カクヨム

『【1巻発売記念SS】かくして少年は迷宮を駆ける『変身少女アカネちゃん☆(現在取り調べ中)』/あかのまに』のエピソード「変身少女アカネちゃん☆(現在取り調べ中)」の下書きプレビュー

【1巻発売記念SS】かくして少年は迷宮を駆ける『変身少女アカネちゃん☆(現在取り調べ中)』/あかのまに

変身少女アカネちゃん☆(現在取り調べ中)

作者
MFブックス
このエピソードの文字数
1,398文字
このエピソードの最終更新日時
2024年5月22日 14:22

 それは、ウルがアカネの様子を確認するために【黄金不死鳥ゴルディン・フェネクス】のディズを訪ねたある日の事。


「興味本位で聞くんだけど、アカネっていつもどんな変身してるの?」


 妹の身柄を預かっている借金取りの根城に通うという、やや珍妙な状況に慣れつつあったこのごろ、いつもの挨拶あいさつと雑談の後、不意にディズがそんなことをたずね、ウルは首をかしげた。


「――日頃、どんな姿をしてるかって話?」

「そうそう。得意な変身ってやつあるのかなって」

《あるよー!》


 まあ、如才じょさいないディズの事だ。

 アカネの能力に関してはウルに尋ねるまでもなく、確認できるところは確認し尽くしているだろう。そういう意味でも、彼女自身も言っていたとおり、この質問はただの「興味本位」であり、雑談なのだろう。

 ウルもかたの力を抜いた。 


「まあ、知ってると思うが動物全般は得意だな」

《むにゃ》


 今現在のアカネは赤色のねこの姿だ。毛色は珍しいが、見た目は完全に猫であり、都市国の中でみかける猫と大差ない。


「人目から隠すのには都合つごうよさそうだしね」

「ああ、それに潜入に向いている」

「潜入」

「特に猫は都市国の中でも愛玩用あいがんようで見かけるからな。どこにでも潜り込めるし」

《ねー》


 どれだけ毛色が変わっていようとも、猫相手に警戒する者はそういない。愛らしい姿は割と油断を誘えるのだ。と、少し妹自慢のように語ったが、ディズを見ると複雑そうな表情を浮かべていた。


「……うん、いったん流そうか。他には?」

「他は、妖精形態かな。魔術師が使う使い魔に似てる」

「ああ、うん。普段の姿だね」

《かーいでしょ?》


 再びアカネの姿は変わる。今度は小型の妖精の姿だ。透き通った綺麗きれい緋色ひいろの翼を自由に広げてパタパタと空を飛んだ。


「可愛いね。自由に空を飛べるし、便利そうだ」

「空から偵察ていさつもできるしな」

「偵察」

《べんりよ?》

「……うん、他には?」


 やはり少し複雑そうな表情をしながら、ディズは続きを促した。が、他と言われると少し困る。


「そこまで色々と変身してきたわけじゃないんだが……ああ、自分の体にまとわり付かせるのは得意だな」

《あれかー》


 そう言って、妖精の姿をしたアカネがウルの服の中に飛び込んだ。するとそのまま、ウルの服と同化した。ウルの身体にへばりついているような状態だ。


「隠れるため?」

「それもあるが……」


 ウルはそのまま立ち上がると。部屋の壁にてのひらを当てる。すると、掌にアカネがへばりついて、壁とウルを接着した。そのまま身体を引っ張り上げれば、


「ほら、こうしたら、壁に貼り付けるだろ」

《すごいでしょ!》

「すごい。犯罪の気配もすごい」

「そんでもって、こうして顔をアカネで覆うと……」


 飛び降りて、アカネがウルの顔を覆う。まるで祭りのお面のように、老いた老人の顔に形が変わった。


「老人に変身! とかな。追っ手の目から逃れて、不意打ちでぶん殴るのに便利なんだ」

《ふふーん、どやぁ!》

「なるほど。発想次第でなんでもできるって訳だね」


 ディズは満足したように頷いた。頷いて、ぽんとウルの肩を叩いた。


「ところでウル、アカネ」

「なんだ」

《なに?》

「君、冒険者になる前まで泥棒どろぼう稼業かぎょうしてた?」

「ガラクタ拾いで小銭稼いだりしていたが」

「なんで?」

「なんでと言われましても」

《ても?》


 今言ったような能力は、子供同士のケンカや借金取り等から逃れるために使ったもので、犯罪に利用したりはしていない――――と、説明して、納得してもらうのに時間がかかったウル達であった。

共有されたエピソードはここまで。 MFブックスさんに感想を伝えましょう!

小説情報

小説タイトル
【1巻発売記念SS】かくして少年は迷宮を駆ける『変身少女アカネちゃん☆(現在取り調べ中)』/あかのまに
作者
MFブックス
公開済みエピソードの総文字数
0文字