「底辺の職業ランキング」で物議、問われる情報サイトの発信のありかた
2022/07/08 コンプライアンス
はじめに
2022年6月下旬、株式会社Synergy Careerが運営する「就活の教科書」にて投稿されている「底辺の職業ランキング」という記事がSNS上で取り上げられるようになり、物議をかもしました。「就活の教科書」は就活生に向けて就職ノウハウなどのノウハウやナレッジを提供することを目的としたサイトでしたが、その運営のあり方に厳しい視線が向けられています。そこで今回は、話題を呼んだ「就活の教科書」の問題の背景や現在の会社の対応について見ていきます。
就活の教科書とは
サイトの説明によると、「就活の教科書」は累計3,500万PV、月に就活生50万人が訪れる大規模な就活情報サイトです。網羅的な就活情報を約1,600記事掲載しており、新聞、ラジオ、雑誌など、多数メディアに掲載された実績があります。「就活の教科書」の運営会社は株式会社Synergy Careerで、合計30人のインターンシップ生と共に運営されています。過去には、コロナ禍の就活生を救う面接練習動画の制作費用をクラウドファンディングで募り、目標金額203%を達成するなど、多くの就活生に支持されてきました。
物議をかもした記事とその後の対応
多くの批判を浴びる対象となった記事は、「就活の教科書」の中の「底辺の職業ランキング」という見出しの記事です。この記事では、編集部員と就活生が対話する形式で進められ、「底辺職の特徴やデメリット、底辺職を回避する方法」が解説されるという内容でした。紹介された職業は12で、「土木・建設作業員」「警備スタッフ」「工場作業員」「倉庫作業員」「コンビニ店員」「清掃スタッフ」「トラック運転手」「ゴミ収集スタッフ」「飲食店スタッフ」「介護士」「保育士」「コールセンタースタッフ」とされていました。それぞれの職業には年収や底辺と見なされている理由について解説が加えられています。また、同記事では、これらの職業の特徴として肉体労働、誰にでもできる仕事、反復作業の多い仕事としており、これらの仕事に就くデメリットとしては、年収の低さや結婚時の苦労、体力の消耗などをあげています。また、これらの職業を抜け出す方法や就業しない方法として、「就活エージェントを利用する」「逆求人サイトを利用する」などの選択肢を挙げ、お薦めのサイトのリンクが貼られていました。
批判と記事の削除
この記事は冒頭で「何を底辺職だと思うのかは人それぞれ」と書いている一方で、「底辺職と呼ばれる仕事に就きたくない方は、転職したり、スキルや資格を身に付けることが重要です」と最後にまとめるなど、就活サービスの利用を意図して書かれたものだと推測されます。6月下旬にはこの記事の内容がSNS上で拡散され、「職業差別だ」「エッセンシャルワーカーを馬鹿にしている」という批判的な意見が多数寄せられました。また、テレビなどの報道でもこの話題は取り上げられ、Synergy Careerへ電話取材なども行われています。Synergy Careerは多くの批判を受け、6月下旬に記事削除していますが、当該サイト上ではその他のコメント等は発信されていません。また、メディアからコメントを求められた同社は、「今回の記事の作成者に、改めて記事の作成経緯を含め事実関係を確認し、今後の対応について検討する」としています。
コメント
当該記事では、運営会社の代表の名前やプロフィールが監修者として示されており、代表も含めた会社のコンプライアンス意識の欠如や過度なPV至上主義的な発想、アンコンシャス・バイアスによる誤った判断などが背景にあったのではと囁かれています。「就活の教科書」では、今回の記事以外にも、一部の大学を、いわゆる「Fラン大学」と名指しして取り上げた記事を掲載し、物議を醸しています。こうした一連の炎上騒動を受け、Synergy Careerと広告提携等を行っていた株式会社i-plug(学生向け就活サービス「OfferBox」運営)は、同社との間で締結した一切の契約の解除を申し出ています。他の広告を出稿している企業もこれに続くおそれがあり、そうなった場合、アフィリエイト広告で売上を立てているSynergy Careerの経営に少なくない影響を与えると考えられます。情報発信に細心の注意が求められる時代においては、社内でアンコンシャス・バイアスが醸成されにくい環境を用意すること、情報発信時のチェック体制を丁寧に整備することが重要になりそうです。
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