そして、現在の藤浪の姿を見ると、元阪神監督の野村克也氏が、監督時代に話していた言葉を思い出すのです。
「エースと4番は育てられない」
1999年から3シーズン、阪神監督を務めた野村氏は、当時の久万俊二郎オーナーや、高田順弘、野崎勝義球団社長によく話していました。
「プロ野球に入ってきた選手をうまく育てて、脇役を作ることは可能だが、チームのエースと4番は後天的には絶対に育たない。投手なら150キロ以上の直球が投げられる。打者なら100メートル以上、打球を飛ばせる。誰よりも足が速い。そういった選手は後天的には作れない。阪神のスカウティングはそこを分かっていない。オーナー、アナタもそれが分かっていないんですよ」
野村氏は、久万オーナーに対して、何度もそう語り、ドラフトの重要性を説いたのです。
『ノムラの考え』を聞いた久万オーナーは、最初の頃、少し怒っていましたね。
「土台造りとは、ドラフトで獲得した選手を自ら育て、立派な選手にする。立派な選手をさらに育て、立派な指導者にする。ならばチームの屋台骨は揺らがない」
『土台作り』を提唱していた同オーナーからすれば、「エースと4番は育てられない」の言葉に違和感を覚えたのでしょう。「彼は育てる努力や作る努力をしていない」と言い放ったこともありました。
正しい戦略…歴史が証明する
しかし、球団の歴史は正直ですね。ドラフトで指名した投手で江夏豊氏以来、数年に渡り、実績的にもエースに君臨した投手は、2002年~2006年の井川慶ぐらいでしょうね。能見、安藤、藪、湯舟…。開幕投手を務め、先発ローテーションの軸で投げた投手はいますが、絶対エースという立場には至っていません。
つまり、野村克也氏が唱えたように、プロ野球に飛び込んでくる段階でエースや4番の資質を持っていなければ、入団後の努力で後天的にエースや4番に成長する可能性は極めて低いのが現実です。異議を唱える人もいるかもしれませんが、無理矢理にエースや4番の座を与えようとしても、その人材に実力がなければチーム自体がBクラスに低迷するでしょう。