24 この日の夜だった。 忙しい最中も生意気な部下、いや可愛らしい部下に仕事を任せ、事務所を出た私。 たまには良いだろう、妻の具合が悪いのだから。 そんな事を考えながら、マンションに着いたのはそれでも10時過ぎ。 部屋に入った私は、まず洋間に行く。 私が風邪をひいてから、久しく寝室を別にしている私達。 洋間のドアを静かに開けると、スヤスヤ眠る恵の姿が見えてくる。 その寝顔をしばらく見つめ、部屋を後にする。 ガチャリとドアを閉める音が大きく響き、廊下で舌打ちをする。 恵を起こしてしまうじゃないか ・・・ 私はススっと音を立てずにリビングに向かった。 ダイニングテーブルの上には、恵が用意してくれた食事。 今夜は早く寝よう・・・手早く食事と風呂を済ませた私は寝室へと向かう。 寝室に入る前にもう一度、恵が眠る部屋をそっと覗き、お姫様のような寝顔をしばらく眺めて見る。 おやすみ ・・・ 心の中で囁きゆっくりドアを閉める。 ベットに入った私は、仕事の疲れからか、電気を消した瞬間には深い眠りへと落ちていた。 眠りについた私を悪夢が襲ってきた・・・・。 京子がオーナーを務める、あのクラブ。 時計の短い針が10時を指すと、店内の照明がスッと暗くなる。 BGMが止み、ピアノの音が隠微なメロディーを奏で始め、前方の緞帳(どんちょう)がゆっくり上り始める。 舞台を見つめる観客が、妖しいメロディーに一気にトランス状態に陥(おちい)っていく。 客席に座る男・女・ニューハーフ、全ての者の魂が舞台に吸い寄せられる。 緞帳が上がりきると、中央に黒いボンテージのふくよかな女が、妖しい仮面を着けて立っていた。 年の頃は50前、口元に真っ赤な口紅が微笑む。 女の横には2人掛けの黒いソファー。 その黒いソファーの上には対照的な白い肌の女。 黒い目隠しをされた女の両方の手首が、頭の上 手枷(てかせ)で拘束され、そこからロープが天井へと伸びている。 一糸も纏わない女が、Mの字で2つの胸の膨(ふくら)みと細い腰、そしてヘソの下の薄い翳りを客席に晒している。 女が晒されるソファーの横には、腰高ほどの小さなテーブル。 そのテーブルの上には、男性器を形どったグロテスクな物。 バイブレーター・・・。 ボンテージの女が鞭で床を一打ちして、その女を甚振り始める。 白い肌に浅黒い鞭が打ち付けられ、目隠しされた女の口から悲鳴が上がる。 客席の視線が、女に突き刺さる。 やがて女の悲鳴に悦(よろこ)びが混ざると、鞭が置かれその手に黒いバイブレーターが握られた。 女の荒い息遣いをバイブレーターの振動音がかき消し、その音を聞いた女の口から覚悟の声が上がる・・・。 黒い振動が股間に向かい、いきなり “そこ”の入り口を捉える。 女の声が先程以上に高鳴り、あっという間にその黒い振動を飲み込んでいく。 女の口からは歓喜の声に混ざって、涎(よだれ)が流れ出た。 激しく首を振る女の黒い目隠しがずれ、その下から虚(うつろ)な瞳が現れた。 女の逝き顔が客席中に晒される。 恵!・・・・・。 私の胸が、押しつぶされるように苦しくなり、まどろむ意識が少しずつ現実に引き戻されていく。 胸の重みが下半身へと移動すると、薄っすら開いた私の瞳に、人影が映った。 だれ? 私のパンツに細い指が掛かると、スルッとそれが下がり、私の意識が更にはっきりする。 「けい・・・・」 小さな声に、人影がいきなり抱きついてきた。 「け・・・」 開きかかった口が唇で塞がれる。 激しい口付け!・・・まるで貪(むさの)るような。 まさか恵から・・・。 恵の右手が、露(あらわ)になった股間の塊(かたまり)の根元を包む。 陰茎に血が逆流する。 塞(ふさ)がれた口から、 ううっ! と言う声が微かに漏れた。 これは 夢ではない。 荒々しい唇が首筋から胸元を通り、下半身の膨らみへと向かう。 私の知らなかった恵の愛撫・・・いや これは 愛撫なんかじゃない。 いきり勃(た)った私の塊が、ヌルっとした感触に包み込まれる。 そしてそこから溢れ出る唾液が混ざり合う隠微な音。 私の口から情けない音が漏れ、一気に高鳴りが近づいてくる。 それを察した恵が口を離し、右手で塊の根元を再び引き千切らんばかりに握り締める。 そして 私の様子を伺いながら立ち上がる恵。 いや まどろむ目の前の女は本当に恵なのか? 意識の片隅にそんな声が聞こえてくる。 衣服を素早く脱ぎ去った女が、私の脈打つそれをもう一度握り締める。 よし! ・・・ まるでその硬さを確認したかのように、女が握ったそれを自分の膣にあてがった。 私の先が滑りを感じたその瞬間 一気に飲み込まれていく。 そして激しい揺れが襲う。 それはまるで獣(けだもの)だった。 まさに男を喰らう・・・。 けい・・・・けい・・・けい・・・・、 小さく吐き出される呻き声。 ウンチングスタイルで腰を振り続ける女。 男を喰らい続ける女・・・恵。 私のソレが限界点に近づいた。 |