人と組織のつながりをつくり、広げ、そのためのベースを整えるためのプロジェクトを推進

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▲各プロジェクトチームのリーダー(左から山田、大塚、今古川)

三菱ケミカルグループでは2022年の4月に働き方改革グループを発足しました。組織が刷新されたことで課題となっていたのが社員のエンゲージメントの向上。社員一人ひとりが会社に愛着を感じ、やりがいを持って仕事に取り組んでいくための素地を築く目的で立ち上げられたのが、働き方改革プロジェクト“プロジェクト Forging the work style”でした。

働き方改革グループでは社内で実施したアンケートをもとに、“テーマ1:One Companyでの新たな社風をつくりあげたい(縦割り文化と仕事のサイロ化の解消)”と“テーマ2:会社が好きな人を増やしたい(帰属意識を高めたい)”というふたつのテーマを抽出。チームA、チームB、チームCでは、このうちのテーマ1に取り組んできました。

今古川 「One Companyとなったものの、依然として業務は縦割りのままで、仕事がサイロ化している課題がありました。真のOne Companyとなるためには、組織の枠を超えたつながりのもとでイノベーションを起こし、社会貢献できる会社にならなくてはいけません。そのため、プロジェクトでは第1世代、第2世代、第3世代と継続的に活動していくことが計画されていて、われわれは第1世代として基盤構築の検討を進めています。

私がリーダーを務めるチームAのミッションは、“人と組織のつながりをつくる”です。当初はTeamsなどインフラ整備を切り口にするつもりでしたが、人と組織のつながりをつくる上でネックになっているものについて解析を重ねる中で、社員のマインドにこそ最大の課題があるのではという発見がありました。人と組織がつながるときに生じる最大のストレス要因として、“つながることが評価されないこと”と“そもそもつながることの価値を理解できていないこと”、このふたつに的を絞り検討を進めてきました」

山田 「コロナ禍でテレワークが当たり前になり、何気ない雑談を交わす機会が減少しました。われわれチームBでは、“人と組織のつながりを広げる”ことをミッションとしており、最終的な目的として、社内のさまざまなところで質の高いコミュニケーションが盛んに行われ、それがイノベーションにつながっていくこと。イノベーションを生み出す土台となるコミュニケーションが、テレワーク環境下でもコロナ禍以前よりも活発に行われることを2年後のゴールに据え、雑談の機会をつくることをこの半年間の目的としてきました。

まず実施したのが、自ら手を挙げて集まった約70名の有志メンバーを対象としたアンケートです。『交流したいと思いますか?』と質問したところ、95%ほどの人から『持ちたい』という回答を得ました。しかしそれらを分析したところ、『つながることにメリットを感じない』『周りに理解されない』といった内面的な部分が阻害要因になっていることがわかりました。

この課題に対して、チームBではソフトとハードの両面から取り組んでいます。ハード面として、交流会などの雑談するためのプラットフォームづくりを実施してきました。われわれが重要視しているのは、出会いの場を提供すること。『初めまして』だけで終わってしまうのではなく、2回、3回と交流を重ねることがつながりを生み出す上で大事なことだと考えています。いろいろな人が何度も顔を合わせることで心理的安全性を高め、それが起点となりまた新しい交流が生まれていくきっかけになればと考え、テーマを設定して1カ月で10回程度の“ワイガヤ”を実施しています」

大塚 「チームAがつながりをつくり、チームBがそれを広げて、そのためのベースを整えるのが、私がリーダーを務めるチームCの役割です。グループ内の組織ごとに多様な企業文化がある中、互いを理解し合うためのつながりをどう創造していくかを議論してきました。

まずは、現状把握として、約100名に旧事業会社4社それぞれの企業についてイメージを確認したところ、40%が『わからない』と回答。現状、他社への興味が薄く、One Company, One Teamにはまだ遠い状況が判明しました。まずはここから変えていかなければ、ということで、つながることでメリットを感じてもらえるような施策を検討し試行しているところです。

さらに、それと並行して、チームCでは、人々がつながるプロジェクトを測るため、共通利用が可能な評価指標の作成を検討しています。プロジェクトを効率的かつ効果の最大化に向けて、人と組織がつながるためのベースを整えることがわれわれのミッションなので、ほかのチームと連携しながら進めていきたいと考えています」

