昭和女子大学は2013年、首都圏の女子大としては先駆的なグローバルビジネス学部ビジネスデザイン学科を開設し、昨年10周年を迎えた。一貫して自立・自律し、ビジネスの最前線で活躍する女性の育成を掲げてきた同学科の教育内容について、企業での実務経験ももつ本合暁詩学科長(写真左)に聞いた。また、同学科4年の河野帆香(ほのか)さん(写真右)に、ティーチング・アシスタント(TA)として1年生のグループワークを指導したときの経験談や将来の夢について語ってもらった。
◆ビジネスと英語を学び、全員がボストンに留学する
「本学科の最大の特色はビジネスを英語で学ぶ、つまり真にグローバルな舞台で活躍できる人材の育成にあります」
本合暁詩学科長は自信をもってそう話す。学びは入学式当日から始まる。
「新入生には入学式当日にTOEICを受けてもらいます。その結果によって習熟度別に英語のクラス分けをし、徹底的に英語を学んでもらいます」
1年次の英語の授業は週5、6コマ。同時にマーケティング、会計学、ファイナンス、経営学といったビジネスの基礎についてもしっかり学ぶ。
「1年次としてはかなり密度の濃いカリキュラムを組んでいます。いわば特訓のようなものです」
2年次前期の海外キャンパス、昭和ボストン(米ボストン)への留学の準備でもある。ビジネスデザイン学科の特長の一つは、希望する一部の学生だけではなく、全員が昭和ボストンに留学することだ。留学期間も19週間にわたる。本合学科長はこう力を込める。
「ボストン留学に備えて1年次に英語とビジネスの基礎をしっかり学ぶことで、留学時の学びをより充実したものにできるのです」
ボストンでは1週間のオリエンテーション後、1カ月間にわたり日常生活に必須の英会話や、現地のクラスに参加する際のテクニックなどについて受講。さらに14週にわたって英語でビジネスなどを学んでいく。
「本学科は英語を学ぶ学科ではありません。ビジネスに関して理解を深め、社会で生かすためのスキルを『英語で』学んでいくのです」
◆リーダーシップを発揮するための演習
ビジネスデザイン学科には独自のティーチング・アシスタント(TA)制度がある。1年次前期に行われるプロジェクト型学修形式のグローバルビジネス基礎演習で、グループワークを指導したり、アドバイスをしたりする3年生の学生をTAという。1クラス30人ほどのグローバルビジネス基礎演習では、5、6人ずつのグループに分かれて同じ課題について議論を重ね、結論を出し、発表する。
「リーダーシップを発揮するには、他者と協働して課題解決に導く力が求められますが、グローバルビジネス基礎演習を通じていろいろな人の意見を聞き、まとめていく力が養成され、ロジカルシンキングのスキルも身につけることができます」
2024年度は15人のTAが配置され、3、4人のTAが1クラスを担当している。導入部、議論する時間、発表する時間など基本的なタイムスケジュールを組み、授業を運営していく。グループの中で発言する学生が偏らないように配慮するのもTAの重要な役割だ。
TAは1年次に同じ授業を受けているため、どのように授業を進めればいいかを経験している。年齢が近いため1年生はTAに質問しやすい。TAにとってはマネジメント能力を養う絶好の機会になっているという。
「グローバルビジネス基礎演習は、入学した学生がはじめて顔を合わせて議論し合う授業です。初対面の学生同士がお互いの意見を聞き、また自分の考えをしっかり話すことで、お互いに理解し合え、仲間意識も芽生えます。留学先のボストンでは寮生活のため、この授業での経験が人間関係の構築にとても役に立っています」
本合学科長はこの演習のメリットをそう話す。
TAは入学予定の高校生とのオンライン交流会で、大学生活に関する疑問や質問に答える役割も担っている。「TAになりたい」という理由でビジネスデザイン学科を志望したという学生もいるほどだという。
◆組織の中で何をすべきかを考えさせられたTAの経験
3年次にTAを務め、いまはシニアTAとしてTAにアドバイスする立場の河野帆香さん(4年)がこう話す。
「ビジネスデザイン学科は留学と同時に経営も学べるため志望しました。大学は大きな教室で先生が一方的に講義をするものだと思っていたのですが、少人数制の授業が多く、自分が発表することも多いです。先生が教えるのでなく、TAが授業を運営し、学生が課題について話し合って発表するというグローバルビジネス基礎演習には最初、驚きました」
当初抱いていた大学の授業のイメージが覆させられたという戸惑いもあったが、体験したことがないTAの授業に少しずつ引き込まれていった。
「私は人前で話すのが苦手で、グローバルビジネス基礎演習の授業で自信満々に話すTAの姿を見て、かっこいいなと憧れつつ、3年生になれば自分もそうなれるのだろうかと2年後の姿を想像したことを覚えています」
