2021年はガルゲンベルグのヴィーナスブーム到来?!
2021年1月28日
2021年の初コラムです。
本コラム、これからブームになりそうなものを色々(クリケットやチェス等)予想してきました。
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クリケットブームの予想は、プロ野球選手だった木村昇吾選手、山本武白志選手がクリケット選手になったり、チェスの方は天才チェスプレーヤーが主人公のドラマ「クイーンズ・ギャンビット」がNetflixで放送されたり、「鬼滅の刃」の主人公が着る羽織の柄がチェス盤の模様に似ていたりと、見事にブームを的中(?)させてきました。「おいそれはブームとは言わないだろ!それに鬼滅の刃は関係ないだろ!(怒)!!」とお叱りを受けそうですが。
そんな僕が今年ブームになると予想しているもの、それは
「ガルゲンベルグのヴィーナス」です!
なぜブームになるのか?その理由を説明する前に「ガルゲンベルグのヴィーナス」とは何かを少し説明しますと
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「オーストリアのガルゲンベルグから出土したヴィーナス像で、緑色の粘板岩で作られた約3万年前のもの。明らかに踊っている女性を模している。」
引用元「人類進化大全―進化の実像と発掘・分析のすべて」 (悠書館 改訂普及版 2012/7/1)
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ということで、ガルゲンベルグのヴィーナスは3万年前の美術作品です。
トップ画像は、毎度毎度のことながら著作権法違反にならないように、僕が写真を見て紙粘土で作った偽ガルゲンベルグのヴィーナスです。だいたいこんな感じの形です。ただ寸尺も実物と全然違いますし、あんまり似てないので、「Venus of Galgenberg」というワードで検索してみて本物の画像をご確認ください。本物はもっとスリムです。(『ガルゲンベルグのヴィーナス』とカタカナで検索するより英字の方がたくさん情報出てきます)
WikipediaのVenus of Galgenbergリンク
https://en.wikipedia.org/wiki/Venus_of_Galgenberg
下記サイトにガルゲンベルグのヴィーナス画像が沢山載っています。この中で、ワインのラベルのデザインとして使用されている画像も紹介されています。
https://donsmaps.com/galgenbergvenus.html
★なぜガルゲンベルグのヴィーナス像のブームが来るのか?
私は、このガルゲンベルグのヴィーナス像がブームを巻き起こすのではないか、と思っています。
Tシャツにプリントされてセレブが着てインスタにアップされたり、キャップが発売され高額な値段で転売されたり、クッキーになってコンビニで大人買いされたり、映画化されて興行成績ランキングを塗り替えたり、もうすごいことになるかも。
「あんたの考える、ブームとかヒットのイメージが平成、いや、昭和で止まってんだよ!薄っぺらいんだよ!」と怒られそうですが。
ヒットすると考える理由は3つ
★(1)「古いものに価値がある」
★(2)「踊っている人に惹きつけられる」
★(3)「作品の芸術性が高い」
これを順に説明していきます。
★ポイント1「古いものに価値がある」
普通に考えたら、例えば電子レンジでも掃除機でも最新式の方が良さそうですよね、しかし、美術作品の場合、矛盾するようですが「新しいものが良い」ということは「古いものが良い」ということになるのです。
『あ!それってもしかして「温故知新」古きをたずねて新しき知る!ですか?』
というふうに言われそうですが、それも当たらずとも遠からずです。
「じゃあどーゆーことなんですか?」
キーワードは、批評家や学芸員が作家や作品をディスるときに使う魔法の言葉
「そんな作品 もうあるよ」です。
「そんな作品、既に60年代にあるよ」とか、「過去の〇〇に似てるからダメだね」とか。これは新規性に価値があるということを突き詰めていくと、逆転して実は古いものに価値があるということになってしまうのです。
つまり、ガルゲンベルグのヴィーナスに関して言えば、
「そんな作品、3万年前にもうあるよ!」
ということです!
そういう意味で、ガルゲンベルグのヴィーナスは最強なのです!「いやもっと古い作品があるだろ、ホーレ・フェルスのヴィーナスとか!」というツッコミが入りそうですが、ガルゲンベルグのヴィーナスの魅力は古いだけじゃぁ〜ありません。次のポイント2をみてください。
★ポイント2「踊っている人に惹きつけられる」
先の人類進化大全からの引用でも「踊っているように見える」ではなく「明らかに踊っている女性」と書いてあります。かなり強気の記述です。
この記述を目にしたとき、ABBAの大ヒット曲「ダンシング・クイーン」が頭の中で鳴り響きました。「そんなのあんただけだよ!」と言われそうですが、2013年に書かれた下記リンクの『花を想う空の間で』というブログに同じ感想(ABBAのダンシング・クイーンが聞こえる)がすでに書かれていました。しかもこの方は、博物館に展示してある実物を見て、そう思ったと書いてあります。
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<花を想う空の間で>『ダンシングクイーン(ウィーン自然史博物館)』2013年2月5日
http://iiyot.blogspot.com/2013/02/blog-post.html
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たぶん多くの人が、この像から「ダンシングクイーン」を連想するということだと思います。
つまり、ダンシングしているヴィーナス→踊っている女性→ダンシングクイーンという流れで大ヒット曲を連想させるから、ヒットしてブームがくる(はず)。
いつの時代も踊っている女性は大人気。「おい、それ女性差別やないか」という意見もあると思いますが、踊っている男性も大人気なのです。いつの時代も性別に関係なく、踊っている人は大人気!ということです!
