが、脳症で入院する子供たちのほぼ全員が未接種です。ワクチンしてもインフル罹患することはあるのだけど重症化予防のために打ってほしい。6か月未満は打てないから周囲の大人も。 x.com/io302/status/1…