働きながら制作し続けるために
2021年12月30日
働きながら制作し続けるために
2021年、今年最後のコラムです。
先日、ある有名な美術作家のインタビューを偶然目にして読んだのですが、インタビュアーが「若い作家に向けてアドバイス的なことはあるか?」というような質問をしていて、
『そんなものはない、どんなときも作ることをやめない、作るのをやめることができないのが作家だ』
と、大まかにいうと、そんなような回答をしておりました。
これは全くその通りであるし、他の作家のインタビューでも似たような回答がなされているのを読んだことがあります。
僕も本当にそう思うのですが、とはいえ、この作家は売れている作家で、コマーシャルギャラリーにも所属しております。そして、インタビュアーがインタビューして記事にしちゃうくらいの作家なので、僕のような売れない作家としては「そりゃ売れてる作家はそういうよね~」と、妬みで思ってしまったりしてしまうのです。
このコラム、このままだと人のことをディスってるだけみたいになってしまうので、自分だったらどう回答するのか、考えてみました。本当に売れない作家の回答なので、何の役に立つかわかりませんが、書いていきます。おじさんの老害アドバイスだと思われるかもしれません。
まず、学生時代から売れて、そのまま専業作家、プロになれる才能のある人は、それはそれで良いです。コマーシャルギャラリーの所属作家でもなく、厳密に言ったら、アマチュアで才能ゼロの僕のような作家はどうやって活動を継続していくかということです。
もっと具体的にいうなら
「週に6日、5日働いて空いてる時間や休みの日に制作する」
ということなのですが、これは美術作家の活動だけで収入を得て生活している作家より制作時間が圧倒的に少ないということです。
ここからは、僕の実体験に基づいて話していきます。
例えば、朝9時から夕方6時まで働いて家に帰ってから制作する、残業のある日はどうする?とか、疲れで仕事の後に制作できないよ、とか、休みの日に制作するか、とか、
ちょっと正確な数字はわかりませんが、仮に月に休みが4日だとして12ヶ月で48日間が制作にあてることのできる日数になります。これは大げさじゃなくて、本当にそんな感じです、というか、実際はもっと少ないです。これに毎日、仕事が終わったあと毎日2時間制作すると仮定して、月〜土の6日で12時間、1ヶ月で48時間、これを2日分として、12ヶ月で24日で、先の48日と合わせると72日という感じですが、休みの48日も夜は寝るので半分の24日とすると、1年間で合計48日間くらいが作業できる時間になります。これは机上の空論なので、実際には残業があったりして毎日2時間作業ができるわけではありません。
ここでの大きな問題は連続して作業できないという点です
2時間連続して作業するのと1時間を2日に分けて制作するのは、同じ2時間でも違うということです。
仕事が終わって夜20時に家につき、ご飯を食べて洗濯して風呂に入って、22時から制作し始めて24時に寝る、とか、制作してると作業を途中で止められなくなって徹夜して、次の日の仕事に影響したり、とか、いろいろあります。
作る作品の素材で、乾燥時間等が必要なものや、逆に乾燥する前に形を作らないといけないものとかもあります。あと、夜中に音を出すと近所迷惑になるという問題もあります。
制作時間を増やすために、風呂から上がったらパジャマじゃなくて服を着て寝て、朝起きたらそのまま仕事にいくというような努力をした時もありました。これは本当に数カ月やりましたが、グッスリ寝られなくて疲れがとれないのでやめました。
そして、いろいろ試行錯誤して気がついたのは、
☆頭の切り替えが上手かどうかが重要だ
ということです。
世の中には切り替えが上手な人がいます。そういう人は何も問題ないと思います。しかし、頭の切り替えができない人、僕も切り替えができないのですが、そういう人は、仕事をひきずったまま家に帰り、制作しようと思っても、昼の仕事から頭が切り替えられず、やっと切り替わった頃に寝る時間になり、次の日の仕事中に制作のことが頭に残って仕事でミスをする、というようなことになってしまいます。
で、僕の解決策ですが、
☆スケジュールを書く
です。
「何だ、そんなことかよ」と思うかもしれませんし「そんなこと既にやってるよ」と言われるかもしれません。