ただ「明らかに踊っている」と書いてあるのですが、知人にガルゲンベルグのヴィーナスの画像を見せて「何してるように見える?」と聞いたところ
「え?手をあげてる人?」
と返ってきました。踊っている人だと答えた人は0人でした。
聞いたのは知人2名なので統計のデータとしてダメダメですが、しかし普通に考えて何故これが踊っていると断言できるのか?
「ハッ、待てよ。も、もしかして、このポーズは」
その瞬間、あの超有名な映画のメインビジュアルが頭に浮かびました。
「サタデーナイトフィーバー」です!
この手をあげてるポーズは、ジョン・トラボルタのポーズだったのです。指の感じまで似てます。これが「明らかに踊っている」という根拠なのです、たぶん!(あくまでも私個人のデタラメな推測です。ちなみにこの映画の舞台のメーンはディスコです)
つまり、大ヒット映画「サタデーナイトフィーバー」を連想させるので、ブームがくる、ということです。
そして次のポイント3です。
★ポイント3「作品の芸術性が高い」
なぜ、芸術性が高いと言えるのか?同じく古代のヴィーナス像である「ヴィレンドルフのヴィーナス」と比較しながら、説明していきます。
まず、僕が何度もこのコラムで紹介している本「西洋美術史」(美術出版社 2002年増補新装)
この本の「原始美術」の項目では「ガルゲンベルグのヴィーナス」は紹介されていません。旧石器時代の動産美術として紹介されているヴィーナス像は「ヴィレンドルフのヴィーナス」です。スティアトパイグス型女性石偶として、図版で紹介されています。
旧石器時代のヴィーナスといえば、この「ヴィレンドルフのヴィーナス」が特に有名で人気があると思います。その証拠にレプリカや石膏模型等の商品が多数あり、ネットで簡単に手に入ります。(上記画像は筆者が購入したヴィレンドルフのヴィーナスの模型)世界史の教科書等で見たことがある人も、多いのではないでしょうか?
この「ヴィレンドルフのヴィーナス」の年代については、書いてあるものによって記述が違います。先の「西洋美術史」にはBC15000-1000、Wikipediaには24,000年から22,000年前と書いてありました。この像を所蔵しているウィーン自然史博物館のホームページには29,500年前と書いてあり、これが一番信用できそうです。いずれにしろ、ガルゲンベルグの方が古いようです。
作られた理由について「生物の進化大図鑑」という本では
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「豊穣や多産を願うシンボルかお守りあるいは、社会的地位のしるし、地母神の肖像、集団間の交易品といった解釈をされてきた」__
引用元「生物の進化大図鑑」(河出書房新社 2020.6.30)
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と書いてあり、だいたい同じような説が他の本にも書いてあります。特に「豊穣や多産を願うシンボル」という説をよく目にします。ポッチャリとした体型がその理由のようです。
「豊穣や多産を願うシンボル」は石器のような道具とは違い、「実生活において直接的な機能を持たない」ものです。この「実生活において直接的な機能を持たない」は、先の「西洋美術史」からの引用になります。
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「今から約三万年前になると実生活において直接的な機能を持つとは考えられない。つまり美術的作品が現れるようになる」
引用元「西洋美術史」(美術出版 2002年増補新装)
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これから考えるに「実生活において直接的な機能を持たない」というのが、この「西洋美術史」の考える美術的なものの定義になると思います。
しかしながら「豊穣や多産」自体は実生活と関係があり、それを「願う」ということは「直接的」ではありませんが、「実生活への機能」と考えることができます。言ってみれば「実生活における間接的な機能」です。
それに対して「ガルゲンベルグのヴィーナス」の「踊る」というのは、「実生活に直接的な機能を持たない行為」つまり「美術的な行為」の像と言えます。
『いや、この像のモデルになった女性の踊りも、豊穣や多産を願う祈りの踊りかもしれないから、結局ヴィレンドルフのヴィーナスと同じ間接的な機能だろ』という人もいるかもしれません。
ちなみに「ガルゲンベルグのヴィーナス」についての本では
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「儀式で用いられたか宗教的な役割があったと考えられている。」
引用元「生物の進化 大図鑑」(河出書房新社 2020.6.30)
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と書いてあります。
しかし、仮に豊穣や多産を願うための宗教的な踊りだとしても
●「ヴィレンドルフのヴィーナス」:(1)「豊穣や多産を願う像」という1段階
●「ガルゲンベルグのヴィーナス」:(1)「豊穣や多産を願うための踊り」→(2)「踊る像にする」2段階
2段階ふんでいる「ガルゲンベルグのヴィーナス」の方が、より間接的で実生活から距離が遠いと考えることができます。このことにより「ガルゲンベルグのヴィーナス」の芸術性が高いと考えたわけです。
