名誉毀損罪と侮辱罪で逮捕され勾留されている容疑者へ会いに行った話 1日目
名誉毀損事件の被害者が、名誉毀損事件の容疑者(以降、Aと記載)へ会いに行くという行為がどれだけ非常識な行為かは理解しているつもりだ。
だが当方はこれを敢行しなくてはいけない理由がある。
古い話ではあるが、当方は今から18年近く前「ハッカージャパン」という雑誌で雑誌連載を持っていた。
その当時の担当編集者である岡本顕一郎氏が、今から6年前に博多の講演先でネットの会った事もない人間に待ち伏せされてナイフで刺殺されてしまった事から、当方にとって「インターネットの顔も知らない人間に恨まれて殺される」というのは他の人に比べて非常に身近な事であるし、Aが使用するプロバイダを開示をした際、プロバイダ側のミスで当方がAを刑事告訴している事がバレてしまい、Aは深夜に遠方から当方の所轄の警察署にやってきて警察騒ぎを起こした。
この警察騒ぎの翌日から同居人が「私達はネットの知らない人に殺されるかもしれない」という恐怖に怯えるようになる。
このような理由から当方は、本事件の担当警察官に
「Aはどんな奴なんですか!? いつ自分のところに来るのかわからないのでAの顔写真を見せて欲しいです」
……と、何度もお願いし続けたのだが、被害者と容疑者の面識がない名誉毀損事件の場合、例え被害者であっても容疑者の写真を見せる事はできないという捜査上のルールがある為にこの願いは最後まで受け入れられず、同居人は事ある都度に「Aが釈放されたら、いつか刺しにくるかもしれないんだよ……」と怯えるほどの精神状態に。
※昔の知り合いが当方に名誉毀損を行った事件の場合は、警察から容疑者の確認として彼の現在の顔写真を見せられました
だから当方はAに会って彼の顔を覚える必要があったのだ。
Aとの面会 1日目
「彼の謝罪、そして名誉毀損をした理由」
留置所に勾留されている人間と会うには、警察署の留置管理係で、面会者の名前/住所/電話番号/相手との関係性/面会の目的などを記入した書類を提出する必要がある。
書類への記入が終わると「これら情報を全て容疑者に伝えてよいか?」という確認が行われる。
この書類に記入した個人情報全てを容疑者に伝える事もできるし、逆に全ての情報を容疑者に一切伝えない事も可能だ。
また警察官に聞かないと教えてくれないのだが、こちら側で容疑者に対して伝えても問題ない情報だけ選択する事も可能なので、当方は「私の名前だけAへ教えてください」と伝えた。
数分ほど経過した頃、警察官から「あと数分で面会室が空きます。面会室へ電子機器の持ち込みは禁止です。もしスマートウォッチを付けていましたら、スマートフォンや電子機器と一緒にロッカーへ仕舞ってから入室してください」と指示をされたので、Aへの質問事項を書いた紙、ペン、ノート、財布以外をロッカーにしまって面会室へ。
当方が透明なアクリル板の向こう側に見える鉄製の扉を眺めながら
「Aは初めて会う俺を見てどのように思うのだろう?」
「そもそもAは反省しているのだろうか?」
「もし反省しているのであれば、最初どのような態度をとるのだろう?」
などと考えていたところ、向こう側からコツコツという革靴の音と、ペチペチというサンダルっぽい足音が聞こえてきた。
「遂にAに会うのか……アクリル板越しとは言え、やっぱり緊張するな……」
カチャカチャという鍵束を操作する音、カチッと鍵が開く音、そして鉄の扉がギィィィと開く音を聞いた次の瞬間、制服を着た留置官の横にいた黒いジャージを着た男性は「いかりや長介のオイッスみたいなポーズ」をとりながら
「いやー、今回は色々とすみませんでしたね!!」
…と爽やかに言い放ったので、当方はドリフ大爆笑のいかりや長介よろしく
「だめだこりゃ」
と思った。
これが当方とAのファーストコンタクトだ。
以下は当方の記憶とメモからの書き起こしとなるのだが、曖昧な部分、Aや当方の個人情報に関する部分は割愛させて頂く。
A氏 「(当方の顔をまじまじと眺めながら)随分昔と変わりましたね。へぇー、こんな人なんだぁ〜」
当方 「自分も今回Aさんがこんな感じの人なんだなぁってわかって、少し何かを理解できた気がしますよ」
(Aは俺の顔写真を投稿に貼っていたから顔がわかるんだよなぁ……)
当方 「ところで今回こういう事(2回目の逮捕)になっちゃいましたけど反省はしているんですか?」
A氏 「もちろんです、反省はしていますよ」
(ちゃんと反省はしているんだ)
当方 「じゃあどうして今回こうして逮捕されたかは理解していますか?」
A氏 「それがねー、なんで悪いのかわからないんですよ」
(え、マジで?!)
