見晴台考古資料館「円窓付土器 虫よけ(蚊いぶし)説」
2023年11月22日
前回のコラムの続きとして今回も「円窓付土器」 について書いていきます!
名古屋市南区、笠寺公園に見晴台考古資料館という素晴らしい資料館があります。そこにも円窓付土器が展示してあるということで見に行ってきたのですが、その円窓付土器の展示キャプションになんと、
_______
『円窓付土器の用途を考えた!!
丸い穴のあいた円窓付土器は、どのように使ったのか、わかっていません。
300個を超える出土がある朝日遺跡(愛知県清須市)の調査事例から、屋外作業を行う時に虫よけ(蚊いぶし)に使ったのではないかと考えました。』
___キャプションより引用___
と書いてあったのです。虫よけだったのか!??
これは見晴台考古資料館の「円窓付土器」の展示のキャプションなので、プロ、専門家の意見です。
_「300個を超える」
__「調査事例」__
と、あります。
これでは前回のコラムで、火を使う道具説を全否定した自分の立つ瀬ないです。ということで前回の自分の説は撤回いたします!すみませんでした。
さらに一緒に展示してある「火もらい」と「蚊いぶしをしてる模型」のキャプションを引用いたしますと、
___
『火もらい
江戸時代の陶器で、竈の火が消えると、隣家にこれで火をもらいました。円窓付土器の穴は、火もらいの穴とほぼ同じ大きさです。』
___火もらいキャプションより引用___
(※ちなみに竈の読みは「かまど」です。自分は読めませんでした。)
___
『夏の復旧
夏の大雨で壊れた濠を直してます。
虫除けに円窓付土器(蚊燻し)で煙を焚いていたと想像しました。』
________蚊いぶしをしている模型のキャプションより引用___
この展示を見ると円窓付土器を「蚊いぶし」として使っている様子の模型を作ったり、現物の「火もらい」を置いて円窓付土器と比較するキャプションをつけたり、この説にかなりの自信を持っていて、なにか根拠になる証拠をつかんでいるのではないかと思いました。
ただ、素人としては前回も書きましたが疑問点があります。
●(1)火を使ってたとしたら土器の内部に煤(すす)が残っているのではないか?煤の検出の調査は無理なのか?既に火を使った形跡が検出されているのか?
●(2)円窓付土器を作って蚊いぶしをする実証実験は既にやっているのだろうか?
●(3)色々書籍やネットを見たかぎり儀礼用という説が多い気がするのですが、この虫よけ(蚊いぶし)説はどれくらい専門家の間で知られているのでしょうか?
という疑問です。(3)はともかく(1)と(2)の疑問がクリアできれば、この蚊いぶし説を支持したいです!
ただ、既に論文等があり、僕が知らないだけということも十分考えられます。
このあたりは専門家に聞いてみたいところです。
しかし、僕もだんだん蚊いぶし説が本当だと思えてきました。
「そういや〜陶器でできたブタの形の蚊取り線香おくやつみたいだな〜、あれも大きな穴があいてるし、確かに蚊は嫌だよ、いぶしたくなるよな」てな感じで。
「火を使う道具」という説はありましたが、『虫よけ(蚊いぶし)』という説は、ネットでは見つからない情報だったので、見晴台考古資料館に足を運んで本当に良かったです。
私は最初この「蚊いぶし」説を疑っていたのですが、このコラムを書く上で調べていくうちに「儀礼用説」より、この「蚊いぶし」説の方に気持ちが傾いております。それは「墓域とその周辺から多くみつかっている」ということと『虫よけ(蚊いぶし)』はどう関係してくるのかと考えたとき、死体にわいた虫や、死体の匂いを消すため、と考えるとつじつまが合うからです。あと、蚊です、蚊は「人間を殺してるランキング1位」という記事を良く見ます。蚊は生死に関わる重大な問題なので儀礼よりも生存という意味で重要なはず。あと刺されて痒いのはイヤだ。と、かなり理由がはっきりしてます。
今のところ専門家の推測は前回紹介した、
●あいち朝日遺跡ミュージアム学芸員の原田幹さんの
『儀式の際に神に捧げる供物を入れる土器。他の人に何を入れているかをあえて見せ、見栄をはっていたのでは?』
と今回の
●見晴台考古資料館
『屋外作業を行う時に虫よけ(蚊いぶし)に使った』
個人的には、この二つの説を代表的な専門家の説とします。あくまでも素人の僕個人の解釈です。
さらに、ネットで『円窓付土器』について名古屋市博物館のHPの『高蔵遺跡の円窓付土器』(西澤光希)から以下引用いたしますと。
_____
『(略)___墓への供献土器(きょうけんどき)であった可能性が一つ想定できる。______
_____(略)__一方で、環濠や住居跡、貝層や土坑などからも出土し、他の日常的な土器類と混在する場合も多い。一定の目的で使用した後、不要となった土器を環濠などに廃棄したようである。こうした出土状況から、円窓付土器の使用頻度は高く、日常的・継続的な役割があったことも想定されている。___(略)
(略)___円窓付土器に関わる諸問題については推定の域を出ていない。___(略)』
名古屋市博物館のHPの『高蔵遺跡の円窓付土器』リンク
https://www.museum.city.nagoya.jp/collection/data/data_52/index.html
______
僕の前回の妄想の説は、大雑把に分類すると、この上記の
『供献土器(きょうけんどき)』
ということになります、この解説の中にはさらに、
