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PROJECT 02環境負荷低減と収益の両立
〜8BO(ハチボイラ)プロジェクト〜

「8BO みんなで築こう 水島のみらい!」をスローガンに、
新型石油コークスボイラ発電設備の建設に挑む。

石油精製の過程で生成する重質油を分解した残渣である石油コークスは、重油やガスより安価な燃料だ。水島製油所B工場では2015年4月、石油コークスを燃料とした発電設備を設置するプロジェクトを始動した。プロジェクト名は「8BO(ハチボイラ)(※)プロジェクト」。完成までに3年を要する他に類を見ないプロジェクトにはさまざまな困難が待ち受けていた。たとえば環境負荷低減のハードル、あるいは要求性能の高さ、次々に発生する想定外の事態。個人では達成困難なそれらの課題を克服したのは、社内外のメンバーで構成された「チーム8BO」の協力と創意工夫、決してあきらめないチャレンジ精神だった。

※8BO(ハチボイラ)
水島製油所B工場で設置された8番目のボイラ。

PROJECT MEMBER

  • 櫻井 伸彦SAKURAI NOBUHIKO
    水島製油所機械保全グループ 機械1チーム チームリーダー
    理工学研究科修了
    2007年入社
    ※会社名・組織名・所属名・インタビュー内容等は取材当時のもの
  • 市島 一輝ICHISHIMA KAZUKI
    水島製油所製油3グループ 動力1係 係長
    理工学研究科修了
    2007年入社
    ※会社名・組織名・所属名・インタビュー内容等は取材当時のもの

8BOプロジェクト発足の背景と、プロジェクトにおけるそれぞれの役割を教えてください。

櫻井
水島製油所では、所内で利用するエネルギーを、既設ボイラで発生した蒸気、自家発電した電力、および一般電気事業者から購入した電力で賄ってきました。自家発電設備の燃料には重油とガスに加え、製油所内で生産される石油コークスも使用してきましたが、あくまで一部に過ぎませんでした。石油コークスは、石油精製の過程で生成する重質油を分解したもので、重油やガスより安価な燃料です。そこで、それまで半分以上を外販していた石油コークスを燃料とする発電設備を新設しようというプランが打ち出されました。それが8BOプロジェクトです。
市島
大型ボイラ(530t/h)とタービン(11万kW)を新設することで、水島製油所B工場内で使用する電力の全量を自給するとともに、余剰電力は工場外へ供給することが可能となります。つまり、エネルギーの省コスト化で水島製油所の競争力をアップすると同時に、ENEOSの電力小売り事業の強化を睨んだ計画です。プロジェクトは、2015年4月に発足し、完成は2018年6月。3年間にわたる長期プロジェクトとなりました。もちろん予算が成立しなければプロジェクトは開始できませんから、それ以前の企画段階、基本構想段階を含めるとさらに長期にわたります。当社ENEOSグループの製油所全体でみても、類を見ない大型プロジェクトと言えるでしょう。
櫻井
市島さんは、プロジェクト発足以前の企画段階から関わる、起ち上げメンバーのひとりです。私はプロジェクト発足時、基本設計段階から参加しました。発足時のメンバーは7名で、建設最盛期には27名のプロジェクト体制で臨み、本社・製油所のサポートを受けながらプロジェクトを推進しました。
市島
プロジェクトでは私がプロセスチームのリーダーを、櫻井さんが設備チームのリーダーを務めました。2人は水島配属の同期入社であり、互いに切磋琢磨した仲です。私はプロセス担当者として、基本設計・詳細設計を行ったほか、装置完成後の性能確認のための試運転管理業務も担当しました。
櫻井
設備チームは、プロセスチームの設計に基づいてボイラ・タービンなどの詳細な仕様を決定し、設備設計やメンテナンス方法の検討などを行いました。その後、必要な資機材を調達し、据え付け工事を実施しました。私はコントラクタの窓口としてEPC(設計・調達・施工)業務の取りまとめを行うほか、電気事業法に関連する工事計画届出書の作成、ならびに官庁との折衝業務などを担当しました。

本プロジェクトを遂行するうえでもっとも大変だったことは?

