プロジェクトに参加したことが転機に。組織を超えたコミュニケーションで得た手ごたえ
岡本が籍を置くのは、営業推進統括本部 中四国支店 愛媛営業所。MRとして県内の医療機関を訪問し、ドクターや薬剤師に向けて、自社の医薬品に関する情報の提供・収集・伝達活動などを行っています。
そんな岡本が社内コミュニケーションを見直すようになったきっかけになったのが、三菱ケミカルグループ株式会社(以下、MCG)の働き方改革グループが進める「プロジェクト Forging the work style」の活動に参加したこと。その背景にあった想いをこう振り返ります。
「同じMCGグループの一員とはいえ、三菱ケミカル株式会社の化学と、田辺三菱製薬株式会社の製薬は、似ているようでまったく違う業界。そんな異質な会社が1つの組織になったことで、実際にどんな人たちがいてどんな仕事をしているのか知りたいと思っていたんです。
また、違う業界の人と接する中で得られる新しい知識が、普段の仕事の中で活かせるのではないかという考えもありました」
グループ会社の枠を超えて社員同士の交流・つながりをつくろうという企画である「ワイガヤ」が催され、そこに参加したことがプロジェクトに応募するきっかけになったと岡本は言います。
「年齢や性別はもちろん、所属する組織も担当する仕事もまったく異なる人たちと、とくに課題を設けずに、ただ会話・交流するというものです。互いの仕事について知る中で、おのずと新しい考え方を吸収できるとても有意義な取り組みでした。
最初は専門用語の意味がわからず戸惑ったこともありましたが、一つひとつ解決することで距離が縮まり、意思の疎通が図れた実感があって。それまで組織の枠を超えたコミュニケーションに高いハードルを感じていましたが、実際に参加してみてそれが決して難しいことではないとわかりましたし、まずはそうやって会話してみることの大切さを肌で感じることができました」
社内の縦のコミュニケーションの可能性を検討。プロジェクトに参加して見えたもの
「プロジェクト Forging the work style」では、社内で実施したアンケートから課題を拾い上げ、そこから「One Companyでの新たな社風をつくりあげたい」「会社が好きな人を増やしたい」という2つのテーマを抽出。5人ごとに5つのチームに分かれ、メンバーらは半年間にわたってそれぞれの課題に取り組みました。
「チームには、研究職の方、製造現場の方、秘書をされている方など、さまざまな会社のさまざまな部署、そしてさまざまな地域で働くメンバーが集められました。
私たちが課題にしたテーマは、“One Company, One Team”の考えを現場に浸透させるため、発信情報を整えることです。トップメッセージを社内の隅々にまで行き渡らせるためにはどうすればいいかを検討しました」
チームメンバーで何度も議論した結果、岡本らが導き出した答えが、社内のそれぞれのセクション長とトップとの対話の場を設けることでした。
「社長が話す言葉はなかなか現場で働く社員の心には響きませんが、事業所、研究所、営業所それぞれのセクションの長を通じて翻訳されることで、より現場に伝わりやすくなるのではないかと考えたんです。
社長との対談はまだ実現には至っていないものの、その縮小版を自分たちで設定し、実施してみました。その結果として実際に言葉が伝わりやすくなった感触を得ていて、さまざまなケースに展開できると感じています」
プロジェクトに参加して多くの気づきを得たと話す岡本。中でもとくに大きな収穫だったと言うのが、ファシリテーションの手法に触れられたことでした。
「コンサルタントの方にファシリテーターとして入ってもらったときのことです。限られた会議の時間の中でひとつの答えを導き出していくことの大切さを学ぶと同時に、認識の一致や相互理解に向けてサポートし、成果へとつなげていくファシリテーションの技術に非常に興味を持ちました。
社内のコミュニケーションがうまくいかないのをリモートワークのせいにしていましたが、それは誤り。オンライン上でも双方向のコミュニケーションが実現できることを知りました」
プロジェクトの成果を職場で実践。ファシリテーションでコミュニケーションに革命を