そう考えていた河野さんを大きく変えたのがボストン留学だったという。海外での経験やアグレッシブな同学年の学生たちとの触れ合いを通して、留学後の2年半をどう有意義に過ごすかを考えた。そこでTAになることを決意した。
「他大学や他学科にはない制度ですし、ほかの人が経験できないことに挑戦したいと思いました」
授業で使うスライドなどの資料の用意もTAの仕事だ。授業の後は、その日の振り返りをシニアTAとともに行い、次の授業に備える。1年生のその後の学びにも影響を与えかねないだけにTAの責任は重大だ。
「いつもどんな授業にしようかと考えていました。全員がしっかり意見を出したうえでグループとしての結論にもっていくことが大事なので、一人ひとりへの心配りを大事にしていました」
グループによっては思いもよらぬ方向へ議論が進むこともある。議論が白熱して一回の授業時間で結論が出ないこともある。授業では答えを出すことよりもまず、学生が根拠のある意見を出し、相手を納得させられる議論をするのが重要だと河野さんは強調する。
「TAの経験は社会に出ていったときにとても役に立つと思います。組織の中で自分が何をすべきか、自分の得意分野を組織に役立てるにはどうすればよいかを考えて行動できるようになり、自分の将来についてしっかり考えることができるようになりました。実は『大学に入って変わったね』と両親から言われるようになったんです。人前で話すことに抵抗はなくなりましたし、少しは成長したのかもしれません」
河野さんはそう言ってほほ笑む。
簿記2級の資格をもつ河野さんは卒業後、メーカーの経理職への就職が内定している。将来の目標について聞くと、こんな答えが返ってきた。
「後輩から憧れられる先輩になりたいですね」
◆企業や自治体と共同でプロジェクトに挑戦する
1年次から2年次にかけてはボストン留学が最大のイベントともいえるが、その後の3年次から4年次にかけてはさまざまなプロジェクト型学修を通して理論と実践の融合を学ぶ。
「プロジェクトはゼミ単位で実施するものもありますし、ゼミという枠にとらわれず、学生が自由に参加できるものもあります。例えば、化粧品をどう並べると売れ行きがよくなるかを考える店頭プロモーションや、地方自治体と共同で観光用のプロモーションビデオをつくり、地域の魅力をアピールするプロジェクトに学生が参加してきました」
国内だけでなく、海外の大学の学生と共同で課題解決策を提案するものもある。これまで米コロラド大学ビジネススクールの学生と気候変動問題やサプライチェーンなどの課題について日本と米国の実情を調査し、発表した実績もある。
「TA制度やプロジェクト型学修といったように、学生同士で教え合ったり、発表し合ったりすることで実践的な学びが確実に身につきます。本学科ではそうした機会を多く設けています」
◆卒業後の姿を思い描くための一貫したカリキュラム
開設から10年を経過したビジネスデザイン学科は、ビジネスの最前線で活躍する女性の育成で大きな役割を果たしてきたと本合学科長は話す。
「共学の場合、TAのような制度があったとしても女性が担当する割合が少なくなる可能性があります。しかし、本学は女子大なので100%女性が担うことになります。TAに限らず、学生全員が自立・自律して行動するためのカリキュラムや環境を整えているため、リーダーシップを自然に発揮できる場面が数多くあるのです」
企業などで中核的な役割を担う卒業生も増え、母校を訪れ、体験談を語る機会も多いという。
「学生にとってはロールモデルに近い存在です。卒業生がいきいきと話すのを見ることで、将来の自分の姿と可能性を感じてもらえるといいですね」
ビジネスデザイン学科はさらに上を目指す学生のためのプログラムも用意している。本合学科長が話す。
「5年かけて本学科の経営学士と、同じ敷地内にあるテンプル大学日本校の学位を取得するダブル・ディグリー・プログラムがあります。また、英語力が高く、優秀な学生に対し、ボストン留学に代わって2年次後期にアイルランド国立大学ダブリン校などへ留学できるプログラムを今年度から始めました」
ビジネスデザイン学科では、グローバルを舞台にビジネスの最前線でリーダーシップを発揮できる女性の育成に向け、入学時から卒業まで一貫したカリキュラムを用意している。受験生が卒業後の姿を思い描きやすくする工夫を凝らしていることが保護者からも好評を得ている理由だと本合学科長は強調する。
〈詳しくはこちらへ〉
昭和女子大学グローバルビジネス学部ビジネスデザイン学科
https://www.swu.ac.jp/faculty/global/business/
取材・文/鮎川哲也 撮影/今村拓馬 制作/朝日新聞出版メディアプロデュース部ブランドスタジオ
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