市島
当初からわかっていた課題のひとつは環境負荷の低減です。石油コークスは、燃焼時に大量のNOx(窒素酸化物)、SOx(硫黄酸化物)、ばいじんが生じます。そこで新設備には排煙脱硝設備や排煙脱硫設備、電気集じん設備、排水処理設備など、最新鋭の技術を導入した環境設備を設置し、環境への影響を抑えるため、最大限に配慮しました。
櫻井
プロジェクトによって燃料コストが低下しても、環境への負荷が高まってはいけません。環境への影響度を評価するために環境アセスメントを実施したのですが、8BO稼働と同時に、それまで使用していた油焚きの既設ボイラを停止し、環境負荷を同等以下に抑えることがプロジェクトの前提でした。
市島
環境負荷低減以外にも、本プロジェクトにはいくつもの乗り越えるべき壁が立ちはだかりました。8BOプロジェクトは、既設のコークス発電設備を少し大きくしたものをもう一つ作っただけと思われがちですが、要求性能はまったく違います。製油所内ではさまざまな装置で蒸気・電気・燃料ガスなどのエネルギーを使用しますが、その使用量は稼働状況により日々変動します。そのため新設する8BOは、製油所内のエネルギーバランスをとるクッション機能が要求されました。しかし、石油コークスは難燃性固体燃料であり、粉砕工程を含むため、重油やガスと比較し燃焼スピードが遅く追従性が悪い。製油所内の蒸気・電気・燃料ガスの変動をすべて石油コークスで制御するという、既設設備とは比較にならないほどハードルの高い要求性能でした。
櫻井
コントラクタの人たちと何度も検討し、シミュレーションによるトライアンドエラーを重ねていましたね。
市島
実に注文の多い要求性能でした。それでもコントラクタの方々と協力し、シミュレーションの結果から、改良対策を加えることで、何とかすべての要求性能を達成することができました。
また、プロジェクトには製油所内の燃料ガスバランス調整のため、対岸に位置するA工場と繋がる海底トンネル内の燃料ガス配管敷設も含まれていましたが、こちらもA工場のメンバーと連携し、完遂することができました。
櫻井
私にとって大きな課題は、限られたリソースのなかでいかに最大のパフォーマンスを実現するかということでした。プロジェクトを成功に導くためには安全管理、品質管理、工程管理、コストコントロール、マテリアルハンドリングなど、さまざまな活動を成功裏に進める必要があります。なかでも安全管理については、狭い敷地の中で最大1日1000人の作業員が、重機が錯綜するなかで大型工事を行うため、プロジェクトに関わる仲間が誰ひとりとしてケガをしない・させないという強い信念を持ち、労災“ゼロ”を目標に掲げました。目標達成のため安全専任体制を構築し、安全管理アクションプランを遂行することで実効性を高めていきました。重大休業災害を発生させることなく工事を完遂できたことは大きな喜びです。
市島
試運転時も非常に苦労しました。試運転は約5ヵ月と長丁場でしたが、製油所の通常運転に変動を与えないように関係者と日々の試運転メニューを共有しながら慎重に進めました。また、薬品、水、空気などユーティリティーを製油所の各所から供給してもらう必要があったため、事前にユーティリティー使用量の計画表を作成し、関係部署と密に連携することで、試運転工程を無事に完遂しました。
櫻井
大型タービンや蒸気ドラムを搬入するためのルート設定などに四苦八苦したり、本プロジェクトではさまざまな困難が発生しましたが、プロジェクトメンバーをはじめとして製油所各部門や関係各所の協力のもと、一つひとつ解決し、乗り越えていきました。
市島
「8BO みんなで築こう 水島のみらい!」という一つのスローガンのもと、コントラクタをはじめとする社内外の大勢の人に支えられ、成功したプロジェクトでした。

このプロジェクトで感じたやりがいや得られたものは何でしょう。

櫻井
大型プロジェクトを完遂したことで、エンジニアリングやプロジェクトマネージメントのスキルが向上したことは言うに及びませんが、個人ではブレイクスルーが困難な課題に対しても、突破口を見出せるネットワークを築くことができたことが最大の成果です。会社の枠を越えた『チーム8BO』の絆は、私の人生で得た最大の宝物です。
市島
私も同じです。個人の力では達成困難な課題が数多くあったプロジェクトでしたが、チームの力で知恵を出し合い、最後まで粘り強く、諦めず取り組むことで課題を達成することができました。コントラクタの方々とは会社を超えた絆が生まれました。現在、建設した装置を運転管理する立場になりましたが、今でも困ったことがあれば相談しあえるような関係性を築くことができました。
櫻井
ENEOSという企業の視点でいえば、8BOプロジェクトによる水島製油所の競争力の向上は大きな成果ですし、本プロジェクトを通して培ったプラント設計技術、オペレーション技術は大きな財産だと思います。
市島
石油コークスを燃料に製油所内で使用する電力の全量供給を実現しているのは、ENEOSグループの製油所では水島製油所だけです。そういった意味ではENEOSのプラントに関する技術力を、またひとつ進化させたプロジェクトであったと思います。
櫻井
製油所内で使用されない余剰電力は、新電力事業用として販売され、広く社会に割安な料金で提供されています。アジアを代表するエネルギー・素材企業として、人々の暮らしを支える存在として、社会からの期待に応えることにもつながっています。

このプロジェクトを踏まえ、今後、挑戦したいことや手がけてみたいことを教えてください。

櫻井
これまでの専門知識・実務経験を活かし、次は持続可能なエネルギー事業分野へ貢献できるプロジェクトに参画してみたいと考えています。社会的課題である再生可能エネルギーへのエネルギーシフトへの挑戦は、ENEOSの社員として使命感を感じられる領域であり、自己のキャリアプランにとっても、飛躍できるチャレンジングな業務と考えています。
市島
昨今の石油製品の需要減少により、製油所はこれまでの石油精製事業のみでは非常に厳しい時代が訪れようとしています。今こそ製油所の将来像を見つめなおす時期でしょう。たとえば製油所の豊富な水素製造能力を活用した水素供給サプライチェーン事業や、社会的課題となっている廃プラスチック再生等の環境対応型事業など、従来の製油所に付加価値を加えるチャレンジが必要です。私もこれまでの専門知識、プロジェクト実務経験を活かしたプロジェクトにぜひ参画したいと考えています。
櫻井
これまでENEOSが培ってきたプラント設計技術、オペレーション技術が未来のエネルギー社会に役立つことは間違いありません。製油所のもつポテンシャルを新たなエネルギービジネスにどう活かすかが、これからの私たちの使命ですね。

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