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浅田真央【MAO RINK】で滑ってみた! ツルツルの新しい氷は「スピードが出て、スピンがよく回る」

野口美恵スポーツライター
オープニングセレモニーでは真央さんのスケート教室が開かれた (c)Yoshie

浅田真央さん(34)の夢だった「MAO RINK」が11月11日、東京・立川にオープンした。全国的に、維持費のかかるスケートリンクが閉鎖へと追い込まれるなか、かつてない豪華な設備を導入した破格の企画ともいえるスケート場だ。真央さんの思いが詰まったリンクを、体験してきた。

真央さんの選んだアート作品が飾られたエントランス (c)Yoshie
真央さんの選んだアート作品が飾られたエントランス (c)Yoshie

真央さんの動画が出迎えるエントランス

初滑りに赴いたのは、11月11日のオープン初日。11時の開業時間に合わせてリンクに到着すると、筆者の甘さを思い知らされた。入口には500人超の行列が出来ており、入場には1時間以上待つという状況。隣にある『ららぽーと立川立飛』のカフェで時間を調整することにした。

改めて入場できたのは、午後2時。エントランスを入ってまず驚くのが、“絨毯張り”の廊下だ。トロントのクリケットクラブやグラニッドクラブなど、北米の会員制セレブリティスポーツクラブでは絨毯のエントランスを見たことがあるが、日本では初だろう。

エントランスでは、LEDビジョンの真央さんが出迎えてくれる。

「こんにちは浅田真央です」という挨拶で始まり、手袋の着用などのルールを説明。まるで真央さんのテーマパークに来たような気分になる。エントランスの天井からは、真央さんが選んだというアート作品が吊り下げられ、日差しを受けてキラキラと輝く。スケート場というより、リゾートホテルのような洒落感が漂う。

オープン初日は、100台以上の祝花が飾られていた(c)Yoshie
オープン初日は、100台以上の祝花が飾られていた(c)Yoshie

オープンの日は、所狭しと、お祝いの花が並べられていた。エントランスから順に、山田満知子さん、佐藤信夫・久美子夫妻、伊藤みどりさん、佐藤有香さんと続き、合計100台以上。いかに真央さんが愛されているか、そして自身の名がつくリンクの設立が奇跡的な事業であるかを物語っていた。

入場料は、一般滑走は大人1800円、中学生以下1200円、スケート靴の貸出(600円)。ヘルメットのレンタルは無料だ。この日は、メインリンク(30×60m)とサブリンク(24×40m)の2面が開放されていた。2つのリンクの間のエリアに、更衣室や休憩室があり、行き来できる。またスタッフルームからは、両方のリンクが見える窓がついており、けが人や混雑状況などが確認できるようになっている。

更衣室は休憩エリア内にあるため、暖房が効いている。リンク内に更衣室があるタイプのスケート場だと、気温5度の中で凍えながら着替えるのだが、その点は安心だ。100円が返却されるロッカーのほか、貴重品専用ロッカーもある。さらに脱いだ靴を置く棚まであるので、運動靴が散乱することなく休憩室が片付いている。

窓からの木漏れ日に癒やされるサブリンク (c)Yoshie
窓からの木漏れ日に癒やされるサブリンク (c)Yoshie

桜並木を眺めるサブリンクは暖かく、氷も柔らかめ

まずは、真央さんが「一番こだわった」というサブリンクから。ドアを開けると、真っ白な世界が広がった。南向きの大きな窓から、日差しが差し、リンクの氷をキラキラと照らす。サブリンクとしては日本最大級のサイズで、真央さんは「サブリンクが大きいので、十分にアイスショーの練習もできます」という。

太陽光で照らされているぶん、氷の表面が柔らかく、エッジが噛みやすい。都内でいうと、神宮外苑アイススケート場くらいの硬さだ。さすがに表面がなめらかで、あっという間にスピードが出る。氷の吸い付きが良いので、ターンの1つ1つをしっかりと踏むことができ、気持ちが良かった。

サブリンクは、ジャンプ・スピン禁止とのことで、初心者や小さな子供にとっては、安全に滑ることができる。この日は、ヘルメットを被った子供が楽しんでいたほか、熟練したスケーターらはニースライディングやステップの練習をしていた。窓の外には桜並木。春になったら、花見をしながらスケートが楽しめるのかと思うとワクワクした。

