欧州には全寮制の私立学校(ボーディングスクール)が数多くあり、小学生から高校生まで多くの子どもたちが親元を離れ、暮らしを共にしながら良質な教育を受けています。もちろん多額の費用がかかりますが、親にとっては「子育てと教育を全面的にプロにゆだねる選択肢がある」ということ。富裕層や資産家だけでなく、仕事で多忙を極める働く親たちの受け皿にもなっているようです。そんな選択肢を、日本でも働く親たちに提示したいと、日本で初めて全寮制の小学校を立ち上げ、経営者ママたちから熱い支持を得ているのが2020年、広島県神石高原町に開校した神石インターナショナルスクール(以下、JINIS)。自身も実業家として多忙を極めていた時期に子育てし、仕事と子育ての両立でさまざまな困難を味わったのが創立のきっかけだったと、創設者の末松弥奈子さんは振り返ります。
【上編】日本初の全寮制小学校 子をプロに任せ、得た「三方よし」が出発点 ←今回はココ
【下編】息子たちは全寮制小学校に 離れても親子時間「増」のなぜ
小学3年生の息子をスイスのボーディングスクールへ
学習院大学大学院修了後の1993年にウェブ制作会社を立ち上げたのを皮切りに、起業家・実業家として、ネットマーケティング分野で実績を重ねてきた末松弥奈子さん。2017年に英字紙ジャパンタイムズを買収、今も会長としてその経営に携わっています。仕事で多忙を極める一方、現在すでに社会人として活躍する息子を育てる母として子育てにも奮闘してきました。
忙しさの中、しっかり息子と向き合いきれない罪悪感や、納得できる教育の選択肢がないことなどがあり、仕事と子育ての両立は難航したといいます。
「私は広島で育ったため、東京の小学校受験や中学受験といった教育環境になじみがありませんでした。それでも忙しい毎日の中、周囲に巻き込まれるように息子に小学校受験をさせました。結果は不合格。結果以上に、納得していないのに流されるように受験をさせてしまった自分が嫌でした。その後息子は地域の公立小学校に進みましたが、公立の学校教育に物足りなさを感じつつ、かといってこのまま中学受験に巻き込まれることにも抵抗がある状況でした」
わが子の教育について、これといった選択肢がなく途方に暮れていたときに、知り合いが子どもを海外のボーディングスクールに進学させるという話を耳にします。
「そんな選択肢もあるのかと興味を持ち、一度チャレンジしたいと思いました。そして息子が小学3年生のときに、スイスのボーディングスクールへ送り出しました」
このボーディングスクールに息子を送り出した体験が、末松さんがJINISを創設するベースになったといいます。