工程管理だけでなく、働き方改革にも従事。女性係長という立場からできることを
山口県の西部、山陽小野田市に位置する田辺三菱製薬工場株式会社小野田工場において、注射剤の製造から検査、包装まで一連の作業を担う製剤第二部第二課。中村は、2021年10月からその工程全般を管理する係長を務めています。
中村 「マネジメントしているメンバーは14名。メインの仕事が作業から管理に変わり、新米の係長として日々勉強させてもらいながら、業務にあたっています」
係長になったことがきっかけで、工場内の働き方改革にも携わり、仕事や職場との向き合い方について考えるようになったといいます。
中村 「具体的な取り組みについてはまだ模索中ですが、前任の方のスタンスも引き継ぎながら、より働きやすい職場にしていきたいと思っています。女性の係長として、職場の雰囲気など、細かいところも含めて、いろいろな視点から改善していけるところを自分なりに考えていきたいですね」
一方、小学生の子どもを持つ母親でもある中村。働き方改革の一環でテレワークを体験し、そのメリットを大きく感じました。
中村 「いつも帰宅が遅くなってしまいがちなんですが、家で仕事をしていると、子どもの帰りを迎えてあげることができます。子どもたちがすごく喜んでくれますし、私も仕事をしながら、『もうそろそろ帰ってくるころかな』と子どもの帰りを楽しみにしながら待つ喜びを感じています」
ただ、製造の現場に関わる以上、毎日テレワークをするわけにもいかないのが現実。次のように続けます。
中村 「一斉にテレワークを導入することはできません。でも、ツールなどを使って業務の効率化を図りながら、部署内はもちろん、他部署とのコミュニケーションもしっかり取って気持ちよく働ける職場を作ることは可能です。それぞれのライフスタイルや目標設定に合わせて、働きがいを高めていってもらいたいと思っています」
ベテランから若手への技術継承が課題。若手と同じ目線に立った成長機会の創出を
職場において、中村が直近で課題だと感じているのが、若手への技術継承です。
中村 「注射剤の製造現場は、菌による汚染などを防ぐため、厳しい環境管理が求められる上に、製造設備も多種多様です。ところが、このところ管理や設備に詳しいベテラン勢が続々と定年退職を迎え、20〜30代の若手が中心メンバーとなる中、経験値の不足が課題となっています。
知識として教えてもらうことはできても、実際に経験してはじめて理解できることも多く、そこまでの技術継承がやりきれていないのが現状です。そのため、なんらかのトラブルが起きたときなど、原因究明をしようとして過去の記録を調べたり、メーカーに問い合わせたりする必要が生じ、かなりの時間がかかってしまっています」
そうした状況を打開するために、ノウハウを継承するさまざまな手段を講じていきたいという中村。
中村 「もちろんツールの導入も必要だと考えていますが、それ以外にも、たとえば毎日すべての業務時間を作業に費やすのではなく、自己啓発や勉強会に充てる時間を捻出するなど、新しい知識を取り入れやすい環境作りをしていくことも大切だと考えています」
小野田工場では、2023年に治験薬の製造ラインが新しく立ち上がる予定です。工場内で製造される治験薬が営業品に移行することになれば、さらに技術の継承や新しい知識の吸収が必要になります。
中村 「新しく発足した治験薬のワーキンググループに、部署内からも数人の若手が参加し、勉強を始めています。若手メンバーには頑張ってもらわなければなりませんが、彼らが次の時代を生き抜いていくためにも、そうやってできるだけ成長機会を提供してあげたいと考えています」
一方、近年の若手世代には、安定志向を持つ人が多いと感じることがあるという中村。メンバーに寄り添いながら、成長をサポートしていきたいといいます。
