52 私の左手が白いカーテンの端を掴(つか)むと、一気にレールを走らせた。 眩(まばゆ)い冬の光が部屋の中に広がっていく。 恵の表情(かお)が、一瞬のうちに強張る。 「け 恵・・お前は こういうのが好きなんだろ」 後ろ髪を掴み向きを変え、顔を窓ガラスに擦(こす)り付ける。 視界の中には、緑の中庭 隣の白っぽい病棟の窓ガラスが飛び込んでくる。 「い・・いや・・・・あな・・た」 「え・・遠慮するな・・・ほら 声を出してみろよ・・叫んでみろ・・」 (・・・・・・・・・) 「わ 私は・・へ 変態女・・です って・・・叫んでみろよ」 私自身も羞恥心を振り払うように、がむしゃらに腰を打ちつけた。 腰を打ちつけながら、尻の割れ目を両手でグッと押し広げる。 抜き差しを続けるその上に、董色(さくらいろ)をした小さなもう一つの穴が見える。 「こっ ここも許したのか・・・織田に・・・道尾に・・・は 波多野に・・・」 叫びながら指をその穴に突き刺した。 「いっ いやあ・・あああ・・」 「どうなんだ・・」 「あああ・・そ そこは・・許して・・・ませ・・ん・・」 涙の混じった呻き声が、窓ガラスに向って吐き出される。 私は片方の手で、硬くなってる乳房の先に捻(ひね)りを加える。 「け 恵・・ど どうだ・・」 「ああ・・いい・・・いいんで・・す・・」 「何が・・・何がいいんだ・・」 「ああ・・あなたの・・・あなたの“もの”が・・・ああ いいんで・・す・・」 「・・・あなたのもの? ・・・バ バカヤロウ・・上品な言い方しやがって・・」 「・・・・・・」 「お お前は淫乱女・・・なんだろ・・・それらしく・・言ってみろ・・:」 その声と同時に、腰の打ち込みと指に更なる力を加えた。 「は・・い、 ・・・あ あなたの・・チ ×××が・・いい いいんで・・す・・あああ」 「・・いいのか? いいのか? ・・・お お前の どこが・・どこがいいんだ」 先ほどから私の叫びにも涙が混じっていた。 「あああ・・ア アタシの・・・ああ オ オ××コに・・・よ 慶彦さんの・・・チ チ×ポが・・入って・・いいんで・・・す・・・ああ あなた・・」 恵の声にも涙が混ざっていた。 「クッ!」 私の視界が涙に濡れ、もう何も見えない・・・。 高鳴りを感じながら、ただ 腰を振り続けていた。 恵の横顔が涙の中で微かに見える。 その表情(かお)も、涙でクシャクシャだ。 「ああ・・・あなた・・・う うれしいぃ・・・ア アタシ・・うれしいで・・す・・」 恵の泣き笑いのような、奇妙な声。 「ああ・・ああ・・ア アタシ‥シアワセ・・・で・・す」 私の高鳴りが限界点に近づいていた。 (お 俺×××・・・) その声が上がる前に、恵の断末魔のような声が上がった・・・。 (・・・・・・・・・) (・・・・・・・・・) しばらくそのまま震えていた私達は、ゆっくりベットに崩れ落ちた。 澄んだ白い病室に、2人の息遣いだけが聞えている。 横を向くと、涙でクシャクシャになった顔がある。 やがて恵がこちらを向く。 あなた・・・恵・・・2人の口から同時に声が上がる。 私は胸ポケットから折り畳んであった1枚の紙切れを取り出した。 「・・・道尾のお通夜から二週間ほど経った時、恵は俺に電話をくれた」 「・・・・・・」 「さっき その時の事を・・・俺に『救ってもらいたいと思った』・・と言った」 「・・・・・・・はい」 「・・・この書き置き・・・《~しばらく留守にさせて下さい。捜さないで下さい。心配しないで下さい》 ・・・・」 「・・・・・・・・・」 「恵、これは・・・逆に捜してくれ 救ってくれ・・・と言うメッセージなんだろ?」 「・・・・・はい。 ・・・・・・早く・・救って欲しい・・・と思いまし・・た・・」 私は天井を向いたまま、ゆっくり頷いた。 「わ 私・・・この数日間 夢の中をさ迷っているようでした・・・早く・・早く抜け出さないと・・・と思って・・・」 再び恵の声に涙が混ざっていく。 私は押し殺すように震える恵を抱きしめた。 鼻の奥に付いたのは、遠い昔に嗅いだ事のあるような懐かしい匂いだった。 |