日本人、自炊を頑張りすぎ。ドイツ人の「あまりに簡素すぎるごはん」から学んだこと

ドイツに住み始めて早くも6年が経った。ドイツに住み始めた頃、制作や仕事で忙しく過ごす中で突き当たったのが、「自炊をするハードル」の問題だった。

コンビニはなく、外食はどれも高い

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Julian Hopff / Shutterstock.com

ドイツには、お弁当屋さんや財布に優しいファミリーレストラン、コンビニなどもない。パン屋はとても多いが、基本的には冷たいパンしか売られていない。レンジでの再加熱なども店舗で対応してないため、冷たいまま食べることがスタンダードだ。

KIOSKと呼ばれるコンビニのようなお店はあるが、どれも規模がとても小さく、販売されているのもコーラやポテトチップス、ビールとタバコなどのみだった。スーパーにお惣菜があることもほぼないため、日本にいた頃に昼食をコンビニや牛丼チェーン店などで済ませていた私は当初とても困った。

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外食をするときも、ビールとポテトなどで済ませてしまうことも多い

撮影:幸田詩織

外食はランチでも3000円程度になってしまうため、なるべく節約したい身としては外食は控えたい。しかし朝料理をしてお弁当を作れるほど時間に余裕もない……。ふだんの食事に困りだした頃、現地の友人らにどうしているか聞いたり、実際に一緒に過ごしドイツの食事風景を知る中で、かなり衝撃を受け自身の自炊観が変化した。

リンゴを切るだけで十分「ごはん」

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友人が大学に持ってきていた昼食を撮らせてもらった

撮影:幸田詩織

驚いたのは、朝はフルーツ、昼もカットフルーツやパン、夜もパンとチーズとハムを食べて終わり、という友人が多かったことだ。「夕食に温かい汁物を作ればいい方、冬は寒いためインスタントスープや簡単なものも作るが、基本的には冷たいものばかりを食べる」とのことだった。

ご飯をそんなもので済ませていいのかと衝撃を受けると同時に、私自身の中にあった「自炊のハードルの高さ」を感じたのだった。無意識のうちに、忙しくてもご飯をちゃんと作らねば……と思ったり、インスタント麺などで簡単に済ませてしまったときには、栄養バランスが悪いのではないか……と気を揉み罪悪感を抱えていたことに思い至った。

「自炊のハードル」を下げて分かったこと

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撮影:幸田詩織

しかし栄養が偏りすぎるのも良くない。ある程度バランスを取りたいときには、ドイツの人たちはどんなものを食べているのかが気になり、自宅の大家に聞いてみた。高齢で心臓を患った彼女は多くは食べられず、また栄養バランスも気にしなければならない。彼女がある晩の食事を教えてくれた。

そのメニューは、茹でたじゃがいも、スーパーに行くとたいてい売られている燻製の魚、ディル、ハーブバター、レモンと、とてもシンプルなものだった。スープなども基本的にはつけず、水とこれで充分だそうだ。できあいの燻製魚と芋を茹でるだけで夕食が完結するのは、とても手軽で良いことだと思った。

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知人宅でのホームパーティーでの食事

撮影:幸田詩織

もちろん品数多く栄養バランスを考えて作ることは素晴らしい。大家も、しばしば友人を家に招いてしっかり手の込んだ料理を作っていたりもする。しかし常にそれをする必要もなく、日常の食に凝りすぎないことが、続けやすい自炊のポイントなのではないかと感じた。自炊のハードルが下がったおかげで、毎日の食事に悩む時間が減り、気持ちの余裕が増えたのだった。

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