気になる調査結果が公表された。インターネット上を飛び交う情報のリスクを認識している人の割合が、日本では諸外国に比べて大幅に低かったという。
総務省は7月に2023年版「情報通信白書」を出した。それによると、ネット交流サービス(SNS)には自分の意見や考え方に近い情報が表示されやすいことを「知っている」と回答した人の割合は4割弱にとどまった。7~8割だった米国、ドイツ、中国の3カ国に比べて極めて低い。
プラットフォーム企業は利用者の閲覧や検索の履歴などを基に、関心のありそうな情報を選別してスマートフォンなどの端末に配信している。自社のSNSなどの利用時間をできるだけ長引かせ、広告媒体としての価値を上げようとするからだ。
その結果、利用者が自分好みの情報に囲まれるデジタル環境「フィルターバブル」が形成される傾向がある。弊害は異論や別の視点に触れる機会が失われることだ。人々のものの見方が偏れば、社会の分断に拍車がかかる。
ネットには誤った情報や意図的なウソ、デマも出回りやすい。フィルターバブルに囲まれているとそれにも気づきにくくなる。
偽情報の拡散を防ぐため、非営利団体や報道機関による検証活動「ファクトチェック」が広がっているが、その認知度も日本は低い。「知っている」と回答した人は半数弱で、9割を超えた米国や韓国に比べて大きな差がある。
ネット情報の特性を知らないまま、手元に集まる耳に心地よい情報ばかりに接していれば、人は自身の考えや気持ちを見失ってしまう恐れがある。自由意思による選択が前提の民主主義が根幹から揺らぎかねない。
公的な規制の動きもあるが、権力頼みには危険も伴う。監視や検閲、情報操作などに利用される可能性があるためだ。
弊害を防ぐため、まず必要なのはプラットフォーム企業による健全化への取り組みだろう。同時に学校におけるデジタルリテラシー教育、官民による啓発活動の充実も不可欠だ。
市民自身もリスクを自覚し、情報の質を見極める力を向上させる必要がある。