寝取られの森    男の体験談    女の体験談    隠微ストーリー    寝取り、寝取られ掲示板    画像掲示板    調教記    小説、ご意見投稿フォーム

月明かり










9
 私と塩田は黒い男に見送られ店を出る。
 階段を上り始めると、再び光が瞬いた。
 片側の壁から5枚の絵が浮かび上がる。
 それを又 1枚ずつ見ながら階段を昇って行く。


 「山本、どうする?」


 『あの絵の事、聞きたいなら波多野君の連絡先を教えるわよ』
 帰り際に言った京子の言葉が頭に浮かぶ。


 「しかし 波多野君があの絵を、描いたんやろか?」
 私達はタクシーを拾う為、大通りへの道を歩いていた。

 
 「その波多野っていう人の事は考えとくよ」
 私の静かな声に塩田が、顔色を覗き込んでくる。
 「山本・・心配性のお前には、ちょっときつかったか? ・・・俺は単純にお前を驚かせてやろうと思っただけなんやけど」


 「・・ふふ 気にするな、その単純さがお前の良いところだよ」
 「・・そうか・・・そう言ってもらえると、俺も助かるわ・・」


 私の上げた右手にタクシーが近づいて来た。




 都心の夜空にコウコウと満月が輝いている。
 タクシーに揺られながらメールを打つ。
 《帰りは1時過ぎになる。心配しないで先に寝てくれ。  慶彦》


 「恵ちゃんにか?」
 「ああ・・」


 「へへ 愛妻家やな」
 そろそろ私達の声にも眠気が混ざっている。


 「でも塩田、京子さんはなぜ “あんな店” を始めたんだろうな」
 「ん? ・・そうだな・・」


 前を向いていた塩田が、目を瞑(つむ)り、思い出すように喋り出す。
 「俺が今の会社に入って2年位たった頃、道尾先生の担当になったんや。当時の道尾(せんせい)は “売れない作家” やった。・・でも俺は何とかして売れっ子にしようと、よく通ったわ」
 「・・・・・・・・」


 「その頃は既に、京子さんと所帯を構えてて・・・・京子さんは、よく嘆いてた・・『何で 家(うち)の旦那は売れないんだろう』 って・・」
 「道尾はその頃、どんな本を書いてたんだ?」


 「うん、前にも言ったと思うけど “恋愛物”やよ・・純文学っぽい・・・・・でも 全然売れへんかったわ」
 「そうか・・」


 「売れる様になったのは、それから数年後や・・会社はもちろん俺も喜んだけど、その頃から夫婦仲は可笑しかったみたいや」
 「なぜ?」


 「ヒット作が出て金が入るようになってから、色々変わっていったみたいや・・・・ある日 道尾の所に行ったら京子さんが居なくて・・・・道尾に聞いたら 『出て行った』・・その一言だけや」
 「・・・・・・・・」


 「正式に籍を抜いたのはいつか分からんけど、ずっと別居状態やったな・・・何度か京子さんから電話をもらったけど、俺も仕事が忙しくて真剣に話を聞いてあげられへんかったわ」
 「・・・・・・・・」


 「でも さっき、 『慰謝料もすんなり払ってくれた』 って初めて聞いて・・・ああ そうだったのか って言う感じや」




 道尾が死に、恵(けい)と頻繁(ひんぱん)に会うようになった頃を思い出す。
 恵は前夫との事を私に、包み隠さず話してくれた。
 2人の付き合いは、実父の親戚筋の紹介だと聞いている。
 知る人ぞ知る有名作家・・そんなふれこみだったらしい。
 そして恵が30 道尾が42の時に籍をいれた・・・と聞いた。
 結婚してから、しばらくは金銭的な不自由は何一つなかったと言った。


 しかし・・・・。
 しかし 道尾が亡くなる前の数年間・・・・。
 あまり語りたがらない部分・・・・・『私は病んでいた』


 いつのまにか隣の塩田の鼾(いびき)が聞えていた。




 途中 塩田のアパートにより奴を降ろし、そこから自宅に向かった為、家に着いたのは深夜の2時近くだった。
 月明かりの下 マンションのエントランスを潜り、エレベーターに乗り込む。
 音を控えながらドアを開け、部屋へ入る。
 寝室のベットには恵がいた。


 角部屋にして良かった。。。。そんな事を思い出しながら窓からの月明かりに照らされる妻の寝姿を眺める。
 聖なる者の寝むりを邪魔してはいけない。。。私はソロリと妻の横に滑り込む。
 瞼(まぶた)を閉じた私は、一瞬のうちに深い眠りへと落ちて行った。










- since2007/05/01 All rights reserved,Copyright kei -

動画 アダルト動画 ライブチャット