第3回 共助資本主義マルチセクター・ダイアローグ開催レポートーーシナジーの深化へ
2024.12.19
お知らせ

経済同友会、インパクトスタートアップ協会(以下、ISA)、新公益連盟による共催イベント「第3回 共助資本主義 マルチセクター・ダイアローグ」が2024年10月4日、東京・赤坂で開催されました。大企業、インパクトスタートアップ、NPOが社会課題の解決に向けて手を取り合い、新たなイノベーションの創出を目指す本イベントには、約430名が参加。その熱気あふれる当日の模様を紹介します。
開催の背景ーー共助資本主義 マルチセクター・ダイアローグとは?
2023年7月、経済同友会、ISA、新公益連盟の3団体は連携協定を締結。企業とソーシャルセクターがもつ資源を有効活用し、国内外のさまざまな社会課題の解決を目指す取り組みを始めました。同年9月には、活動の発信や企業とソーシャルセクターの連携活動のきっかけづくりを目指し「第1回 共助資本主義 マルチセクター・ダイアローグ」を開催。それから1年間の活動を経て、今回が3回目の開催となりました。
当日は、パネルディスカッションや各分科会による活動報告、NPO団体によるラウンドテーブルやスタートアップ企業によるピッチセッションが行われたほか、初の試みとなった「共助リーダー・アワード2024」の授賞式も行われました。
オープニングトークと開会挨拶ーー社会課題の解決には共感を生むことが大切
開催に先立ち、オープニングトークに経済同友会副代表幹事で共助資本主義実現委員会委員長の髙島宏平氏が登壇しました。髙島氏は「企業とソーシャルセクターが力を合わせることによって、社会のインパクトと経済のインパクトを両立していく」とコンセプトについて言及。当イベントのプログラムを紹介したうえで、来場者に毎回共通のグラウンドルールを説明しました。

「お互いをリスペクトしながら必要な要求をしてもらいたいので、しっかり要求をしていただきたいです。そして、コミットメントとアクションを行う。必ず何らかのアクションに落とし込んで、帰っていただきたいです」(髙島氏)
続いて経済同友会代表幹事の新浪剛史氏が開会挨拶。新浪氏は「私たち経営者だけでは社会問題の本質を理解することはできない。皆さんとコミュニケーションをとることによって少しずつわかることなので、共感を生むことが大切です」と言い、社会的弱者が大変な状況に置かれている現状を目の当たりにした経験から、現場に足を運ぶ重要性を訴えました。そして、マルチセクター・ダイアローグの意義を強調し、社会課題解決への決意を表明しました。

「マルチセクター・ダイアローグを通じて、新たな社会課題をぜひ一緒になって解決したいです。国は大変なお金を今まで使ってきましたが、使い勝手が悪い。私たち3団体が一緒になって、問題解決を進めていきたいと思います」(新浪氏)
パネルディスカッションーー大企業との共創がインパクトスタートアップにとって不可欠
「共助経営のこれから」と題したパネルディスカッションでは、前出・髙島氏がモデレーターを務め、各団体の代表者5名が登壇しました。
ISAからは、協会理事を務める株式会社ヘラルボニー代表取締役Co-CEOの松田崇弥氏が登壇。松田氏は、知的障害をもつ作家が描いた作品を商品化するIP(知的財産)ビジネスを展開していることを紹介し、「『障害者=欠落』となってしまう現状を変えたい。従来の支援的な福祉構造を逆転させて、持続可能なビジネスモデルをつくりたい」と創業の思いを語りました。
同社はサントリー系の合弁会社とボトルウォーターを販売するなど、さまざまな企業とのコラボレーションを展開しています。作家の収入が増えることで、障害者手帳を受ける立場から納税者になるため、社会コストの削減にも貢献しているとのことです。
松田氏は髙島氏から「共助経営を手探りでやってきたなかで重要なポイントは何か」と問われると、大企業との共創を挙げました。

「インパクトスタートアップにとって最大のレバレッジ施策は、大企業との共創です。『インパクトスタートアップと組むと利益が下がる』と思われるのはよくないので、我々がさらに力をつけて、『インパクトスタートアップと組むと売上も上がる』というレベルまでもっていく必要があると感じています」(松田氏)
共助資本主義の現在地ーー分科会からの報告ーー「企業版ふるさと納税」改正のために政府へ提言
分科会からの報告パートには、各団体から5名の代表が参加しました。ISAからは、協会代表理事でREADYFOR株式会社代表取締役CEOの米良はるか氏が登壇。政府に対し、企業版ふるさと納税に関する制度の延長・改正に向けた提言をする予定であることを報告し、広く協力を呼びかけました。