「いやいやいや、それは違う。ヴィレンドルフのヴィーナスの方が芸術的だよ!願いを抽象的に考えてイメージしているのだから、それに2段階ふんでる方が願いが薄まる感じがするだろ!それに、その考えだとコミケの二次創作同人誌の方が原作より芸術的ということになるだろ!」
と言われそうです。
実は、僕は「二次創作の方が一次創作より芸術的」だと考えているところもあります。その方が「意味(例えば実生活への願い)」から、より遠ざかるからです。しかし、この考え方には問題があります。一次創作がなければ二次創作が存在できないという点です。
「おいおい、根本的に例えが間違っているよ。踊る人と踊る人をモデルにした像なら、アイドルとアイドルのフィギュアだろ。その場合、アイドル本人の方が人形より価値あるだろ!」
「いや、アイドル自体が価値があるとしても作品として存在しているのは、その複製物の歌の音源CDや写真集だろ!だから踊る人より人形の方が芸術なんだよ!」
『いや待てよ。アイドルという例えも間違ってるよ。「ヴィレンドルフのヴィーナス」が「神の像」で、「神に祈るために踊る女」をモデルにしたのが「ガルゲンベルグのヴィーナス像」という例えの方が良いだろう。「神」と「神に祈る人」という比較になるはずだ』
『いや違う。ヴィーナスというくらいだから、神に祈る人じゃなくて、ガルゲンベルグも神様だろ!「踊る神の像」だろ』
ということで、頭の中の自分VS自分の討論会に収拾がつかなくなってきましたが、このように色々考えさせてくれる、問題を提起してくれてるところが、芸術性が高いということなのです!と適当に誤魔化して終わりにします。
とにかく2021年は「ガルゲンベルグのヴィーナス」ブームがくる!
※これを読んでいるガチャガチャメーカーの社員の方がいましたら、ぜひ、ガチャガチャのキーホルダーフィギュアとして商品化してください!(ただ単に私が個人的に欲しいだけですが)
「ヴィレンドルフのヴィーナス」「ガルゲンベルグのヴィーナス」「ホーレ・フェルスのヴィーナス」「ドルニーヴェストニチェのヴィーナス」 の5種類で古代ヴィーナスシリーズでお願いします。現代の「動産美術」とは、まさにガチャガチャのキーホルダーフィギュアです。博物館のミュージアムショップに卸せますよ。
(注意:今回のコラムの筆者個人のデタラメな解釈なので学術的にはなんの意味もない冗談なのでよろしくです!旧石器時代のヴィーナスの体型違いは、気候の影響だという説もあるようです。興味のある人は調べてみてください)
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補足と文中で引用した資料、参考文献
補足
ABBAの「ダンシングクイーン」も映画「サタデーナイトフィーバー」も知らないという方に簡単な説明!
Wikipediaより引用
「ダンシング・クイーン」(原題:Dancing Queen)は、スウェーデンのコーラス・グループ、ABBAの代表曲の一つで、1976年にリリースしたシングル
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%83%B3
Wikipediaより引用
『サタデー・ナイト・フィーバー』(英: Saturday Night Fever)は、1977年製作のアメリカ映画である。監督はジョン・バダム。ジョン・トラボルタの出世作である。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%BF%E3%83%87%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC
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Wikipediaより引用
ホーレ・フェルスのヴィーナス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%81%AE%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%82%B9
ウィーン自然史博物館ホームページ
ヴィレンドルフのヴィーナス
https://www.nhm-wien.ac.at/presse/top10/venus_of_willendorf
文中で引用した参考文献
◉「人類進化大全―進化の実像と発掘・分析のすべて」
クリス ストリンガー (著), ピーター アンドリュース (著), Chris Stringer (原著), Peter Andrews (原著), 馬場 悠男 (翻訳), 道方 しのぶ (翻訳)
出版社 : 悠書館; 改訂普及版 (2012/7/1)
(ガルゲンベルグのヴィーナスの白黒写真が掲載されています)
◉「生物の進化 大図鑑」
マイケル・J・ ベントン 他[監修]
小畠郁生[日本語版監修]
河出書房新社 2020年6月20日初版発行
(ガルゲンベルグのヴィーナスのカラー写真が掲載されています)
◉『増補新装[カラー版]西洋美術史』
監修:高階秀爾
発行日: 1990年5月20日初版 2002年4月10日第37版 2002年12月10日増補新装初版 2004年9月20日増補新装第4版
発行所:株式会社美術出版社
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参考、引用させて頂いた著作の著者の皆様に感謝と敬意を表します。