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ハーバード大、次期米政権下で批判派台頭の脅威-資金面に暗雲

更新日時
  • 次期政権と保守活動派、ハーバード大が過度にリベラル化と非難
  • 大学の自治や独立性が脅かされる可能性-高等教育全体に影響も

米大統領選挙で民主党候補のハリス氏が敗れた数日後、米ハーバード大学のハリー・ルイス教授(コンピューターサイエンス)は学生新聞「ハーバード・クリムゾン」の記事を読んで失望した。一部の教員が学生らに同情し授業への出席を任意にしたというのだ。

  物理学のある女性教授に至っては、トランプ氏勝利から来る苦痛を和らげようと、米定番のお菓子「レモンバー」をたくさん焼いてストレスを解消したという。

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ハーバード大学のハリー・ルイス教授
Photographer: Sophie Park/Bloomberg

  ハーバード大で50年間にわたり教壇に立ち、ハーバード・カレッジの学部長も務めたルイス氏にとって、このエピソードはより深刻な問題を提示している。学生の幼稚化と教室の政治化だ。

  ルイス氏はインタビューで「われわれはかなり多くの教員が、世界を変える手段は何らかの社会運動を通じたものであり、それが学者としての責任や機会の一部だと考えることを許容してきた」と語る。

  これはまさに、ハーバード大批判派が大学側に期待してきたものだ。ハーバード・クリムゾンの調査によると、2024年卒業の学生のうち、「保守派」または「非常に保守派」と答えた学生は13%に過ぎなかった。また、教員の4分の3余りがリベラル派と自認していた。

  批判派の1人で保守活動家のクリストファー・ルフォ氏が今望んでいるのは、トランプ次期政権がハーバード大を高等教育改革の最初のターゲットにすることだ。

  マンハッタン研究所のシニアフェローである同氏はインタビューで「もしハーバード大から変化を引き出し、より良い方向に導くことができれば、他の大学もそれをシグナルと捉え、方針を見直すだろう」と指摘した。

  こうした教員、学生、経営側、活動家、政府関係者が互いに反目し合う状況は、ハーバード大のアラン・ガーバー学長(69)の職務遂行を特に難しいものにしている上、事態はさらに悪化する方向に向かっている。

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保守活動家のクリストファー・ルフォ氏(中央)
Photographer: Thomas Simonetti/The Washington Post/Getty Images

  米大統領選挙および連邦議会選挙で共和党が勝利したことを受け、ハーバード大批判派の一部が政府の要職に就こうとしているためだ。

  トランプ氏は、ニューヨーク州選出のステファニク下院議員を国連大使に起用する意向を示した。ステファニク氏はハーバード大の卒業生だが、現在では批判派の1人となっている。

  また、バンス次期副大統領は、ハーバード大学寄付基金のような大学基金を「米国の社会悪」と呼び、こうした基金に対する大幅な増税を提案している。

  さらにハーバード大は課税対象ではない教育機関の一つである上、連邦政府の補助金を受けているが、こうした状況は共和党が主導する議会によってすでに脅かされている。

  ハーバード大のリチャード・トーマス教授(古典学)は「反民主主義的な勢力は高等教育を喜んで解体するだろう。ハーバード大は連邦政府の補助金なしで生き延びるか、補助金の受給に伴う極端な政治的支配に従うかの選択を迫られる可能性がある」と話す。

  ハーバード大を非難しているのは議員だけではない。寄付者や長年の支援者も改革を求めている。批判の矛先は、キャンパス内の反ユダヤ主義への対応、学生や教員の募集、言論の自由に関する規則の選択的な適用などだ。

  資産家のケン・グリフィン氏も今年、母校のハーバード大を批判した1人だ。これまで5億ドル余りを寄付したが、同大が「米国の若い男女をリーダーや問題を解決できる人物に育成する役割」を再び担わない限り、寄付を停止するとの認識を示している。

  ルフォ氏がトランプ次期政権に期待するのは、大学への補助金とDEI(多様性、公平性、包摂性)プログラムの廃止とを結び付けることだ。行動を起こさなければハーバード大に重大な結果がもたらされる可能性がある。

373rd Commencement at Harvard University
ハーバード大のアラン・ガーバー学長
Photographer: Craig F. Walker/The Boston Globe/Getty Images

  ガーバー氏はこうした今後の課題を理解している。「大学が国に貢献することの重要性を訴える必要がある」とインタビューで述べた。

  ハーバード大は批判の一部について、不正確で誤解に基づくものと主張しているが、ガーバー氏は「根底にある問題の一部は現実のものだ」と考えており、それら全てに直接反論する意向はない。

  だが、同氏が懸念するのは、学生が影響を恐れて授業中の自由な発言をためらったり、物議を醸す、あるいはセンシティブなトピックについて議論できなくなったりすることだ。

  ハーバード大はこの問題に対処しているとし、講義から個人的な話題に関するものまでさまざまな取り組みが進行中だとしている。

  今年1月、盗作疑惑や大学キャンパス内での反ユダヤ主義への対応を巡る問題などを受け、クローディン・ゲイ前学長が辞任を表明。その後、暫定学長として就任したガーバー氏は問題への対処に迅速に動き出した。

  同氏は数週間も経たずして反ユダヤ主義などへの対応を強めたほか、数カ月後にはハーバード大が学内の主要な機能に直接影響しない公共の問題について今後は公式声明を出さない方針を示した。

  だが、イスラム組織ハマスの襲撃に対するイスラエルのパレスチナ自治区ガザ地区への報復攻撃を巡り、学生の抗議活動が全米で広がる中、ハーバード大でも学内に学生が野営する事態となっている。

  こうした混乱が継続することで、ハーバード大は世界的なスポットライトを浴び続けるだろう。

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原題:Harvard’s Fiercest Foes Are Gaining Power and Vowing Punishment(抜粋)

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