『円窓付土器の使用頻度は高く、日常的・継続的な役割があったことも想定されている』
と書いてあるので、『虫よけ(蚊いぶし)』は「日常的・継続的」なものとして分類できるかもしれないです。
さらに私は「蚊いぶし」というワードで色々検索しました。
すると「蚊いぶし」のための道具「蚊いぶし」が「岩倉市 民俗資料データベース」の中にでてきます。
写真の著作権を侵害しないように、僕が模写したのが上の画像です。本物の写真が見たい人は、下のリンクをから飛んで見てください。
岩倉市 民俗資料データベース
__蚊燻し(蚊いぶし)
___『中に入れた干草を燃やしその煙で馬・牛小屋の蚊を燻して駆除するための道具である。』___岩倉市 民俗資料データベースより引用
リンク
https://www.city.iwakura.aichi.jp/bunkazai_db/0000001832.html
この「岩倉市の蚊いぶし」が、いつの時代のものかはわかりませんが、「蚊いぶし」として作られた道具なので、構造的には蚊いぶしとして最適な形なはずです。「火もらい」は蚊いぶしの道具ではないので、この「岩倉市の蚊いぶし」と「円窓付土器」を比較してみるのも良いかもしれません。
他にも「蚊いぶし」と「円窓付土器」との比較のために「香炉型土器」と「瓦質土器蚊遣り豚」についての記述の引用とリンクを下記に紹介いたします。
______
●文化遺産オンライン
香炉型土器
____『__(略)香炉形土器と呼ばれますが、器の中で何かを燃やしたようなあとはなく、実際は何に使われたのかわかっていません。__(略』____
__文化遺産オンラインより引用__
リンク
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/492696
__________
文化遺産オンラインの香炉型土器に関する記述で
__『器の中で何かを燃やしたようなあとはなく、』__
と書いてあるのが気になります、やはり土器の中で何か燃やしたのか、燃やしてないのかが、わかるということなのでしょうか??
_____
●温故知新しん!じゅく散歩 新宿文化観光資源案内サイト
瓦質土器蚊遣り豚
____
構造:高さ23.0cm 長さ34.8cm 幅-
素材・仕上げ等:土器
年代・江戸時代
____「平成元(1989)年6月から10月にかけて発掘調査を行った内藤町遺跡1次調査で発見されたC-124号遺構から出土した。
この蚊遣り豚は、瓶形の瓦質土器を横位に用い、上部を顔に、上側面に耳と尻尾、下側面に足を配している。現在のものに比べ、遥かに大きく、胴長となるのは、萱、杉・松の葉や皮、籾殻などを燻すためである。(略)__」
_温故知新しん!じゅく散歩 新宿文化観光資源案内サイトより引用__
リンク
https://bunkakanko-annai.city.shinjuku.lg.jp/shosai3/?id=J034
この「瓦質土器蚊遣り豚」の形も、いぶすための機能の構造として気になります。
でここで、話はいきなり飛びますが、また私の妄想の円窓式土器は〇〇説を書かせていただきます!
それは
「蚊いぶし」と「供養用」兼用説
です!
墓にお線香をお供えするみたいな感じの煙をモクモクさせる儀式用と「蚊いぶし」の兼用という説です。もちろん単なる僕の妄想です。
しかし
『__円窓付土器に関わる諸問題については推定の域を出ていない。_』__(名古屋市博物館のHPより引用)__
ということで、わからないことの多いミステリアスな「円窓付土器」については引き続き注目していきたいと思います!
※注意:僕は考古学の素人で、このコラムには学術的な意味は全くないので、そこんとこよろしく!
皆さんもぜひ名古屋市見晴台考古資料館に行ってみてください。とても素敵なところです。
●名古屋市見晴台考古資料館 リンク
https://www.museum.city.nagoya.jp/miharudai/index.html
✴︎補足とリンク
●見晴台考古資料館の使用許可をもらって撮影した画像を掲載しております。
●前回のコラムのリンク
『極私的「円窓付土器」論!あいち朝日遺跡ミュージアムに行ってきました!』
https://plus.chunichi.co.jp/blog/saitou/article/591/11230/
●文化遺産オンライン
円窓付壺
__「__弥生時代には煮炊き用の甕、貯蔵用の壺、盛り付け用の高坏と用途別の土器が作られた。弥生時代中期後葉の東海地方では、壺や甕の胴部に大きな円い孔をもつ円窓付土器(まるまどつきどき)が分布する。これらは煮炊きや貯蔵には不向きなため、儀礼のために作られたと考えられている。___」__文化遺産オンラインより引用
文化遺産オンライン 円窓付壺 リンク
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/565660
おまけ
今年、2023年6月30日~8月27日愛知県美術館で開催されていた「幻の愛知県博物館」にも「円窓付土器」が展示されてました、下の画像の図録にも「円窓付土器」画像が掲載されております。(展示されていた円窓付土器は図録の画像とは違うもののようです)
この図録、まだ愛知県美術館のショップで販売しておりました。僕は展示は見そこねたのですが、「円窓付土器」が載っているという理由でこの図録を買いました。