2030年に向けた、社としてのビジョン。その実現をDXで推し進めたい

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2006年に入社した木野 ゆりかは、デジタルトランスフォーメーション部(以下、DX部)に所属しています。DX部は、田辺三菱製薬の未来を担う、重要なセクションです。

木野 「2030年に向けて、当社は『患者一人ひとりに、最適な医療を届けるヘルスケアカンパニー』というビジョンを掲げています。患者さんにもっと寄り添える会社になれるよう、従来の製薬事業だけにとどまらないサポートを模索しています。私たちDX部はその一助として、デジタルを駆使した新しいサポートの形を日々考えています」

DX部の前身は、新規事業を考えるセクションとして存在していたフューチャーデザイン部です。DX部は、フューチャーデザイン部が未来を創るために様々な活動を実施する中で、デジタルに注力していくために2019年に改称した部署です。

木野 「私は、前身のフューチャーデザイン部のころから在籍しています。DX部という名前に変更されてからは、デジタルを駆使して、幅広い領域に取り組むようになったんです」

田辺三菱製薬は2021年、会社として新たに2つの中期経営計画を策定しています。ひとつは、最適な治療薬を最適なタイミングでお届けするという意味の『プレシジョンメディシン』。もうひとつは、予防から予後まで、患者さんやその周りの家族、ケアに携わる方をサポートするという『アラウンドピルソリューション』です。

DX部では、この2つの中期経営計画の実現を牽引すべく、デジタルを駆使した様々なスキームを考えています。これまで取り組んできたヘルスケアのソリューションとしては、生活習慣改善のためのサポートアプリ『TOMOCO』があります。

木野 「生活習慣を改善して、病気にかかるリスクを少しでも減らすことをサポートできればと、生活習慣改善アプリの開発に取り組んだんです。体重や食事のデータのほか、実際に健康診断で計測した検査の値を入力できる機能などを盛り込んでいます。情報に基づいて、コンシェルジュのキャラクターがアドバイスしてくれるんですよ」

『TOMOCO』は、まだ薬が必要ではない人たち、つまり病気にかかる前の人たちをサポートしたい──そんな思いでデジタルを活用した事例のひとつです。

入社して12年、製薬に従事。病気の父のため、鎮痛剤の開発をめざす

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▲学生時代の学会発表風景

2022年現在DX部でデジタル領域を牽引している木野ですが、入社して10年以上は、製薬の分野に携わっていました。彼女には薬の研究に強い意欲を持って、田辺三菱製薬に入社した経緯があります。

木野 「大学時代に薬の研究をしていて、会社に入っても研究を続けたいと思っていました。大学時代、研究で扱っていたのは中枢神経の薬剤でした。薬の効き方を研究する薬理学の研究室を選んだ背景には、父の存在があります。

私の父は、神経の病気を患っていました。全身に強い痛みが発生し、睡眠もままならず、生活すること自体が困難になるような病気です。苦しむ父を見て私は、父自身、そして家族の大変さを少しでも減らせたらと感じました。それで、自分の手で研究をしたいと思ったのがきっかけです」

長い間創薬研究に携わった木野ですが、入社から12年が経った2018年にキャリアチャレンジ制度(自ら異動を希望することのできる制度)を利用してフューチャーデザイン部に異動しました。その背景にあったのは、デジタル領域への期待でした。

木野 「製薬の世界では、新しいプロジェクトを立ち上げ、開発した薬が実際に患者さんに投与されるまでに、長い年数がかかります。

しかしデジタル領域であれば、薬に比べて少しでも早く新しいプロダクトをユーザーの元に届けられるのではないか?患者さんたちの目の前にある困りごとにいち早く対処できるのではないか?と思い、その観点でデジタルはとても魅力的な分野だと思ったんです」

そして、生活指導アプリ『TOMOCO』をはじめ、デジタルを駆使した新しい業務に取り組むようになった木野。想像どおり、スピード感が創薬研究とは大きく違いました。

木野 「薬作りのプロセスでも、患者さんのニーズを把握することは非常に重要です。しかし、薬は、確実な効果・品質のものが出来上がるまで使っていただいてご意見を頂くことのできないものです。

でもデジタルサービスなら、試しに使ってもらい、ご意見を頂くことができます。最初に提供したものが完璧でなかったとしても、ユーザーからの意見を反映しながら、ブラッシュアップしていくことができるのです。このサイクルを回し続ければ、患者さん、ご家族が望むものにどんどん近づけていけると感じています」

スピード感、ニーズの捉え方……デジタルの世界は薬作りと大きく違う

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▲業務風景(当社東京本社にて)

