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井口真理子 × NFTアートができるまで〜制作秘話をセキララに語ります

京都から福岡県宗像市の大島に移住した井口真理子さんが、島に移っての「セキララ」な日常を綴る「Oh!! 島セキララ記」。久しぶりの更新となった今回は、新たな展開「NFTアート」への取り組みについてです。なぜ取り組むことになったのかというきっかけから、制作と販売に向けての紆余曲折を語ってくれました!

***

Oh!!島セキララ記、久々の投稿。
前回まではほぼ月イチ連載だったが、昨年12月に「インプットの旅 inアメリカ」に出てからはお休みをいただいていた。
帰国後は、オーダー絵画の制作をしたり、デジタルアート制作に勤しんだり。
大島では、ひきこもりアウトプットの日々を過ごしていた。
このデジタルアート、というのが今回新たに挑戦する「NFTアート」だ。

NFTアート。数年前から話題になっていて、大半の方にとって「聞いたことはある」「気にはなる」といった距離感ではないだろうか。「習慣的にチェックしている」という人はまだまだ少数派。と予想する。
かくいう私も、はっきり言って「全くの知識ゼロ」からNFTアートの世界に飛び込んだ。

そして現在。
ようやく初めてのNFTアート出品を間近に控えている。

今回はそこに至るまでの道のりを、書き出していこうと思う。
(これは長くなりそうだ.......)

第一章「冒険のはじまり」

私も、以前から「気にはなっていた」一人だった。
アーティストとして、今後チャレンジしてみたいリストに入っていたのだが、はじまりはひょんなきっかけだ。

昨秋、アートファンドΩ様に納品した作品について、糀屋さんと談義していたとき。
「この作品をNFTアートにもしてみたいな」という議論になり、そこで初めて実際にNFTアートに関わることを考え始めた。そのときはまだなんとなく、リアル作品をバーチャル作品につなげてみたいな、くらいのふわっとした感覚だった。
この時のイメージから、結果的に全然違うものが最初のNFTアートとなるのだが、それはまた後ほど。

ほどなくして、お仕事の速い糀屋さんから「NFTプラットフォーム事業をされている方がいるので紹介します」とのご連絡が入る。そして出会ったのが、株式会社MikoSea代表の工藤さんとエンジニアの中さんだ。

初めましてのご挨拶も、これまでのお打ち合わせのほとんども、オンラインで行ってきた。のどかな離島の民家の一室で、最新のNFTアート市場の動向やブロックチェーン技術について見聞きするのは、なんともアンビバレントな心地。先端を走る風を感じてわくわくした。

結論からいうと、NFTアートというのはひとつの「創作活動」であり、「起業」である。
二つの要素が重なり合った、新しいアートエコノミーの形なのだ。
私にとっての「新しいアートエコノミー」の冒険が、福岡県宗像市大島ではじまった。

ミートアップからのスタートアップ。
起業家には往々にして、計画的偶然な出会いから、結果的必然なアクションへと変化することがあるのではなかろうか。
インスピレーションからの創作活動に置き換えると。
アーティストにとっても、往々にしてそういうことがある。

第二章「プロトタイプ創作」

私の創作活動において、とりわけ大型作品の場合、「ドローイング」という「下絵の下絵」のような絵を描くところから始まる。
そのドローイングはいわば、インスピレーションの源流からそのまま掬い上げたイメージのようなもの。ここの純度の高さが、作品全体の精度を底上げする。

なので、ここでは「なんかわからんけど、めっちゃええやん!」と心から感じる何かであることが、とても大切だ。はじめから作品にするつもりでなくても構わない。
その時がくれば、その絵が自ずと「はい、ワタシ出演します」と言って名乗り出てくれる。
他人の評価も関係ない。とにかくまずは自分がすごくいいと思えるかどうか。

ここで運が良ければ、他の人も「めっちゃええやん」と賛同してくれる。
私は幸運にも、糀屋さんやMikoSeaさんからそのお言葉をいただいたのだった。
そう、プロトタイプ(試作品)を見せたときに。

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プロトタイプをiPhoneに転送して並べてみる。ニヤニヤがとまらない。

起業家は、製品やサービスをリリースする前に、短期的にプロトタイプを作り、支援者や出資者に見せて反応を得る。そのフィードバックを元に検証と改善を重ね、リリースに向けて作り込んでいく。

それはある日のオンラインミーティング。MikoSeaのお二人からジェネラティブアートについてレクチャーを受けながら、私のアタマにさっそく作品イメージが降りてきた。興奮した私は「やってみたいです」といって、すぐにプロトタイプ創作に取りかかった。

ジェネラティブアートとは、簡単にいえばデジタル生成技術を用いて、自分の作品を自動生成するようなもの。アナログ的AI、と個人的には捉えている。作為と無作為のミックス創作。こちらはPhotoshopを使って創作した。プログラムで自動生成させると無作為に何万通りと生成できるが、手動でもレイヤを動かせば作為的に何通りでも作れる。

