「立ち見席で歌舞伎を毎日見て、市川寿海の美声にほれました。舞台袖で出番を待つ市川雷蔵は暗闇の中の月下美人のように美しかった。私は歌舞伎時代の雷蔵を見た最後の世代ですね」
その後、映画界入りした雷蔵とは映画「陸軍中野学校」などで共演する。「普段の雷蔵さんは郵便配達のおじさんかと思うぐらい地味な人。なのにメークをするとみるみる変貌する。冗談がお好きでね。でも、複雑な家庭環境だったせいか、『新平家物語』の演技を見ても両親を思う寂しさが出ていますね」
最後に雷蔵に会った時、家でフグをごちそうした。「その後すぐ亡くなったので、フグのせいかと気にしました」。雷蔵は最後に「新しい劇団を作りたい」と言っていたという。「彼は世界レベルの俳優です。今あんな人はいませんね」 (演出家・脚本家=大野裕之)
■小川眞由美(おがわ・まゆみ) 1939年12月11日生まれ、85歳。東京都出身。61年、文学座付属研究所に第1期生として入所。62年、「光明皇后」で初舞台。63年には「母」で映画初出演。70年台以降は映画・ドラマで活躍し、代表作は「女ねずみ小僧」や「アイフル大作戦」、映画「復讐するは我にあり」「八つ墓村」「鬼畜」など。