新春特大号 総力特集 円窓付土器の謎!専門家に訊いてみました!
2024年1月13日
新春特大号
『総力特集 円窓付土器の謎!専門家に訊いてみました!』
あけましておめでとうございます。2024年もよろしくお願いいたします。今回のコラムは、めちゃくちゃ気合が入ってますよ!
昨年の10月と11月のコラムで謎多き「円窓付土器」について書きました。今回はその続編となります。
(10月)極私的「円窓付土器」論!
https://plus.chunichi.co.jp/blog/saitou/article/591/11230/
(11月)見晴台考古資料館「円窓付土器 虫よけ(蚊いぶし)」説
https://plus.chunichi.co.jp/blog/saitou/article/591/11294/
前回分を読んでない人、読むのがめんどくさい人のために要約しますと。
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円窓付土器という上の画像のような土器があり、用途がよくわかっていないのですが、だいたい儀礼用じゃないかという説が多いです、しかし「蚊いぶし」説もあり、もしそうだとしたら土器の内部で火を使っている形跡があるのか?
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というのが前回までのあらすじです。
これらは文中で学術的に価値のないコラムだと断っていますが、それでも間違った情報を拡散してしまうのはまずいので、今回はさらに細かく検証していこうと思います。
とはいえ、私は考古学の門外漢、素人なので、今回は「専門家」の意見を訊いてみることにしました。
専門家に「円窓付土器に火の使用形跡はあったのか?」等、僕が疑問に思っていることをメールで送って回答してもらいました。
●南山大学人文学部人類文化学科 安達友隆さん
●あいち朝日遺跡ミュージアム学芸課の原田幹さん
●名古屋市見晴台考古資料館
●愛知県埋蔵文化財センター 調査課 永井宏幸さん
この4人の方に回答してもらいました。ご回答くださりありがとうございます。(見晴台考古資料館は館としての回答)
順番に回答を紹介していきます。順番は僕が訊いた順番です。
南山大学人文学部人類文化学科の安達友隆さんは「あいち考古学フェア2023」(2023年11月7日〜11月26日金山ビル11階 名古屋市都市センターで開催)で、
「東海地方における弥生特殊土器の使用用途 ー円窓付土器を事例にー」
という発表をしておりまして、その中に「道具として火を使った形跡はない」という趣旨の記述があったので連絡をとりお願いして、僕の疑問に答えてもらいました。
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●南山大学人文学部人類文化学科の安達友隆さんの回答
「見晴台考古資料館での展示で紹介されている『蚊いぶし』について、見晴台考古資料館の研究紀要にて論文となっています(伊藤厚史 2023『円窓付土器の用途』『名古屋市見晴 台考古資料館研究紀要 第17号』、名古屋市見晴台考古資料館、pp.73-82)。ちなみに、ここでは『蚊遣り』という名前で紹介されていますね。この内容についてですが、私は怪しい点が多いなという印象を持っています。その中でも一番私が気になっている部分が、斉とさんも気になっている『円窓付土器に火を使った形跡』です。
斉とさんのコラムに書かれていた疑問にそって、私がわかる範囲でお答えしますね。
◇質問(1):火を使ってたとしたら土器の内部に煤(すす)が残っているのではないか?煤の検出の調査は無理なのか?既に火を使った形跡が検出されているのか?
◆回答:「土器に煤が残ることはあります。火を使ったかどうかを見分ける方法について少し難しいことを書きますと、火を使った痕跡には、「一次焼成」と「二次焼成」というふたつの種類があります。「一次焼成」は土器を焼いて作る時に火を使うこと、「二次焼成」は土器が出来上がって実際に料理などの場面で火を使うことを指します。煤けは「二次焼成」にあたりますね。この「二次焼成」の痕跡が、私が見た中だとまだ円窓付土器から見つかっていません。
一次焼成の痕跡は写真で見られる黑い部分ですね。専門用語で『黑斑』と言います。この焼成痕については私以外にも何人か指摘している点でもあります。
ちなみに円窓付土器は 正確な数は把握されてはいないものの、日本でおそらく400点ほど見つかっているはずです (ちなみに現在私はまだ70点ほどの円窓付土器しか見れていません)。もちろん、円窓付土器はまだ多くが地中の中に眠っていると考えられているので、これから二次焼成の痕跡のあるものが見つかる可能性は全く否定することはできません。
しかし、その可能性は0に近いのではないかと個人的には思っています。ある研究者は円窓付土器の定義に二次的な加熱の痕跡が見られないことを盛り込んでいたりもしています(高橋信明 1995『円窓付土器考 ―その1―』『考古学フォーラム6』、考古学フォーラム、pp.66-72 )。」
◇質問(2):円窓付土器を作って蚊いぶしをする実証実験は既にやっているのだろうか?
◆回答:「私が知る限りでは行われていません。」
◇質問(3):
色々書籍やネットを見たかぎり儀礼用という説が多い気がするのですが、この虫よけ(蚊いぶし)説はどれくらい専門家の間で知られているのでしょうか?
◆回答:
「 私のまわりは知っている人が多いですが、この論文が発表されてまだ1年も経っていないことなどもあり、おそらく大半の弥生土器研究者はまだ知らない人が多いのではないかと思います。
ちなみに私の周りでお世話になっている研究者の皆さんも『円窓付土器蚊遣り説』には否定的な意見です。 意外な話かもしれませんが、円窓付土器の使い方を検討している研究はほとんどありません。円窓付土器の研究の多くは、円窓付土器を使って遺跡と遺跡の間の交流を考えるものばかりです。使い方はその研究のついでに少し考える程度なので、そもそも円窓付土器の使用 用途に注目している研究者はあまりいないのではないかなと思っています。
結論をまとめさせてもらうと、『円窓付土器蚊遣り説』は火の利用についてなど多くの点で怪しい部分があり、そのため私はこの説について完全否定派です。むしろ斉とさんがだされた『壺が肉体の比喩で、円窓は魂が天国に抜ける孔』とする説の方が近いのではないかと思います。実際、とある研究者は『二つの孔は魂が関係しているのではないか』とお話していました。まだ謎が多い土器です。色々な人が自由に発想を巡らせることができるところに、またこの土器の魅力が詰まっているのではないかと思います。」
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安達友隆様、ご回答くださりありがとうございます!一次焼成二次焼成等教えてくださり大変参考になりました。
回答の中にある『円窓付土器の研究の多くは、円窓付土器を使って遺跡と遺跡の間の交流を考えるものばかりです。』というところに、学問、学術的に考えれば当然そうなるだろうな、と思いました。
回答冒頭で紹介されている『名古屋市見晴 台考古資料館研究紀要 第17号』のことは知らなかったので、私、急いでこの本を入手しました。(下記画像)
この紀要の内容については後に触れようと思います。
次はの回答は、あいち朝日遺跡ミュージアム学芸課の原田幹さんの回答です。
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