僕は若い頃、このことになかなか気がつけませんでした。スケジュールを書く時間があったら、その時間を制作にあてた方が良いと思ってしまったからです。しかし、やっていくうちにスケジュールを書くしか、他に方法がないという結論に至りました。ここでいうスケジュールというのは、予定だけでなく、進捗状況を書いていくことも含みます。
進捗状況やスケージュールを書くことで頭の切り替えができるようになります。進行内容を忘れてしまっても、記録があれば大丈夫だと思うことで、制作から仕事、仕事から制作へと切り替えられるのです。分断され細切れになった時間と時間を接続して、ブランクを埋めることができます。
また、通勤中とかちょっとした空いた時間にスケジュールを見たり書いたり、アイデアをメモしたりすると、「これも制作だな」ということで、「今日は何も制作ができなかったな〜」という気持ちにはなりません。制作進行の真っ只中なのだと自覚できます。
これにより「忙しくてやりたいことが何もできてない」というネガティブな気持ちから解放されます。
今では場合によっては、制作時間よりスケジュールを書く時間の方に多く時間をかける時さえあります、一見、本末転倒に思うかもしれませんが、しかし、そうしなければ結局、トータルで余計に時間がかかってしまうと経験から学んだのです。
スケジュールを細かく書いても予定通りにいかない時の方が多いです。それでも、最初に書いたスケジュールが目安になります。それがなければ、予定の変更に対応できないのです。
制作のスピード配分の目安にもなります。徹夜してペースを崩したりしないよう、作業をセーブしたりもできます。
さらにいうと、スケジュール帳は市販のものではなく自分で自分専用のオリジナルのものを作って使用してます。市販のものを2冊買って仕事と制作の両方書いたものと制作だけのスケジュールを書いたものと分けて、使ったりしていたこともありました。それでも人それぞれの使いやすさがあるので、やはり自分で自分専用のものを作るのが一番良いと思います。
現在、僕はパソコンで作ったスケジュール表をプリントアウトして壁に貼っています。作例としてお見せしたいのですが、知人がそれを見て「気持ち悪い」「怖い」と、もろ不快感をしめしたので、公にお見せすることができません。すみません。
上の画像の200年カレンダーは、A3サイズに印刷して、個展で無料配布したものです。これは年号を見るためてはなく、本当にスケジュールを考える一環として、考えたもので、自分でも使っています。
配布した際に「私も同じようなものを作って使っていたよ」という共感の声を数名からいただきました。ギャグで作ってると思ってる人もいたみたいでしたが、本当に自分にとって必要だと思って作ったものです。
この上の画像は、パソコンではなくキングジムのポメラという文字を打つ専用の商品で、なんか宣伝みたいになってしまいますが、これで移動中や出先で原稿を書いたりしています。
今回のコラムは空いた時間や寝る前に布団の中でスマートフォンのメモ機能で書いたものを、パソコンにメールして完成させてます。もっと移動中に制作できる小さくてよい道具がないのか、時々探しています。もしくは、自分で発明できないかまで考えたりもします。
このように自分に合う道具を活用するのも、時間を有効に使うために必要です。もっと大きくいえば、制作環境を整えるということです。
最後にまとめますと、僕が考える働きながら制作していく方法は
●スケジュール(予定と進捗)を書く
●オリジナルのスケジュール帳(表)を作る!
です。僕がインタビューされて若い美術作家へのアドバイスを求められたら、こう答えますよ!
そして、人生は仕事だけでなく、家事、恋愛、結婚、離婚、婚活、出産、育児、親の介護、病気、ケガ、友との別れ、他にも予想外の出来事、本当にいろいろなことがあります。これらと制作を両立させるということは、なかなか難しいと思います。「いや、そんなことない」という人もいますが、少なくとも僕は仕事と制作の両立に悩みました。
よく考えれば、別に無理に制作を続けることもないし、美術作家を続けることだけが大切なことではありません。むしろ、美術作家であることは、どうでも良いことかもしれません。途中でやめて、また再開しても良いし、それぞれの勝手です。
なんだか書いていて、よくわからなくなってきたので、
それではみなさん良いお年を!