第2回目以降の裁判の流れ:準備書面の作成・提出、証拠書類の提出、証拠の申出、尋問、結審、判決
このページでは「訴えられた!」という場合の第2回目以降の民事裁判の流れについて説明しています。
争点の整理
原告の主張と被告の主張が互いに対立している事件(例えば、原告は「お金を貸した」と言っているが、被告は「お金は貰ったものだ」と言って争っている事件)では、第2回目以降の期日において、原告と被告が、お互いにそれぞれの主張を記載した「準備書面(じゅんびしょめん)」と自分の主張の裏付けとなる証拠書類(書証)を交互に提出しあうことによって、裁判の結論を分けるポイントとなる「争点(そうてん)」がどこにあるのかを整理していくことが通例です。
具体的には、被告から答弁書が提出されると、今度は、原告が答弁書に記載された被告の主張に対する認否や反論を記載した準備書面を作成して証拠書類とともに提出することになります。
これに対し、被告は、必要があれば、原告が提出した準備書面に記載された原告の主張に対する認否や反論を記載した準備書面を作成して証拠書類とともに提出することになります。
このような書類上でのやり取りを通じて裁判の争点が整理されていくことになります。
準備書面の書式
上記のとおり、争点の整理の段階では、原告と被告の双方が準備書面を作成して提出する必要があります。
準備書面の書式(形式的な記載事項)は、基本的には答弁書と同様です(答弁書の書き方のページもご参照ください)。事件番号・事件名・当事者名を冒頭左上に記載するほか、書面のタイトル、作成年月日、提出先の裁判所名の記載、当事者の記名押印が必要です。
郵便番号、住所、電話番号、ファクシミリ番号については、最初に提出した答弁書に記載してあれば、改めて準備書面に記載する必要はありません。
準備書面のタイトルについては、提出順に「第1準備書面」あるいは「準備書面(1)」などとするのが通常です。相手が「第1、第2、第3~」を使用している場合には、タイトルが重複しないように「(1)、(2)、(3)~」を使用するという例もあります。
ワード文書の準備書面の書式設定例(リンク先はWord文書ファイル(.doc)です)を掲載しておりますので、ダウンロードの上で自由にご利用下さい。
準備書面の書き方・内容
準備書面に書くべき内容については、事件の種類や相手方の主張の内容、それに対するこちら側の反論の内容等によって異なることになります。
まず大前提として、準備書面には当事者の主張を記載することになりますが、そこで記載が求められる当事者の主張とは、法的に見て(裁判所の目から見て)意味のある主張(事実の主張)のことを言います。原告の請求が認められるか否かは、法律及びその解釈や判例に照らして、その判断のために必要な事実が認められるか否かを裁判官が判定することにより決まるのが基本です。したがって、当事者としては、そのような裁判官の判断に必要かつ十分な事実の主張をし、それを証拠で裏付けることが求められます。この点を意識せずに漫然と言いたいことを書面に記載しても、無意味であるばかりか有害(不利益)になることもあります。その事件においてどのような主張をすることが求められるのかが分からないという場合は、専門家である弁護士に相談・依頼をすることをお勧めします。
相手方が準備書面で新たな事実を主張してきた場合には、答弁書と同様に、その事実を認める(自白する)のか認めない(否認する)のかという認否と反論を記載することが必要となります。また、相手方の主張に対する認否や反論以外にも、こちら側から新たに主張したい事実等があれば、その内容を準備書面に具体的に記載することになります(答弁書の書き方のページもご参照ください)。
これらの事実等の主張を準備書面に記載する際には、第三者である裁判官にも分かりやすいように、いわゆる「5W1H」を意識して、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「なぜ」「どのように」「どうした」のかを明確にすることを心掛ける必要があります(特に「いつ」「誰が」「何を」「どうした」のかを明らかにすることは、事実の主張に当たって通常必須であると考えられます)。
なお、準備書面に記載された内容は、あくまで当事者(原告・被告)の一方的な主張を述べたものに過ぎず、準備書面それ自体が裁判での「証拠」となるものではありませんので注意が必要です。
自分の見聞きした事実についての自分の供述を証拠としたい場合には、準備書面とは別に、自分の体験した出来事の経過を文書にまとめた陳述書(ちんじゅつしょ)を作成して証拠として提出したり、後述のように、当事者本人の尋問(本人尋問)の実施を裁判所に申し出る必要があります。