働き方プロジェクトに参加したことで、社内コミュニケーションについて見直すようになったと話す岡本。職場である営業所内にも同様の課題があると感じていました。
「営業所内では普段から同僚たちとよく会話していましたが、本当の意味でのコミュニケーションが取れているのだろうかと疑念が湧くようになっていました。働き方プロジェクトでは、トップのメッセージが全社に行き渡っていないことが課題でしたが、営業所単位でも同じことが起きていて、支店長や営業所長の意思や考えが浸透し切っていないのではないかと思ったんです。
それがきっかけで仕事に対してやらされ感みたいなのが起きているとしたら、それはとてももったいないこと。みんなが楽しく効率良く働くためにも、なんとか改善したいと考えていました」
半年間にわたる働き方プロジェクトで知見を得た岡本が期せずしてファシリテーションスキルを学ぶ機会を得たことから、職場にスキルを広めようと始めたのが、「いい職場にしようプロジェクト」です。
「手始めとして、松山市を中心とするエリアを担当する6名のMRを対象にこのスキルを学ぶために半日間のプチ合宿を実施しました。そこで職場の課題を抽出したところ、整理整頓ができてないといったレベルのものからデジタル環境の不備まで、営業所の問題を洗い出されたのですが、もっとも大きなものとして浮かび上がってきたのが、人によって業務の偏りができていること。
業務が可視化できていないため、誰がどれだけの仕事を抱えているかを把握できていないところに、全員が課題を感じていることがわかりました」
合宿ではリモート作業を想定し、同じ場所にいながら全員がそれぞれパソコンに向かうかたちで会議を進行。岡本はこのスキルを積極的に取り入れたと言います。
「チャット機能を活用するなど、心理的安全性を高めたことで特定の人だけでなく全員が等しく発言できるようになり、新たな視点からの意見が多く出されました。さらにファシリテーションの手法を応用することで参加者間の深いコミュニケーションが実現し、それまでなんとなく気になっていたことを明確に意識化することに成功しました。最終的に、誰もが納得するかたちで共通認識に至ることができたと思っています。
当初はたった半日でどれだけの成果が得られるのかと半信半疑でしたが、実際にまとまった時間を使って集中して作業できたことで、想像していた以上の手ごたえがありました。無駄な会議は解消されるべきですが、しかるべきファシリテーションのもとで全員が意見を出し合い、合意形成に至るプロセスの重要性をあらためて感じています」
働き方改革のロールモデルに。真のコミュニケーションの輪を組織の枠の向こうへ
今後、働き方プロジェクトで学んだことを活かしながら、さらにファシリテーションの技術を高めていきたいと話す岡本。将来をこう展望します。
「仕事上、ファシリテーターの役割を担うケースが多いので、さまざまな場面で実践を繰り返しながら技術を高めていきたいと思っています。MCGグループでは、職場のコミュニケーションの質を底上げする目的で社内の認定ファシリテーターを育成する『認定ファシリテータープログラム』をスタートさせているので、これにも挑戦するつもりです」
また、現在は営業所内で推進している「いい職場にしようプロジェクト」を組織の枠を超えて展開させていくことにも意欲的です。
「仕事の偏りの解消に向け、困り事を所内の全員で対応できるような環境づくりをめざして、30代の若手が中心になって営業所内の全員に対してヒアリングの実施を始めました。まずはこれを近いうちにかたちにするのが目標ですが、いずれは他支店や営業所はもちろん、MCGグループ全体に広げていけたらと考えています。
伝えたいのは、まとまった時間を確保してチーム全員で問題点を探り、みんなが納得するかたちで解決策を見つけていくことの大切さです。しかるべき手法、順序のもとで取り組めば、本当の意味でのコミュニケーションが実現することを身をもって実感しました。私たちが1つのロールモデルになれればいいですね」
グループの全員が組織の枠を超え、一丸となって前に進める組織づくりをめざして。真のコミュニケーションを通じた岡本の風土改革への挑戦は、まだ始まったばかりです。
※ 記載内容は2023年6月時点のものです