プロジェクトではチーム単位での活動が原則ですが、各チームの施策の内容には共通する部分も少なくありません。リーダー交流会を定期的に実施したり、働き方改革グループのメンバーと連携したりして情報共有しながら進めています。

全員がそれぞれ想いを持って参加。部門を超えた前向きなメンバーが生み出すシナジー

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▲チームAリーダーの今古川 博恵

プロジェクトメンバーは挙手制で、普段の業務をこなしながらプロジェクトを進めています。自ら手を挙げ参加した背景には、それぞれに強い想いがありました。

今古川 「私は長く製造に従事してきて、入社7年目に初めて部署異動を経験しました。そこで新しい部署のメンバーと一緒に仕事をしたとき、互いの前提が異なるため、こちらの常識が通用しなかったり、逆に向こうの当たり前が理解できなかったりした経験がありました。けれどもそれらを共有しながら違いを乗り越えていったところ、当初想定していたものとはまったく違うアウトプットが生まれたんです。今までに知っているひとつの部署内で完結したままでは、新しいイノベーションは生まれないと肌で感じることができました。

働き方改革プロジェクトへの参加募集があったのは、ちょうどそのタイミング。製造の仕事をしていると、部署の外とつながる機会があまりありません。この会社が新たなイノベーションを生み出し、さらに成長していくきっかけとなるプロジェクトだと感じて参画することを決めました。

2020年ごろに本社のウィメンズカウンシルプロジェクトに参加し、社員が発言することで組織が変わっていくことを実感できていたのも要因のひとつですね。以前は、会社から言われたことを愚直にやるべき、との暗黙の認識のようなものがありましたが、自分が行動することで会社は動くのだと身をもって感じていたことも背中を押しました」

山田 「私は2023年2月に今の部署に異動する前にインダストリーソリューション部という部署にいました。海外のマーケティング部隊と連携しながらニーズを掘り起こし、当社の商材とのマッチングや研究部隊を後押しする部署です。

当社では製品の売上の半数ほどが海外市場。そんな中、コロナ禍となり、海外のメンバーと気軽なコミュニケーションが取りづらくなり、彼ら、彼女らのアイデアや考えを取り込めなくなっていることにもどかしさを覚えていました。海外とうまくつながるための糸口もつかめるのではないかと考え、このプロジェクトに挙手しました」

大塚 「私はこれまでに何度かの会社統合を経験してきました。その都度さまざまな方針は出されるものの、総務や人事といった立場から見ていて、なかなか社内に浸透していないという想いがありました。

過去の制度や文化の中にも大切なもの、なくす必要がないものがあります。むやみに過去を否定することなく未来に進んでいく方法を考えなくてはならないと個人的には考えています。未来に向けて前進をすることと並行し、それぞれの違いを認め合いながら、働いている仲間の成果や成長を実感できる、より良い会社にしていきたいという気持ちでこのプロジェクトに参画しました」

A〜Cの各チームは5人構成。それぞれポジティブなメンバーが集まりました。

大塚 「各チームにはいろいろな部署からメンバーが集まっていますが、全員が自ら手を挙げた人ばかり。チームCには業務の交わりはありませんが、前向きなメンバーで議論するとそれぞれの独自なすばらしいアイデアが湧いてきて、ものすごく仕事がやりやすかったですね」

山田 「チームBも同じで、本当にいろいろなアイデアが出てきました。否定的な発言が出ることももちろんあるのですが、建設的な考え方ができるメンバーが集まっているから、それはそれで視野が開けるきっかけになります。やりにくさを感じたことはありませんでした」

今古川 「私もみなさんと同じ意見です。会議中に誰も発言しないようなことが一切なく、思う存分に意見を言ってもらえているので非常に助かっています。また、自分ひとり、もしくは同じ部署の人同士では絶対に思いつかなかったような発言が活発に交わされているのがとても良いですね」

三菱ケミカルグループが掲げるスローガン“One Company, One Team”。これを縮図化したような構成にしたいという想いから、各チームには多様性を軸としてさまざまなバックグラウンドを持つメンバーが集められ、部門を横断するチームシナジーが生まれつつあると言います。