準備書面の記載内容と陳述書・尋問の内容が同じようなものであれば二度手間であるように思われるかもしれませんが、民事裁判では準備書面に記載される当事者の「主張」と、その裏付けとなる「証拠」は区別されておりますので、準備書面による主張で証拠としての役割を兼ねることはできません。
証拠書類(書証)の提出準備
準備書面に記載した主張の裏付けとなる証拠書類(例えば、「100万円は借りたが返した」という場合には,100万円を返済した際の領収書や,振込送金した際の受付書など)がある場合には、準備書面と併せて証拠書類も裁判所に提出します。
裁判所への証拠書類の提出は、写し(コピー)を提出して行います。証拠書類の写しも、準備書面と同じく原則としてA4サイズの用紙にコピーして提出します。特に原寸大でコピーして提出する必要がない限り、A4サイズの用紙に収まるように縮小コピーするなどしても構いませんし、また、特にカラーでコピーする必要がなければ白黒コピーで構いません。
証拠書類には、書類ごとに提出順に、原告側は「甲第1号証,甲第2号証……」(原告側の提出書証を「甲号証」といいます)、被告側は「乙第1号証、乙第2号証……」(被告側の提出書証を「乙号証」といいます)というように番号を付します。具体的には、証拠書類をコピーした用紙の右上余白に「甲第1号証」というように記載します。記載は手書きでも構いません。
提出した証拠書類を準備書面で引用する場合には、例えば「被告は、原告に対し、平成○年○月○日、本件貸付金100万円を返済した(乙1)。」というように番号で特定して記載します。
証拠書類を提出する場合、証拠書類の写しと一緒に、証拠の標目(タイトル)、作成年月日、作成者、立証趣旨(その証拠によって何を証明しようとしているのか)などを記載した「証拠説明書(しょうこせつめいしょ)」の提出を求められることがあります。
証拠説明書の記載方法・記載例については、松江地方裁判所・松江簡易裁判所のウェブサイト内に掲載されている「証拠説明書(記載例詳細版)」で詳しく説明されておりますのでご参照ください。
証拠説明書の書式例(リンク先はWord文書ファイル(.doc)です)を掲載しておりますので、ダウンロードの上で自由にご利用下さい。
準備書面・証拠書類(書証)の提出
以上のようにして作成した準備書面、証拠書類の写しのいずれについても、裁判所だけでなく相手方に対しても送付する必要があります。
送付の方法は、答弁書と同様に、裁判所に2部提出して裁判所から相手方に送ってもらう方法もありますし、裁判所と相手方に対してそれぞれ送付する方法もあります(答弁書の提出のページもご参照ください)。作成した書面の提出方法については、裁判所の担当書記官に尋ねるのが確実でしょう。
なお、提出した準備書面・証拠書類の控え(コピー)を取っておくことも忘れないようにしましょう。
準備書面をファックスで送付する場合のファクシミリ送信書の書式例(リンク先はWord文書ファイル(.doc)です)を掲載しておりますので、ダウンロードの上で自由にご利用下さい。
第2回目以降の裁判の流れ
第2回目以降の裁判期日では、このような準備書面と書証のやりとりを、原告・被告お互いの主張が尽くされて、争点(双方の主張が対立しているポイント)が整理されるまで繰り返すことになります。
この間は、およそ1か月に1回のペースで裁判の期日が指定されますので、第1回の裁判期日の後、「原告側の反論の準備書面提出→被告側の再反論の準備書面提出→原告側の再反論の準備書面提出→被告側の再々反論の準備書面提出……」というように、原告・被告が互いに2回ずつ反論の準備書面を提出しあうだけでも4か月程度の期間が経過することになります。争点が少ない単純な事件の場合にはこのような準備書面の提出による主張の整理は短期間で終わりますが、争点が多く複雑な事件の場合には長期間を要することもあります。
なお、第2回目以降の裁判期日は、双方の主張や証拠書類の内容に立ち入った整理を行うために、公開の法廷で行う口頭弁論期日ではなく、小さな会議室のような場所で非公開で行われる「「弁論準備手続(べんろんじゅんびてつづき)」」という期日が指定されることもあります。弁論準備期日の場合には、1回の期日の時間は、おおむね30分程度の時間の枠が設けられます。第1回の口頭弁論期日の際に次回期日の日時の告知を受けた場合には、改めて呼出状は送付されませんので、期日を忘れることのないように注意が必要です。また、弁論準備期日に出頭する場合は、第1回口頭弁論期日が行われた法廷ではなく、裁判所の担当部・係の書記官室で受付をすることになりますので、出頭の場所を間違うことの無いように注意しましょう。
