1961年、小川眞由美は文学座付属研究所を受験し合格、第一期研究生として入所した。
「女優になりたいわけじゃなかったのですが、芥川比呂志さんに憧れてね。当時の女子は、日本人で初めてタイツを履いてハムレットを演じた芥川さんに夢中でした。合格した時、(父の所属劇団の創設者)田村秋子さんはとても喜んでくれました」
小川の記憶では、初舞台は小山祐士作の「日本の孤島」だ。
「杉村春子さんが、旅館のお手伝いさん役に新人のかわいい子を入れましょうとおっしゃって、私が起用されました。主人公に恋をして破れ、島を去るといういい役にしてくれました。最後に、『あんた東京に行くんかねえ』って言われて、『ありがとうござりゃん』と答えるセリフがものすごく褒められました。『ありがとう』は普通に言って、『ござりゃん』と泣きながら言う。〝新人らしからぬのが出た〟と劇評に書かれました」
文学座では杉村春子の後継者と見なされ、次々と主演に抜擢された。
「『シラノ・ド・ベルジュラック』で、杉村さんとダブルキャストで主演をさせていただきました。新人が主演とは生意気だと、みんなからは白い目で見られました。私が出番の時、杉村さんが見に来たので、若造の舞台をわざわざ見に来るなんてすごいなと思いました」