日本の若者は不幸じゃない
日本の若者は不幸なのか――? 秋葉原や地方での多くの事例をもとにして、現場から見えてきた若者のコミュニティや居場所の問題について考える。
日本の若者が不幸だと言われることは多い。だが、その実態はどうなっているのだろうか? 秋葉原の「ディアステージ」で注目を集める”もふくちゃん”こと、福嶋麻衣子と人気ブロガー・いしたにまさきが、秋葉原など全国各地で勃興している新しいコミュニティのかたちやビジネスなどを通して、日本の若者の現在について論じる。
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荒削りだけど、今後に期待できる本。
3.0文月煉タイトルにひかれて衝動買い。よく見てみたら、著者の福嶋さんは僕と全く同い年の1983年生まれ。そのせいか、社会に対して思っていることが僕ととてもよく似ていて、すごく親近感を覚えた。「日本の若者は不幸じゃない」というコンセプト自体もそうだし。強く共感したのは、「私たちの世代は不況ネイティブである」という考え方。「昔はよかったのに、今は不況だから不幸だ」とか言われたって、僕らそもそもバブル時代を全く知らないよ。だからそんなものと比べられたって困る。「今の若者は可哀想だ」なんて言うのは、そのバブル時代につくられたものさしを、今の時代にも当てはめて計ろうとするからじゃないのか。そして問題なのは、そうしたものさしが親たちの世代だけではなくて、そうした世代に影響を受けた若者たち自身の中にもあって、自分で自分を計って「不幸だ」と思ってしまう人が少なくない、ということ。だけどそうした人たちに対して、「若者たちは決して不幸じゃない」と著者は主張する。かつての価値観とは違って、若者たちは10年後20年後の安定や大きな収入がなくても、ちょっとした幸せ、「ちょい」の成功で満足できる。オタク文化やインターネットの中で「居場所」を見つけられた若者は、それなりに幸せであって、過去の価値観に照らし合わせて不幸を押しつける必要はないんじゃないか、という主張だ。僕自身、この主張に賛同するところは多々ある。僕の今の仕事量や給料を聞くと、眉をひそめて「それは大変だ」と同情してくれる大人たちがいる。その一方で、僕自身は自分がそうした大人たちに比べて不幸だなんて思っていない。確かに給料は多くないけれど、週末になればたくさんの友人を家に呼んで、あり合わせの野菜や肉を鍋に放り込み、少しずつ買い集めたお酒で安上がりな(でも美味しい)カクテルをつくって、しょっちゅうパーティーを開いたりしている。鍋といったら高級食材をなにか入れないと気が済まなくて、お酒は人につくってもらうもので……なんて思っているようなバブルの価値観を引きずっている「大人」の人は、きっとこの楽しさは分からないんだろうな、なんてむしろ同情したりするくらいだ。だけど、手放しでは賛同できない部分もある。とくに、将来のこと、具体的には子供のこと。「若者は、300〜400万の収入があればいいと思ってる」「女の子は、失敗しても家族という居場所が確保されている」と著者は言及しているが、子供を養い、長い期間育てていく、ということを考えたらそうはいかないのが現状だろう。それを詳しく考えずに「今の若者は不幸じゃない」といったところで、それは問題を先延ばしにしているだけだ。そういう話を、もっと細かく検討してほしかったのだけど、残念ながら上記のような主張が書かれているのは冒頭の導入部だけで、それ以降は福嶋さんが運営するアイドルライブバー「ディアステージ」と、各地で広がる「オタク文化」の紹介的な内容になってしまう。「若者のパワーをあらわす具体的な動き」として、アイドル、ゲーム、アニメ、をきっかけとしたオタクの若者たちの具体的な行動の例が挙げられているのだが、あくまで紹介にとどまってしまっているなぁ、という印象。初めからそういうクラスターに属している人は「そうだそうだ」と言うかもしれないけど、そういう文化に理解がない人がこれを読んでも、むしろ余計に奇異に見えるばかりで、「なるほど、確かに若者は不幸じゃないな」とは思わないんじゃないだろうか。全体として、もう少し冒頭の主張を掘り下げて、説得力のあるものにしてほしかったなぁと思うけれど、僕と同年代の人の社会に対する価値観や、上の世代から「不幸だ」と言われることへの違和感が、こうして本になることで少しでも伝わるきっかけになるのなら歓迎したい。著者たちの今後の活動に期待したいと思わせる本だった。
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幸せの基準は決められない
4.0more703学生時代をバブル期真っ只中ですごした私は、不景気な世の中を生きる今の若者は不幸に違いないと思い込んでいた。でも、この本を読んで、今の若者は決して不幸ではなく、未完成の自分たちを楽しみながら成長して行っていると分った。オタク文化もまだまだエネルギーの源になるし、学園祭的な未完成を楽しむ思考も十分ありで、これからの日本を支える才能がより生まれやすい社会になってきているようにも感じ、哀れみの気持ちから期待へと変わった。
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年配の人に読んでもらいたい!
5.0dark knight「ゴロウ デラックス」で放送されていて、興味を持ちました。若者の感覚で書かれていて、とても感心・共感できました。秋葉原まで会いに行こうかと思ったぐらいです。年配の人からすると、信じられないような感覚が書かれていると思うので、「最近の若いもんは・・・」と言ってしまう前に、目を通してもらいたいです。
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佐島楓
確かに、相対的に見れば「日本の若者は不幸じゃない」と思う。だけど、若者が若者じゃなくなったとき、どうか? と問われると・・・。オタク系の産業も、縮小・分散化は進むだろうし、未来はあまり明るくないのではなかろうか。 続きを読む▼
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たこやき
2章以降は、タイトル無関係。で、1章の内容だが、基本的に根拠のない決めつけばかり。そして、「新しい考え方が良い」「従来の考えはダメ」の二分論に陥っているように感じる。ネットやら、身近なロールモデルやらにしても、景気の問題の代替にはならない。その辺りを混同していることに疑問を感じる。2章は、ぶっちゃけどうでも良い。3章、4章は、タイトルと無関係。 続きを読む▼
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富士さん
改めて福嶋麻衣子さんの現在に至る過程や仕事をする上で考えを読みたくて手に取ったので、第2章は期待通りの内容でした。しかし、それだけでは売れないと思ったのか、ビジネス書のような現代論や若者論が前景に出されているのにはがっかりでした。そんな何十年後かにはゴミになっているだろう薄っぺらい評論より、福嶋さんの試みと経験の方がはるかに時代を超えた価値があります。いしたにさんがゴーストライティングしてでも、福嶋さんの伝記にして欲しかったものです。後半のアキバ論も自然にその中に入れることができただろうと思います。 続きを読む▼
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