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月明かり










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 紅葉を見に行こうか?。。。。その一言で始まった小旅行。
 わずか1泊2日の温泉地への旅。


 2年前 『新婚旅行なんて・・・』
 恵は再婚・・・しかも40を過ぎてから。
 ひっそりと式を挙げ、極わずかな友人と身内だけを招いての、披露宴に代わる小さなパーティー。
 そして2泊3日の新婚旅行?
 東北のとある温泉地に行ったのは、丁度 今頃の季節だった。


 私達は3~4ヶ月に一度、フラっと旅行に行く事がある。
 華やかなハネムーンに行けなかった想いを埋めるように。


 北関東の某観光地を巡り、旬の食を味わい、評判の温泉を堪能する。
 そんなありふれた楽しみ方も、私達にとっては素晴しい時間だ。
 決して思春期の頃には戻れないが、あの頃の忘れ物に手を伸ばすように私は楽しんだ。
 そして恵もそれに応えてくれる。


 宿の自慢の露天風呂につかる。
 流石に混浴とはいかないが、リクエストしていた家族風呂の一つ。
 

 満天の星空の元、2人を取り巻く紅葉が赤や黄色に色ずいている。
 お湯が流れ落ちる音の合間に耳を澄ますと、山を下る川の音が心地よく聞える。
 

 「恵。。ちょっとそこに立ってくれないか」
 「えっ ここにですか」


 「うん」
 私の声に恵の火照った顔が、一段と赤くなっていく気がする。


 「ほらっ」
 諭(さと)すような小さな声に、観念したように湯船から立ち上がる恵。


 「タオルはいらないよ。。。。はずして」
 まるで少女の恥じらいを見せ、その衣を脱ぎ去るように白い布を払う。


 「手は後だよ」
 口をキュッと噛み、頬(ほお)を膨らませる。
 一旦上がりかかった視線が、私の目を見て又 沈む。


 「顔を上げて」
 ようやく観念してくれた女神が、その生まれたままの姿を披露してくれる。
 鶏の濡れ羽色の髪、赤身を帯びた本来の白い肌、細い首筋から優しく流れる肩、そして大きな胸の膨らみ。
 細い腰から大きく膨れ上がる曲線、贅肉のない綺麗な下腹、そしてその下の淡い翳(かげ)り。


 「あなた・・恥かしい」
 「んっ もう少し。。」
 ススっと流れ落ちる湯の雫(しずく)が、満天の星と月明かりに照らされ宝石のような輝きを放っている。


 「寒いかい?」
 「・・・はい」


 私は腰を上げ、恵の下顎(したあご)に手をかける。
 私の火照った顔を見上げながら、恵がゆっくり瞳を閉じる。
 私達はゆっくり口付けした。


 

 部屋に戻った私達・・・・。
 備え付けのミニバーから一本の小瓶を抜く。


 『~もう一回乾杯しようぜ “偶然の神様”に』
 いつかの塩田の言葉を思い出し、2人でグラスを合わせる。


 私がこうして妻をもち、その女性と酒を飲むなんて。
 しかもそれが、初恋の女(ひと)だなんて。
 まさに “偶然の神様”の仕業か?
 

 酔いが回り始めた私の手が、恵の背中に向う。
 首筋まで赤くなった恵が、フッと頭を下げる。
 その下顎を優しく持ち上げる。


 「さあ 露天風呂の続きだよ」
 恵を抱きしめ寝床へと導いていく。


 浴衣を脱がしながら、唇は首筋から胸元へと向う。
 サラっと帯が落ちると、恵の瞳が一生懸命色っぽくなる。


 「電気を消してくださ・・・」
 その言葉が言い終わる前に、私の唇がその口を塞いだ。










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