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月明かり










38
 その瞬間 私の腰が抜けるように落ちて行き、天井が揺れて見えた。
 腰に痛みが走る。
 しかし その痛みなど気にする事無く、軽くなった両手で床を噛み、目の前の舞台に飛び乗った。
 男達が振り向くのがスローモーションの様に目に映り、驚く作務衣の男を突き飛ばしていた。
 肩に手を掛けた波多野を振り向きざまに殴り飛ばした。
 崩れ落ちる波多野 その顔を見た時、私の中で何かが弾け飛んだ。
 私は仰向けの波多野に跨りながら殴り続けた・・・後から抱き付いてくる作務衣の男を振り払うように。


 頭の中に “あの時”の あの場面が走馬灯のように駆け巡った。
 そうだった・・・。
 あの時も・・・。
 

 あれは 高校1年生の夏 教室の中だった。
 私は “そいつ”を殴りつけていた。
 相手は私の事を、暴力とは無縁のおとなしい男と思っていたはずだ。
 女の子に振られた友人を馬鹿にした・・・身の程知らず・・・不釣合いだ・・・わきまえろ!このブ男・・・。
 そんな言葉が吐き出され、私の中で何かが切れた。
 気が付いたら そいつに跨(またが)り、殴りつけていた。
 自分に義侠心があったわけではない。
 ただ・・・。
 私より勇気のあった友人をバカにされた事に、我慢できなくなったのだ。


 私はそれが原因で停学になり、そして留年した。
 その次の春、まわりの私を見る眼に違和感を覚えた。
 それは一つ年上の同級生と言うだけではなく、切れたらアブナイ奴・・・そんなレッテルを貼られていたのかも知れない。
 それから孤独と付き合う時間が長くなった。
 人と話す機会も減っていった。
 

 親、親戚が心配してくれた。
 『世間体の事もあるからケンカじゃなくて、病気で留年した事にしよう』 ・・・ だれかの言葉があった。
 何も言えなかった私・・・・あれ以来 そう言う事にしている私・・・。


 高校3年生の時。
 私に優しい目を向けてくれる子がいた。
 普段は活発で元気な子・・・そんな子が時折 優しい目を向けてくれた。
 恵・・・・・。
 恵・・・・・。


 「おい! 止めろ いい加減に・・・・・死んでしまうぞ」
 (・・・・・・・・・・)


 作務衣の男の声に我に返った。
 鼻血を噴出している波多野の顔があった。
 拳が震えていた。
 左手首に手錠の片輪が光って見えた。


 (けい・・・恵は・・・・)
 作務衣の男の手を払い、後を振り返った。


 震えながら・・・。
 何かに縋(すが)り付くような・・・。
 そんな “まともな目”が あった。


 淫靡な雲はどこかに飛んでいた。
 美しかった縄化粧は、ただの惨めな女を縛るヒモだった。


 恵の顔が グニャリと歪んだ。
 そしてその顔が斜め上を向いたかと思うと、身体がビクンと弾け、白目を向いてスローモーションのように崩れていった。
 床の上に・・・舞台の上から・・・縛られたまま・・・“死に体”のように・・・頭から・・・。


 「けーーーーーーーーーー!」


 その後の事はよく思い出せない。
 どこかでサイレンの音が聞えていた。
 白い服を着た男が、私の返り血と左手の壊れた手錠を見て驚いていた。
 ・・・・・そん記憶が残っている。


 「大丈夫ですか?」
 黙ったままの私がいた・・・・と思う。




 白い壁があった。
 その壁に掛けられた薄いテレビの中から笑い声が聞えていた。
 程好い暖房がかかっていた
 拳の痛みが徐々に現実の世界に引き戻してくれる。


 一人の男が、その待合室に入ってきた。


 「今 医者(せんせい)と話してきたよ・・・・奥さんは軽い脳震盪のようだ・・・」
 「・・・・・・・・・そうですか」
 沈んだ私の声だった。


 「それと・・・波多野は・・・・鼻が折れて歯が一本欠けてた・・・・・けど 命には別状問題ないみたいだ・・・」
 「・・・・・・・・・・」


 「自業自得だな・・・」
 沈黙の後の男の声だった。


 「京子ちゃんとも さっき電話で話したよ・・・・・どうも京子と波多野が小細工をしてたみたいだ」
 畏(かしこ)まった男の声・・・。
 男の顔を、シゲシゲと見つめ直した。
 紺色の作務衣を着た男。
 

 私の拳に力が入った。











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