おれがやってたのはアングラ演劇
昭和50年ごろ。新宿のアングラ劇場の客席に詰めかけた若者たちは、舞台を見て息をのんだ。
彼らのお目当ては、アニメ番組「宇宙戦艦ヤマト」で地球侵略をたくらむデスラー総統の声を担当した伊武雅刀(当時の芸名は雅之)。ニヒルなデスラーを甘いバリトンの声で演じた伊武が、ステージ上で下半身を露出させて暴れ回っていた。
「だっておれがやってたのはアングラ演劇なんだから…。シーンとしちゃって『なに、これ?』なんて声が聞こえてくる。居心地悪かったよ」
芽の出なかったアングラ俳優が、一つの番組によって、バレンタインデーに女性ファンから500個ものチョコをもらい、内容も知らずに舞台のチケットを求める客が殺到するほどの人気者になっていた。伊武は自分の境遇の変化に戸惑うばかりだった。