公衆トイレはミニマルアートだ!
2020年12月9日
■なんとなくミニマルアート好き♡
突然ですが、皆様ミニマルアートはお好きですか?僕は好きです!
(好きだと書いておきながら語れるほど、詳しくはないです。なんとなくミニマルっぽいものが好きなゆるいファンです)
今回は、男性用公衆トイレとミニマルアートについて書いていきます。(女性用は使用したことがないので書けません)
「おいおい、まてよ。ミニマルアートってなんや?」という方もいるかもしれないですが、この下のリンクを見て察してくださると幸いです。
MOMAのホームページ
https://www.moma.org/calendar/exhibitions/5076
ドナルド・ジャッド(Donald Judd 1928ー1994)の回顧展のページ
また、下の画像の本の表紙の作品を見て、なんとなくこんな感じの作品か〜と思ってくださるとありがたいです。
と、ここで中日新聞の担当さんに
「もう少しミニマルアートの定義をちゃんと書いてくださいよ!」と言われましたので、もう少し説明します。
■ミニマルアートとは?
ミニマルアートというジャンルの定義は、実際にはあるようで無いようなものですが、
上の画像の中の1冊「ミニマリズム」から引用させてもらいますと
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『ミニマリズムという用語は、1960年代に幾何学的な技法を全体にあるいはシリアルな形で用いて新しい種類の抽象芸術を生み出したアメリカのアーティストたちの活動を表す言葉として生まれたものである』
引用元「ミニマリズム」 (日本語版)ジェイムズ マイヤー ( (編集) 翻訳:小坂 雅之
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この上記が、僕の考えるミニマルアートの基準となっております。
これを踏まえて、僕が考えるミニマルアートのポイント3つあげます。
(1)ミニマル、幾何学的
(2)シリアル(連続的)
(3)なにもない空間も作品と捉える
「あ〜わかった、わかった、無機質なモノが並んでるのを作品と称しているのを美術館で見たことあるわ〜〜」
と思い出していただけたら幸いです。その「無機質なモノが並んでる」のが、私の好物なのです!
この3つは、僕が個人的に考えるポイントです。『(3)なにも無い空間を作品と捉える』は、上記ミニマリズムからの引用にはありませんが、個人的にプラスしました。後で(1)(2)との関連を説明しようと思います。
とにかく、この3つのポイントを押さえて、公衆トイレを見ていきましょう。
まず下の図を見てください。これはトイレで実際に見かけた傘用フックの例です。
■ポイント(1)ミニマルな形、ミニマルとは何か?
下の図のA、Bには壁に向かってフックを垂直に固定するためのネジが存在するはずですが、外からは見えません。
これは、部品の継ぎ目の位置を工夫して、ネジの頭が見えなくなるよう工夫していると推測できます。
何故、ネジの頭を隠すのか?それは!!(たぶん)ミニマルに、ミニマルに、見せるために(だと思います)。ミニマルにしようとしているのでミニマルアートなのです。
(掃除しやすくするためにミニマルにしているとも考えられますが、、)
『ミニマルってなんや?シンプルとどう違うんや?』と思った方もいるかもしれません。翻訳を見ると「ミニマル=最小限」「シンプル=簡素、単純」となっています。
上記のフックの例で考えると、ただシンプル(簡素)であるならネジが見えても良いはずです。形体として、最小限であろうとするためにネジの頭の凹凸を隠す。フックとして必要のない部分の形体を削ぎ落とす。これが形体としてのミニマルなのです。
「フックがミニマルなのはわかったけど、それ公衆トイレじゃなくて、単にフックのデザインがミニマルっぽいだけじゃないの?」
と、突っ込まれそうですが、先ほど上げた3つのポイントの(2)の『シリアル、連続的』を思い出してほしいのです。
■ポイント(2)シリアル、連続的
と、ここで
「傘用フックてなんや?そんなもん男性用公衆トイレにあったけ?」
という人(と女性)のために説明します。
▽公衆トイレの傘用フックとは?