「基本的には延長する方向で進んでいますが、使い勝手の部分にまだまだ改善の余地があります。企業の皆さまの寄付をもっと増やしていただき、ソーシャルセクターに貢献したいという声を上げていただくことが重要だと思うので、引き続き皆さまと一緒に取り組んでいければと考えています」(米良氏)
共助リーダー・アワード2024ーーWOTA代表取締役CEOの前田瑶介氏が受賞
共助によって優れた成果を出したリーダーを表彰する「共助リーダー・アワード2024」。より共助の具体的な取り組みを創出し、促進させるための取り組みとして今回初の開催となりました。インパクトスタートアップ部門では、ISA正会員のWOTA株式会社代表取締役CEOの前田瑶介氏が受賞しました。

前田氏は、重要な社会課題の一つである水問題に真正面から向き合い、国内外で大きく活躍したことが高く評価されました。また、令和6年能登半島地震においても、大企業と連携しながら自社プロダクトを当事者(被災者)に届けて復興支援に貢献するなど、水問題の支援を牽引したことも共助を象徴するリーダーとして、選出の決め手になりました。コメントを求められた前田氏は感謝を示すとともに、日本の製造業の可能性を強調し、共助を会場に呼びかけました。
「日本では、先人の方々が製造業の大きなポテンシャルをつくってくださいました。我々は水処理を製造業化することによって、水問題を最速で解決するプロジェクトに取り組んでいますが、それ以外の分野でも、日本の製造業は世界中の物理的な社会課題を解決することができますし、これもひとつの共助資本主義のあり方です。製造業はさまざまな共助がないと成り立たないので、引き続きご支援を賜れればと思います」(前田氏)
ピッチセッションで生まれる大企業との連携の兆し
インパクトスタートアップと大企業との連携のきっかけづくりを目的に行われたピッチセッションでは、ISA正会員の代表者たちが、事業内容や社会課題解決への思いについてプレゼン。それに対し、大企業や行政の代表者がフィードバックメンターとして助言をしました。

登壇企業の一社は、豚肉の安全・安定供給と養豚産業の環境負荷低減を実現する株式会社エコポークです。同社代表取締役の神林隆氏は、世界人口の増加でタンパク質の需要に供給が追いつかなくなる「タンパク質危機」が2027年に発生する可能性があると予測。テクノロジーの力で養豚の生産性を向上させることで課題解決を目指す神林氏は、会場の参加者たちに共創を呼びかけました。
「養豚は肉をつくるだけの産業ではなく、バイオマス資源を活用することで肥料、飼料、燃料までをつくる産業だと捉えれば、皆さんと共助できるスペースが絶対にあると思っています。子どもが肉を食べられなくなるのはまったくウェルビーイングではないので、食のためには循環型が必要だという世界を、皆さまとつくっていきたいと思います」(神林氏)
フィードバックメンターを務めた、マネーフォワード代表取締役社長 グループCEOで経済同友会スタートアップ推進総合委員会委員長を務める辻庸介氏は「マーケットがものすごく大きくて素晴らしい」と神林氏の取り組み絶賛したうえで、経済同友会の会員の力を活用するべきだとアドバイスしました。
「同友会の経営経験者にはセールスなどにものすごく詳しい方がいるので、そういう方にアドバイザリーボードのような感じで入っていただくといいのではないかと思いました。私は農学部出身でこういう分野が大好きなので、ぜひ後でお話しをさせてください」(辻氏)
それに対し神林氏は、「当社はビジネスが得意ではない人間が集まっているので、いろいろな人に入っていただければ」と期待感を示しました。
また、今回も参加者に配布された「コミットメントシート」への記入の時間が設けられました。今後、自社や自団体が取り組んでいきたいこと、本イベントを通じてそれを一緒に取り組みたいと思った企業などが記入できるようになっており、後の交流会などでも活用され、交流を深めました。
おわりに
本イベントでは、これまでの取り組みを振り返るとともに、団体間、企業間でのシナジーをさらに深化させることができました。今後もISAでは、大企業をはじめとする多様なステークホルダーとの協働を通じて、インパクト領域のスタートアップが成長していける環境づくりに取り組んでいきます。
