小川眞由美―テレビドラマ「女ねずみ小僧」や「積木くずし」、映画「鬼畜」「復讐するは我にあり」など数々の傑作に出演した名女優だ。近年は活動をセーブしているが、以前京都で野外劇を一緒に作った筆者がこのたび久しぶりに小川と再会。これまでの女優人生について縦横に語ってもらった。日本の芸能史の貴重な記録である。 (敬称略)
小川の父・丹真は、女優・田村秋子らが創立した劇団新東京に所属していた。田村の夫は小山内薫らと共に新劇を確立した築地小劇場を立ち上げた友田恭助で、丹真は新劇運動の中心にいた。
「父は泉鏡花に憧れて作家を志し、『早稲田文学』で入選し将来を嘱望されていましたが、戦争で負傷し障害が残りました。母・由喜世は、私が5歳の時から日舞やバレエを習わせました。覚えが悪いと定規で引っ叩く真面目な母でした」
父は娘に新劇女優になってほしかったが、当時は興味がなかった。「むしろ見るのが好きでね。旅まわりの芝居が疎開先の黒磯に来ると、テントをめくってタダで見ていました」。その踊りを覚えて弟に踊って見せたというから、やはり素養はあったわけだ。
「学生時代は文学の部活動に入りました。部室に山のようにあるスタインベックやバルザックをずっと読んでいました。永井荷風の日記の通りに生活するのが好きで、中古の車を買ってもらい、日記に出てくるそば屋を探して走りました」