今回のプロトタイプで、私は手動でジェネラティブアートのサンプルを作ったのだった。

やってみます!とすぐさま取りかかった理由。それは、手元にあったスケッチブックから例によって「はい、ワタシ出演します」と名乗り出る声が聞こえたからだ。ページを開くと、そこには数日前に描いたドローイングがあった。私は「この絵や.....!」と直感し、降りてきたイメージを掴み、デスクで深呼吸。紙、鉛筆、ペン、Photoshop..といった道具たちと相談。ゴールをイメージし、それに向かう創作フローを脳内トレース。あとは考えずにひたすら描いていき、プロトタイプが完成した。

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「はい、ワタシ出演します」とスケッチブックから名乗り出てきた絵。

こだわった点は、「全てをデジタルで完結しないこと」
アウトラインはペンで手描きしたものをスキャンし、デジタル着色している。

手描きの線にはほどよいノイズやリズムが生まれ、1ピクセル以下の「味」が出る。
アナログの出自を生かし、デジタル上でも絵画制作のプロセスを楽しみたいと思った。

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アウトラインは手描きで、0.03、0.05、0.1のミリペンを使って繊細に描く。

第三章「すばらしい仲間」

プロトタイプを見たチームの皆さんから、「めっちゃええやん」という反応をいただき、手応えを感じた私は、「これはひょっとするとそのまま本番になるぞ」と直感。そのプロトタイプを元にパーツを増産し、細やかな修正と改良を繰り返した。

暦本純一さんの著書「妄想する頭 思考する手」の中に、「悪魔のように細心に、天使のように大胆に」という黒澤明監督の名言が紹介されているのだが、まさにそんな感じだ。

ひらめきはいつも天使がぽーんっとくれて、実現するまでは悪魔がそばで監視している。
誰も気にしないかもしれないが、1ピクセルの単位まで修正する。
自己満足を得るまで(悪魔が納得するまで)、寡黙な職人の如く、ただ手を動かしていく。

生成に必要な各パーツが出揃ったところで、エンジニアの中さんに自動生成プログラムを走らせてもらう。が......なんとも予想違いの結果に(笑)。

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第一回目の生成試験は、シュールな結果に。

レイヤの順番が違ったり、設定が細かすぎたりしたようで、ちぐはぐな絵になってしまった。

この検証の結果、「プログラムにとって、より組みやすい作画にしよう」という意識をもって第二、第三の改善へと移る。エンジニアさんにとって、コードに載せやすいデータや順序を整える。プログラムコードに配慮しながら作画する、という人ではないモノとの二人三脚でもある。最適化を進めてできたパーツでの2度目のプログラム生成では、無事イメージ通りの仕上がりとなった。それを見たチームの皆さんも「これはぜひやろう」と言ってくれ一層士気が高まっていった。

サンプルが出来たことで、リリースイメージがより明確になり、話は次第に具体的なスケジュールに移っていく。アイデアを早くカタチにすることで、早く現実を動かせるのだ。

そして気がつけば、皆さんとはチームと呼べる関係に。
糀屋さんの経営的観点から、またMikoSeaさんの技術的観点、NFT業界の視点から、それぞれ幾度となく情報共有や助言をいただいた。デザインチームの方にも加わっていただき、ミントサイトの構築も始まった。自分一人では行けない場所に皆さんと一緒に進んでいるのだな、と心強いメンバーに感謝しながら作画に当たる。ミントサイトのトップ画像となる絵は、鉛筆画にすることでアーティスト主体のプロジェクトであることを訴えたいと考えた。

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のちにミントサイトのトップ画像で、「CryptGhost Friends -Genesis-」となる原画。

第四章「マーケティングトンネル」

「自分が見たい」という強烈な欲求をエンジンにして創作し、ミントサイトも作っていただき、販売数も定めた矢先。「で、どう売っていく?」という、「マーケティングトンネル」が突如、眼前に現れた。なんだこれは。奥は闇に呑まれて見えない。マーケティング。それは、自分が避けてきた最たるコトといってよい。つくることに全力を注ぐが、それをどう売っていくか、という部分は我が本領にあらず、という慢性的拒否傾向があったのだ。
が、予算上マーケティング人員の投入は難しい。であれば、自分でやるしかない。

このトンネルをくぐらねば、先に進めないのだ。一旦入ってしまえばやるしかないと、前向きに切り替えて勉強スイッチをオン。NFT界隈で活躍している人の自伝を見聞きしたり、最新マーケティング動向やSNSマーケティングについて、書籍やネット記事を読み漁る。
結果、面白いではないか.......!!マーケティングとは、ナビである、と思った。

