主張

宮台氏襲撃事件 容疑者死亡の失態反省を

宮台真司さんを襲撃した容疑者とみられる男の別宅を捜索する警視庁の捜査員ら=2月1日午後1時48分、相模原市南区(橘川玲奈撮影)
宮台真司さんを襲撃した容疑者とみられる男の別宅を捜索する警視庁の捜査員ら=2月1日午後1時48分、相模原市南区(橘川玲奈撮影)

東京都立大教授で社会学者の宮台真司氏が東京都八王子市の同大南大沢キャンパスで襲われた事件で、警視庁は41歳の無職の男を、容疑者死亡のまま、殺人未遂容疑で書類送検した。

男は事件の約2週間後に、犯行現場に隣接する相模原市の自宅近くの別宅で自殺していた。

どんな事情があれ、結果的に容疑者を死なせてしまったことは、警察の失態である。大いに反省しなくてはならない。

宮台氏は社会、政治、宗教など幅広い分野で言論活動を続けており、襲撃は、これらに対するテロリズムとの見方もあった。

男の自宅からは、父親が購入した宮台氏が共著者の書籍もみつかっていた。実家の物置から発見されたメモには「学者は一番上にいてはいけない人種」などと書かれていたが、宮台氏ら特定の人物を指した記述はなかった。結局、男の死亡により動機や背景の解明には至らずじまいである。

男の自殺が判明した際、宮台氏も「動機が分からず、釈然としない気持ちのまま先に進んでしまうのは残念」と述べていた。

謎を残す死は、容疑者を英雄視することにつながりかねない。男を起訴し、公判を通じて暴力に訴える愚かしさを、広く知らしめてほしかった。それが、容疑者の死亡を警察の「失態」ととらえる、第一の理由である。

また宮台氏の襲撃後、男が新たにナイフを購入したことも分かっている。自宅からは複数の凶器もみつかっており、早期の逮捕がかなわなかったことで男は再び宮台氏を襲ったかもしれず、別の標的が狙われる可能性もあった。

宮台氏は昨年11月29日夕、講義を終え、キャンパス敷地内を歩いていたところ、男に背後から殴られ、後頭部や首などを執(しつ)拗(よう)に切り付けられて重傷を負った。

警視庁は12月12日に男の防犯カメラ画像を公開した。男は、この公開捜査を受けて自身のノートパソコンを処分し、自殺したとみられている。今年1月27日に追加の防犯カメラ画像を公開したときには、男はすでに死亡していた。この捜査手法や経緯についても検証が必要である。

男の犯行が言論に対するテロリズムであれば、いかなる主張や動機があれ、到底許しがたい。容疑者死亡のまま書類送検という事件の幕引きは残念至極だ。

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