当方 「前回の逮捕の時に、警察とか検察とかから、何が悪かったか説明されてないですか?」
A氏 「説明はされたんだけども、なんか納得がいかないんですよね」
(そういう事か……)
当方 「じゃあ何で今回も捕まったのか理由はわかってないの? それじゃあ本当は反省していないって事ですか?」
A氏 「ちゃんと反省はしているんですよ、でも何が悪いのかわからないんですよね。だっておかしいでしょ公に……(以下略)」
(どうしてAが再犯したのか理解してきたぞ……)
当方 「Aさんの書き込みによって自分の一般生活に支障がでてきているんですけども、それは理解していますか?」
A氏 「そんな事を言われても自分にはわからないですよ」
当方 「あとAさんのある書き込みで、世話になっている人の仕事が一個飛んじゃったんですけど、俺はそれを一番怒っているんですよ」
A氏 「え、そうなんですか?! でもそんな事を言われましてもねぇ……」
(もしかして俺に対する罪悪感がないのかな?)
当方 「一応なんですけども、自分はAさんと和解する意志はある事は伝えておきますね。Aさんは和解金を払う意志はありますか? 支払わない場合は、この後に民事裁判をしますけれども」
A氏 「なんか弁護士が母と20万円払うとか何とか色々言ってましたけど、俺は払わなくていいみたいな感じの話はしました」
当方 「え、和解の話って存在していたの? 俺それ検事から聞いてないし弁護士からも連絡きてないよ?!」
A氏「お金の話はもういいじゃないですか、やめましょう」
(お金で和解する意志は最初から無し、そうだとは思ってた)
当方 「あ、大事な事を聞き忘れていました。嫌がらせを開始した理由って自分がブロックしたからであってますか?」
A氏 「うーん……(考え中)」
(警察からブロックされて頭にきたからって聞いているけど……)
警察 「時間になったので、ここで面会はおしまいです(15分経過)」
当方 「また会いにくる予定ですけども、それは大丈夫ですか?」
A氏 「また来るんですか? 自分は全然かまわないですけども」
当方 「わかりました、それじゃまた」
A氏 「それじゃ、また」
Aの言い分はそれなりに理解できたし、何故再犯したのかも何となく理解できた。
警察署を出た当方は、本事件を担当する検察官に「先ほどAに会って色々と話をしてきました。反省はしていると言っていましたが、当人は何が悪かったのかは理解できていないようです。自分はAが本気で反省しているかは正直わかりませんでした」といった趣旨の事を伝えたところ、検察官の口から驚愕の事実が。
「Aが書いた12月1日付けの反省文が私の手元に届いています。吉野さんの家にFAXってありますか? あ、ない。じゃあ音読して……いや、それはマズイかなあ……。Aの弁護士さんの連絡先を教えますので、そちらから反省文の内容を直接聞いていただけますか?」
検察官から伝えられた電話番号をメモをし、その弁護士事務所に連絡を入れるとAの担当弁護士から「Aの書いた反省文の原本が手元にあるので、口頭でよろしければお伝えできますがいかがなされますか?」と説明されたので、当方はノートパソコンをその場で開き、弁護士の言葉を一つずつ反芻しながら「Aが書いたとれされる反省文」を聞き取りした。
以下がその反省文。
取り急ぎメモしたものなので漢字変換などはされていないが、内容は十分に伝わると思う。
文章全体から反省をしている事は感じられるのだが、5〜6行目の部分が当方には「不快な人が絡んできたり、不快な意見をされた場合、貴方が拒否をする自由はあります。私に拒否されてもムキになったり意固地にならないで、ただ無視して訴えなければよいだけです」としか読み取れなかった。
「この反省文、俺の国語力じゃちょっと読解できないなぁ……」
そう思う事にしてその日は寝たが、ひたすら悪夢しか見なかった。
次回 反省文の意味と、彼の言い分
ここまで長々と読んで頂き、本当にありがとうございました。
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コメント
1長くなりそうだけど面白いなぁ。毎日更新チェックしてます。わくわく