中村 「モチベーションを高めてもらうために、普段から声かけするようにしたり、積極的にフィードバックしたり。また、少しでも成長したなと思うことがあれば、きちんとそのことを伝えてあげるように心がけています。そうすることでモチベーションがアップしますし、次に進もうという気持ちが芽生えると思うんです。若手の世代には、毎日の作業をこなすばかりでなく、新しい仕事や課題にどんどん取り組んでいってほしいですね。
ひとつできれば、さらにもうひとつ上の課題を任せる。間違いを指摘するときも、上からではなく、フラットに目線を合わせながら丁寧に説明をする。そんな風に並走していければと思っています」
他部署とのスムーズな連携を目指して。鍵となるのは、密なコミュニケーション
これまで以上に働きやすい職場作りを実現し、生産性を高めていくためには、他部署とのスムーズな連携が欠かせないと考えている中村。
中村 「計画を立てる段階では生産管理部門、何かを検討する際には技術部門、品質保証に関しては品質保証部門といった具合に、製造部門では、常に他の部門と連携しながらプロジェクトを推進していきます。ただ、お互いのルールやスタンスがいまひとつ理解できていなかったり、情報の伝達が漏れてしまったり。部署間ですれ違いが生じることがある点が課題だと感じています」
立場が異なる以上、お互いを完全に理解するのはなかなか難しいこと。できるだけ密にコミュニケーションを取ることが、解決につながると中村はいいます。
中村 「コミュニケーションを重ねることでそれぞれの部門への業務理解を深め、互いに歩み寄りながら、双方が十分に納得できるかたちで着地点を探っていくことが大切だと思っています」
その上で、情報伝達を円滑にするためのツールの活用にも可能性を感じている、という中村。
中村 「良さそうなツールがあればどんどん導入・吸収していきたいと考えています。製造部門に適したかたちでリメイクし、効率化に役立てられれば良いですね。
ただ、ツールを使って効率的に情報が発信できるようになったとしても、相手にきちんと届かなければ意味がありません。やはり鍵になるのは、コミュニケーション。時間をかけて理解を深めていくことが何より大事だと思っています」
平日は4時半に起床。「いいお母さんでありたい」という想いが、原動力に
子育てと仕事を両立しながらも、新たなチャレンジには積極的でありたいと話す中村。健康的で充実した生活を送るために、平日は4時半に起床し、ルーティンをこなしているといいます。
中村 「帰宅時間が遅いことが多いので、帰ったらすぐに食べられるよう、平日の朝や休日に食事の下準備をするようにしているんです。そうすることで、宿題を見てあげるなど、平日の限られた時間を子どもたちとできるだけ共有するようにしています。
家族と一緒の時間も大好きですが、夫や子どもが起きてくるまでは、ひとりの時間も大切にしているんです。そんな静かな空間が、忙しい日々に癒しをもたらしてくれると思っていて。“生産マイスター検定”を取得したときも、試験前の1週間、朝の時間を使って勉強していました。
私が朝活するのは、たまたま早起きが得意というのが理由で、『誰もがそうあるべき』とは思っていません。特別なことをする必要はなく、それぞれ自分に合った方法で、生活を充実させていければいいんだと思います」
そんな中村にとって、原動力となっているのは、やはり子どもの存在です。
中村 「子どもにとっていい母親でありたいというのが、私のモチベーションになっています。子どもに『お母さんみたいになりたい』『お母さん大好き』といってもらえることが何よりの励みですね。生産マイスター検定の勉強も、家族に『合格したよ』というひと言がいいたくて頑張れたと思っています」
2022年7月現在の目標は、他部署から信頼して仕事を任せてもらえるような部署にしていくこと。
中村 「今後、新しい品目や治験薬、受託の製造といった仕事がどんどん増えていくと思います。周囲の力も借りながら、どんなことにも即座に対応できる力をつけ、『この部署であれば任せられる』というイメージを醸成していきたいですね」
「そのためにも、若手の育成に注力し、部署全体の能力の底上げに取り組んでいきたい」と意気込む中村。“新米係長”の挑戦は、まだ始まったばかりです。