黒基調のメインリンクは、硬さがありスピードが出る

一方、メインリンクはがらりと雰囲気が変わる。ドアを開けた瞬間、黒を貴重とした引き締まった空気感に包まれた。真央さんが、「メインリンクは、選手が練習に集中できるように、黒にしました」というスタイリッシュなデザイン。天井が高く、2階に1000席の観客席が設置されているため、練習場というよりは、スタジアムの臨場感。観客がいないのに、なぜか注目されているような気分になった。

メインリンクの氷は、日本では体験したことないほど、つるつるの氷。とにかく滑らかで、スピードが出る。表面がまだ踏み固められていないためか、滑るとパリパリと表面が剥がれていくような感触があった。自然と身体が運ばれていく感じは、ヨーロッパの硬水のリンクに似ていた。

室温も、窓がないぶんサブリンクより冷えており、氷面が硬く、適度な反発がある。そのぶん、ターンなどはしっかりと体重を乗せていかないと、上滑りしてしまう。しっかりとイン・アウトを意識しながら正確なエッジワークを心がけると、むしろスピードが出るため、演技しやすい氷だと感じた。ジャンプは、反発があるぶん、しっかりと高さがでる。選手によって好みはあると思うが、ジャンプは跳びやすい氷といえるだろう。スピンも、氷に埋まっていく感じがなく、高速に回転させてくれる。全体的に、競技者にとって滑りやすい感覚があった。

滑りやすくスピードの出るメインリンク (c)Yoshie
滑りやすくスピードの出るメインリンク (c)Yoshie

ニースライディングで止まれないほどツルツル

ちなみに整氷車は、国内では珍しいイタリア製の「Ice Wolf Pro」を導入。赤と白のスタイリッシュなデザインだ。多くのリンクで見かける、米国製のザンボニーや、カナダ製のオリンピアに比べると、やや大きく力強い印象。北京五輪や、今季のGPファイナルで使われていたメーカーである。

一方、11月末には、メインリンクを貸し切り、曲かけの練習もしてみた。よく滑るリンクたのめ、プログラムを通したときに、リンクの端から端までスムースに使うことができる。また氷面がツルツルなので、ニースライディングやランジで、ダイナミックに流れを作ることができる。むしろ、フィニッシュポーズにニースライディングを入れているスケーターが、ぜんぜん止まることが出来ずに移動してしまい、苦笑いしていた。

音響設備は、アイスショーで使用すること想定しているため、抜群の環境。他の練習リンクでは聞こえていなかった、ストリングスの小さな音や、ベースの重低音が響く。大会本番に向けて、しっかりと小さな音も拾いながら練習したいときには、最高の環境だろう。練習場として、そして発表会の会場として。色々と活用していけそうな『MAO RINK』だった。

各エリアの案内板などに「隠れ真央」が登場する (c)Yoshie
各エリアの案内板などに「隠れ真央」が登場する (c)Yoshie

「隠れ真央」を探すのも楽しみのひとつ

また、真央さんの「遊び心」を楽しめるのも、このリンクならでは。施設の壁や看板に『隠れ真央』がいる。何箇所あるかは秘密とのことで、来場した方はぜひ『真央探し』をしてみて欲しい。また施設の外壁には、コンパルソリー形の模様があしらわれている。ループやブラケットを組み合わせた幾何学模様のような図形だ。真央さんはコンパルソリー柄を氷上に描くのが好きなのだが、実はこれはとても難しい技術。いつかは身につけたいエッジワークである。また外壁には、金銀銅の色が使われており、「将来、大会で金銀銅を取れるような選手が育ってくれれば嬉しい」と真央さん。

真央さんのたくさんの夢が詰まった『MAO RINK』。子どもからトップアスリートまで、そして大人スケーターまで。たくさんの夢が育ち、羽ばたいていくことを期待したい。

オープン初日は500人以上の長蛇の列が (c)Yoshie
オープン初日は500人以上の長蛇の列が (c)Yoshie

コンパルソリー模様をあしらった壁 (c)Yoshie
コンパルソリー模様をあしらった壁 (c)Yoshie

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ありがとうございます。
スポーツライター

元毎日新聞記者。自身のフィギュアスケート経験を生かし、ルールや技術、選手心理に詳しい記事を執筆している。日本オリンピック委員会広報としてバンクーバーオリンピックに帯同。ソチ、平昌オリンピックを取材した。主な著書に『羽生結弦 王者のメソッド』『チームブライアン』シリーズ、『伊藤みどりトリプルアクセルの先へ』など。自身はアダルトスケーターとして樋口豊氏に師事。11年国際アダルト競技会ブロンズⅠ部門優勝、20年冬季マスターゲームズ・シルバー部門11位。

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