今古川 「私のような製造だけでなく、営業や研究開発、人事など、チームにはそれぞれのエキスパートがいるので、『そういったときに私の部署ではこうしています』『僕の会社だと、こういう組織文化がありますよ』という意見が出てくるんです。製造現場にいてはわからない、幅広い知見に助けられています。

以前読んだ書籍の中で、多種多様な文化・風習を持つ方々を含めたチームの方が、『より正解に近い答え』を導き出すという内容を読んだことがあります。まさにそういった現象が、今まさに起きていると感じています」

プロジェクトへの参加を経て得た収穫。学びと気づきを持ち場に還元

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▲チームBリーダーの山田 耕平

メンバー全員がフラットな立場でプロジェクトを進められるよう意識してきたという山田。2023年3月をもって第1世代のプロジェクトはひとまず終了となりますが、プロジェクトへの参加を経て、メンバー全員に多くの学びや気づきがあったと言います。

山田 「全員が横並びでゴールに向かっていくかたちにしたくて、週に2回実施している会議ではファシリテーターもアジェンダづくりも持ち回り制にしています。そのおかげで、チームメンバー全員がファシリテーターやリーダー的な動きを経験することができたと考えています。

このプロジェクトに入ってとても良かったのが、ファシリテーションのスキルを身につけることができたこと。参加した全員が発言して満足できる会議の進め方について学べたおかげで、さまざまなWeb会議にも以前より気楽に参加できるようになりました」

山田の意見に賛同する今古川と大塚。それぞれ次のように続けます。

今古川 「今回、講習でプロジェクト思考やファシリテーションなどについて学べたことで、とても活発なチーム体系ができあがっていると思います。チームづくりについて書籍などで勉強しても、具体的にイメージしきれないところも多かったのですが、チームのあるべき姿について腹落ちしながらチームビルディングし、メンバー自らコントロールしながら活性化していくことができました。ここで経験・習得したことは、本業である製造の現場にも還元できると考えています」

大塚 「私は、身につけたことをしっかり実践することの大切さを学びました。勉強や研修が意味を持つのは、実際に学んだことを行動に移すことができてこそ。私は研修を企画する機会もあるので、得たものをどう使うか、どう使えるかを身をもって感じることができたのは大きな収穫でした」

佳境を迎えたプロジェクト第1世代。いいかたちで次の世代にバトンを

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▲チームCリーダーの大塚 靖丈

2023年3月に実施される成果報告会に向け、リーダーとしてラストスパートをかけていきたいと話す今古川。働き方プロジェクトの将来をこう展望します。

今古川 「三菱ケミカルグループには、まだまだ成長できるポテンシャルがあると思っています。組織としての可能性を発揮するための組織体制づくりに寄与していけるといいですね。ものづくり産業の構造を変えていく足がかりとするためにも、まずは全員が納得感を持てるかたちで今のプロジェクトをやり遂げたいと考えています」

一方、会社の未来のために、イノベーションを生み出し続けなければならないと強調する山田。そのためには、社内のコミュニケーションの活性化をますます図っていく必要があると意気込みます。

山田 「三菱ケミカルグループはとても大きな組織ですが、部署ごとに独自の路線を取っているところがあって、会社のスケールメリットを発揮しきれていません。事業会社それぞれの知見を活かした新製品・サービスの開発ができていないのはとてももったいないことだと思っています。

互いの文化を理解し合い、“One Company, One Team”として、目的に向かっていく上で鍵となるのが、コミュニケーションです。三菱ケミカルグループ内により風通しのいい環境づくりができれば、さらに企業として成長することができるのではないでしょうか」

働き方を改革し、各社員のモチベーションを高めていくためには、プロジェクトを今後も続けていくことが重要だという大塚。第1世代を担う者として、めざす目標は明確です。

大塚 「どのチームも複数の世代にわたる長期的な計画を策定しています。大事なのは、このプロジェクトをしっかりと次につなげていくこと。会社の利益だけでなく、社会に貢献していくためにも、次の世代にいいかたちでバトンを渡していきたいですね」