準備書面の書式・書き方についての参考図書
裁判所に提出する準備書面の書式や書き方に関しては、いずれも専門書ですが、次のような本が役に立つものと思いますので、もしどうしても自分で準備書面を作成しなければならないという場合にはご参照ください(準備書面の作成は答弁書以上に難しいものです。不用意な準備書面を提出して思わぬ不利益を受けることのないよう、早期に弁護士に相談することをお勧めします)。
- 岡口基一『民事訴訟マニュアル―書式のポイントと実務―第2版』(ぎょうせい)
- 大島明『書式 民事訴訟の実務―訴え提起から訴訟終了までの書式と理論』(民事法研究会)
- 東京家裁人事訴訟研究会『書式 人事訴訟の実務―訴え提起から執行までの書式と理論』(民事法研究会)
- 田中豊『法律文書作成の基本[第2版]』(日本評論社)
- 植草宏一ほか『訴状・答弁書・準備書面作成の基礎と実践』(青林書院)
- 喜多村勝德『記載例からみる民事裁判文書作成と尋問の基礎技術』(弘文堂)
- 柴﨑哲夫・牧田謙太郎『弁護士はこう表現する 裁判官はここを見る 起案添削教室』(学陽書房)
- 民事弁護実務研究会『民事弁護の起案技術』(創耕舎)
- 金子稔ほか『実践演習 民事弁護起案』(日本加除出版)
証人尋問・当事者本人尋問
準備書面・証拠書類の提出という書面上のやりとりによって争点が整理された段階になると、ようやく証人や当事者本人の証言を直接聞く尋問(証人尋問・本人尋問)の手続が行われます。この尋問の手続が、テレビなどで見るような「裁判らしい」裁判の場面になります。
尋問の期日は、尋問する証人や当事者の人数にもよりますが、半日(午前10~12時、午後1時30分~5時)あるいは丸1日(更には、数日)を使って、なるべく短期間に集中して行われます。
尋問の手続(当事者からの証人・本人尋問の申出や、裁判所による実施の決定、実施日時・順序の調整など)や技術(証人等に対する具体的な質問の方法・内容など)については専門的な話になりますので概略の説明にとどめますが、証人尋問や本人尋問では発言者が自由に話すのではなく、原告(代理人)、被告(代理人)、裁判官からの質問に回答する形式で発言することになります。各証人の尋問時間はあらかじめ決められており、それぞれの証人に対する尋問は、証人を申請した側からの尋問(主尋問)、相手方からの尋問(反対尋問)、そして裁判官からの尋問(補充尋問)という順序で進みます。
裁判官は、争点についての証人の証言や本人の供述について、証言・供述している人の立場や利害関係の有無、証言・供述内容に不自然なところや他の証拠との矛盾はないか、証言・供述の内容は一貫しているか、証言・供述態度はどうかなどの様々な観点から、証人の証言や当事者の供述が信用できるかどうかを評価します。
結審
証人尋問・当事者尋問が終了すると、通常、裁判所は「結審(けっしん)」(審理を終了すること)して、判決の言い渡し期日を決めます。判決の言い渡し期日は、原則として結審の日から2か月以内に指定されることになっています。
なお、結審の前に、あらためて原告・被告の双方が尋問の結果を踏まえた主張を記載した準備書面(最終準備書面)を作成して提出することもあります。
また、結審の前後に、裁判所から原告・被告に対して、あらためて話合いによる解決(和解)を勧めて、話合いによる解決が試みられることもあります。和解の期日は、原告・被告が同席の下で行われることもありますが、原告・被告が入れ替わりで裁判官と個別に話をする形式で進める場合も多くみられます。
判決の言い渡し
裁判所から指定された判決言い渡し期日に法廷に行くと、判決の言い渡しがあります。
判決の言い渡しといっても、裁判官が読み上げるのは判決の「主文(しゅぶん)」だけで、通常その判決の「理由」を読み上げて説明することはありません。したがって、判決の言い渡しは、「主文。1.被告は原告に対して100万円を支払え。2.訴訟費用は被告の負担とする。」(原告勝訴の場合)とか、「主文。1.原告の請求を棄却する。2.訴訟費用は原告の負担とする。」(被告勝訴の場合)というように大変あっけないものです。
なお、判決の理由については、後ほど判決書を受け取って確認することになります(判決書は当事者に送付されます)。
以上のとおりですので、通常、判決の言い渡し期日にわざわざ出頭する必要はなく、裁判官は、当事者が誰もいない法廷で判決の主文を読み上げているというのが実際です。