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月明かり










12
 そこが旅先だからだろうか、いつものありふれた時間が神秘の世界の入り口を開けてくれている。
 アルコールの匂いが混ざった穂のかな香りを嗅ぐように、私の鼻先と唇が首筋から大きな膨らみの谷間へと沈み込んでいく。


 ギュッと、瞑(つむ)った瞼(まぶた)の端がピクピクと震えている。
 硬くなった膨らみの先端に舌を這わせながら、私の右手が要塞をこじ開けるように腿(もも)の隙間へと侵入を繰り返そうとする。
 私の唇が胸の突起を転がすと、溜息のような声が上がり、それと同時に太腿が右手の侵入をやっと許してくれる。


 「○○○○がもう ビショビショだよ。。。。」
 「あああ・・い いや・・・はずかし・・い・・」


 荒々しい舌が胸の谷間からへそを通り、翳りの部分へと向かう。
 白魚のような腿の内側に頬ずりしながら、甘い匂いの出所を捜すように鼻先が更に奥へと進もうとする。


 「で・・でんき・・・消して・・・・くださ・・い・・・」
 「・・たまには 恵の “ここ” をじっくり見せておくれ」


 「ああん・・いやっ・・・・あなた・・」
 唇を更に強く噛み締め、表情とは別に開かれていく両足。
 私は翳りの奥の秘密の蜜を味わいに行く。
 少女のような恥じらいとは裏腹な、熟した女の重なりを起用に舌で剥(は)がし、顔を出した小指の爪ほどの大きさになった “それ” にむしゃぶりつく。


 「あああ・・・・ああああ・・・・」
 愛しい妻の口からは、普段より一オクターブ高い声が上がる。


 恵とのセックス・・・・。
 初めて恵を抱いた夜。
 再会して1年近くになる頃だった。
 横浜の海の見える公園。
 小波(さざなみ)が月明かりに照らされていた。


 大事にしたい・・・。
 君を・・・恵を・・・。
 そんな言葉をかけながら小さな肩を抱いた。
 私は冷たくなっている手を力強く握り、一軒のホテルへと向かった。


 『ご主人・・・・亡くなったご主人の事を・・・気にしてるのかい?』
 部屋の中を硬い表情のままの恵に掛けた言葉。


 『・・・・いえ・・・・・あの人の事は・・・』
 『・・・・・・・・・・』


 『・・・私は慶彦さんの・・ものになりた・・・』
 その言葉が終わらぬうちに、目の前の細身の身体を抱きしめ口を塞いでいた。


 私は小鳥のように震える恵の服を優しく脱がしていった・・羞恥の殻を少しずつ剥がしていくように。
 服の下からは恋焦がれた女神の裸身が現れた。
 折れそうな細身の身体とは対照的な大きな胸、子供を産んでない下腹はそれでも充分な熟女の色香を醸し出していた。
 そして腰の続きの大きな臀部が、少女のような笑顔と半比例するように大人の女のセックスをアピールしていた。


 私はその時、初めて “嫉妬” した。
 道尾圭介に・・・。
 そしてその “ジェラシー” は瞼を震わせ、唇を噛み締め、鼻の穴を膨らませ、甘い吐息の官能の声を発する女の表情に、更に激しくなっていった。


 そんな表情(かお)を見せてきたのか・・・道尾に。
 私の男根が、私さえ知らなかった硬さになっていた。
 やがて 私達は一つになった・・・・。


 あれからも道尾の亡霊が現れる事がある。
 しかし・・・。
 しかし 恵の敏感すぎる身体が、私の愛撫で、性技で、より一層の悦びに震える時、私はやっと安堵する事が出来る。


 「・・あああ あなた・・い・・逝き・・ます」
 私の下で細身の身体が反り返り、それに呼吸を合わせるように誇張された男性自身が高鳴った。
 

 窓の外、山の谷間から満天の星と月だけが2人を見つめている。
 耳に川の流れる微かな音が聞こえ始めると、ようやく2人の息遣いが治まって来る。


 激しく揺れていた腰、それに併せて弾んでいた胸の膨らみ、そして何度もワナ泣いていた唇がようやく落ち着きを取り戻していた。
 私の横にいる一糸にも身に纏わない綺麗な身体を、眺めてみる。
 しばらくすると、気配に感じた瞳がスウっと開く。


 「やんっ・・・・あなた・・恥かしい・・です・・」
 その声に私は、何も言わず頷く。


 夜がゆっくり更けていった。










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