このナビ性能が実装できれば、作品を載せてもっと面白い世界に走って行ける。そんな気がした。目的があれば、なんでも面白くなるのが勉強の良いところだ。

ただ、ここで一つの壁にぶつかった。

とある識者の「個人でいきなり1万点とかやるのはかなり無理ゲー」という一言。

また糀屋さんのご友人でNFT販売経験者の方からも、「NFT初心者がいきなり初回で1万点販売するのは、例えるなら無名のインディーズバンドがいきなり武道館ライブするようなもの」とのコメントがあった。
さらに、私の友人であるNFTコレクターからも「初出品で1万点というのは聞いたことがない。在庫リスクが高すぎる」というコメントが。
ここで勘の鋭い読者の方はお気づきになったかもしれない。
そう、私は1万点のジェネラティブアートを出品するつもりだったのだ。

……..。

マーケティングがまるでわからないのに、初回から無謀すぎるぞ!という総ツッコミが聞こえてきそうだ。チームの皆さんが1万点の案で先導してくださったのも、まさか私がここまでマーケティングに疎い人間とは、思いもよらなかったのかもしれない……..。

無知とは、無謀なものだ。しかし、知識を得た無謀は、やがて現実的な挑戦となる。手探りながらも、少しずつその解像度を上げるべく奮闘する日々。まだまだこれからだ。
マーケティングトンネルで暗中模索して、やっと前方、かすかに見えてきた出口の光を見つめながら、歩を進める。

ここで読者の皆さまにお願いです。
私は最近、重い腰を上げ、ようやくTwitterを(本格的に運用しようという意味合いにおいて)はじめました!つきましては、皆さまの温かい「フォロー」という名の懐中電灯で、このマーケティングトンネルの暗闇を照らしていただけないでしょうか。


第五章「トライアンドエラーの先に」

なんでも、トライアンドエラーである。言い換えれば、検証と改善だ。
1万点生成、というゴールがあったらばこそ、生成にフィットした創作が実現した。
そして、いきなり1万点は販売できない、というエラーが発生。
では、次なるトライは......。

それはNFTコレクターの友人からの「『Genesis』として150点くらいから販売してみてはどうか」、という提案だった。

NFTアート界隈では、クリエイターの初出品は「Genesis」とよばれ、希少性が高い。特にその後、プロジェクトの規模が大きくなればなるほど、初回少量ロットのGenesisの価値は高くなる。

ここで、その友人から大絶賛を受けたのが、もともと出品予定ではなかった、ミントサイトのトップ画像だった。この絵がすごく欲しいと言われた。
これをレア版にして、ジェネラティブ版と合わせて150点にする。これなら、初心者の私でもマーケティングも含めてなんとかハンドリング出来そうだ、と軌道修正。

しかしここでまたしてもエラー。チームの皆さんへの返礼に当てるには数が少なすぎるためだ。今回、後援や技術協力してくれているチームの皆さんへの報酬は、ミントの一定数を分配することで協議していた。なので、1万点から150点に変更すると採算が合わなくなってしまう。

ただ、この時の自分の判断としては「アーティスト直営のNFTアートを、自力で完売する」という点が最優先事項であったので、チームの皆さんにも粘り強く説得を試みた。

リリースを3−4月に設定し、いよいよ最終段階。
リリースに向けてのシミュレーションや実装準備のため、京都に向かった。
エンジニアチームと合流し、開発用のテストネットを用いて試験開始。
テスト用の仮想通貨やデモサイトでのアップロードは、本番さながらに感動した。

こうしてブロックチェーン上に私の作品が刻まれるのだ、と実感したからだ。

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エンジニアチームとの打ち合わせのため、上洛。ただいま、京都。

第六章「冒険はつづく」

Genesis150点の販売からスタートしたい、というチームへの説得は続いていた。

今後プロジェクトを段階的に拡大する中で、お返しができればという想いを汲んでいただき、合意が取れた。そして思いがけず新提案もあった。
それはMikoSea代表工藤さんからの「初出品GenesisはMikoSeaで販売してはどうか」というものだった。「ア!!その手があったか」と目から鱗で、ナイスアイデアに感謝、即採用となった。

MikoSeaさんは、「支援型NFTプラットフォーム開発・運営」というサービスを展開していて、クラウドファンディングとして資金調達することが可能なのだ。つまり、このGenesisを返礼品としてNFT発行するということになったのである。
Genesisとして、同一作品をエディションナンバーをつけてMikoSeaで販売することになり、販売数もキリよく100点に改めた。

ここで集めた資金とコミュニティを基盤に、第二弾以降のプロジェクト活動をしていくという構図となった。
第二弾はOpenSeaでジェネラティブアートを1万点販売予定で、その広報イベントを大島で開催することを計画している。

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手動生成したコレクション。自動生成のジェネラティブアート解禁も、まもなく。

このプロジェクトを成功させたい。それは、作品を好きになってくれる人々に出会いたいから。新しいアートの価値を創造したいから。チームの皆さんへ還元したいから。プロジェクトをきっかけに、大島にいろんな人にきて欲しいから。たくさんの想いが詰まっている。

この冒険はまだ、はじまったばかり。
手探りで、先の見えない世界だ。
それでも「無性にワクワクする方向を指す」コンパスを頼りに、これからも冒険はつづく。

2023年3月23日
井口真理子


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