デジタル領域だからこそ出せるスピード感に、可能性を感じた木野。一方で、デジタルサービスを企画・開発するという新たな挑戦の中、これまでとは異なるスキルが必要だと気づきました。

木野 「医薬品は適用される疾患が販売する際には決まっていて、医師から処方されるのでターゲットが明確です。もちろん、ここまでの道のりが大変なのですが……。これに対して病気ではないユーザーの方に使っていただくデジタルサービスでは、似たようなサービスが既にあったりすると、選んでもらえないということが十分あり得ると考えています。

だから、どこにニーズがあるのか、どんな人が求めているサービスなのか、独りよがりにならずに考えることが大事ですね。これがなかなか難しいのですが(笑)。その部分は、具体的にペルソナを設定しながら考えるようにしています」

ニーズを踏まえ、どのようなサービスを作り上げていきたいのかを明確にイメージする──その中で彼女は、患者さんだけでなく、周囲の人々の暮らしもサポートすることを考えているといいます。

木野 「病気と闘っているのは、患者さんだけじゃありません。もちろん一番闘っているのは患者さんですが、家族やその周りでサポートする多くの人が、一緒に病気と付き合っていかなくてはならないのです。

だからこそ患者さんだけでなく、周囲の負担も軽くできるようなものを作っていきたいです。たとえば、ご家族のサポート、情報を行き届きやすくするシステムなど、医療という言葉にとらわれないで、幅広いことに挑戦できればいいなと思っています」

DXにあたっては、他企業と協業することも多くあります。田辺三菱製薬は、かつてない領域に踏み出しているのです。

木野 「当社は長らく製薬事業をやってきた会社です。そのため、DXにあたってはスペシャリストの知見を得るために、外部企業と連携することも多いんです。どこと連携するべきかを考えるには、自分たちがどんなものをめざしていて、現状で何が足りていないのかを分かっている必要があります。だからこそ、俯瞰して広い視野で業務を見る目を大事にしているんです」

デジタルの力で、世の中の人々が楽しく過ごすためのサポートをしたい

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▲東京本社のオフィス風景

そんな木野がめざすのは、「薬がなくてもよい世界」に少しでも近づくことです。

木野 「薬屋さんが明言するのもなんですが……余分な薬を使わずに済む、ハッピーな世界を作れたらいいなと思っています。たとえば、生活習慣病は減らせる疾病で、生活習慣の改善をすれば罹る人は少しでも少なくなるのではないか?と思っています。

とは言え自分自身の生活習慣を振り返っても、なかなかそのハードルが高いことを実感しているので、なんとかそのハードルを下げるサポートをできればと思います。

多くの人が健康になれば、医療費など国の限りある資源を、高度な医療が必要な人に充てられます。薬を必要とする人が少しでも減れば、本当に必要としている人が救われるのではないかなと思っています。そのためにも、人々の健康意識向上につながるようなソリューションをこれからも作っていきたいです」

薬の研究をしていたころの木野は、いい薬を開発することだけで頭がいっぱいだったといいます。しかし研究を離れ、広い視野で医療の現状や未来を考えるようになったことで、彼女のなかに変化が起こりました。

木野 「個人的には、2030年にはもう、健康になるためのソリューションを、みんながお金を払って使っていることが当たり前になっているのではないかなと思っているんです。なので、健康につながるサービスや薬の効果を高められるソリューションをいろいろ開発して、世の中に提供していけたらいいなと思っています」

デジタルだからこそ、解決できる課題がある──それに気づいた木野は、社内にもDXの重要さを強調していきたいと感じています。

木野 「DXは、デジタルを使ってビジネスモデルを変えることとされています。なので、全く新しいビジネスモデルを作れる可能性があります。私自身としては、今取り組んでいるDXを通じて、一製薬会社に留まらない『健康屋さん』になるという新しいモデルを考えているんですが、これは何もDX部だけで考えることではありません。

社員の皆さんと議論する中で新しいビジネスモデルの種が生まれるかもしれませんし、そのためにもまずはDX部についてわかってもらうことが大切かなと思っています。そのためにもDX部から積極的に情報発信をするだけでなく、これからもより多くの社員の皆さんとのつながりを作っていきたいです。

それから、DXによって働き方も変わってきます。業務効率化もデジタルによるビジネスモデルの変化と捉えると、DXを通じて新しい事を考える時間も作り出すこともできると思うんです。ですので、私自身が効率化につながる良いものを積極的に取り入れて、それを社員に広めていければと思っています。そして社内の少しでも多くの人が、日々の業務の中で新しいことを考える事が無理なくできる時間を作っていきたいですね」

田辺三菱製薬のビジョン実現を牽引するDX部。デジタル技術によって大きく広がっていく可能性を前に、木野は新たな挑戦を続けます。