流石に公衆トイレで写真を撮るわけにいきませんので、記憶を元に図を描いてみました。
傘用のフックは男性用便器の横の壁面に下の図のような形で付いています。駅や商業施設にある、わりと新しい男性トイレでよく見かけるような気がするのですが、どうでしょうか?いつ頃から導入されるようになったかはわからないです。
このフックは、壁に同じ高さで等間隔で設置されています。これがポイントの『(2)連続的』に相当すると考えます。これで、フックのデザインがミニマルだからという理由だけでミニマルアートだ、と感じている訳ではないということが、お分かりいただけたかと思います。
■ポイント(3)なにもない空間も作品と捉える
そして次に、公衆トイレがミニマルアートに見える。もう一つのポイント『(3)なにも無い空間も作品と捉える』ですが、ポイント(2)の『連続』で、フックが連続しているのを一つの作品と捉えるならば、そのフックとフックの間の「何も無い空間」も作品と捉えることができます。ただ、この場合、間に便器が挟まっているのでわかりにくいです。そこで、もう一つ私が公衆トイレがミニマルアートだと思う理由である象徴的な空間、『鞄を置くスペース』について説明いたします。
▽鞄を置くスペース?それどの部分のことよ?
もう散々ネタになっているので今更ですが、下記の図のように用を足す時にカバンが落ちてくるというネタがあり、その中に出てくるカバンを置く空間のことです。(実際はカバンを置くためではなく、配管の関係でこのような構造になっていると思うのですが、この辺の本当の理由は知りません)
この空間は本来壁のはずの部分が凹んでるように感じられる空間なのです。私には、この壁全体がミニマルな彫刻に見えるのです。
どうして何も無い空間が「作品」として意識されるのかを次に説明いたします。
■幾何学的でミニマルな形が空間をより意識させる
僕が描いた色々な種類のフックのスケッチがあります。上記のスケッチのフックは、円筒形を使うことで、凹の部分を形として意識させられます。
これは、ミニマルアートで同じ形体のものを連続して配置することで、物と物との間の空間を意識させる手法と同じなのです。
図の(C)の円筒形が折れたような形のフックも、(D)円筒形に垂直に小さな円筒形がついた形のフックもある意味、連続する形と捉えることができ、その形と形の間の空間を意識させるようになっています。
トイレのカバンを置くスペースも壁が床から伸びる垂直の線の延長線を意識させたうえでの、なにも無い空間なのです。
幾何学形を使用すると、直線や円の欠けた部分の形を脳が無意識に補完するので、その作品周辺の空間をより強く意識する効果があります。ミニマルな幾何学形を用いることによって、なにもない空間を作品に含まれた空間として見ることができるのです。
同じモノが複数並んでいるだけが、連続的な形だという訳ではなく、ミニマルな形の中にも連続的な要素が含まれているのです。
以上が「僕が公衆トイレがミニマルアートみたいだなと思う理由」なのでした!
最後に、紹介したい公衆トイレのミニマルアートがあります。
これはもうフックではなく、荷物を置く空間の上面の凹みと側面の凹みによって傘を置けるようになっております。これはもう、本当に傘か杖しか引っ掛けることができません。究極にミニマルだと思いました。
以上、「公衆トイレはミニマルアートだ!」でした!
注意:あくまでも私の個人的な見方です!実際の作品を美術館や作品集で見てください!また、現在新型コロナ禍なので外出先でトイレに行くときは、十分な感染予防をして行ってください。
補足:
ミニマルアートというジャンルで括られた作品でも、作家によってコンセプトは様々です。下手に作家名や作品を例に出しますと、
「ソル・ルウィットはミニマルじゃなくてコンセプチュアルやろ」とか、「ブランクーシはちゃうやろ」とか「ステラは初期だけやん」と怒られますので、細かく書きませんでした!本当のミニマルアートについては、ちゃんとした専門書を読むなり、実際の作品をみてください!
ポイントとしてあげた3つは、ミニマルアートに限らず、単なる抽象彫刻やインスタレーション作品、古典の具象作品にもあてはめることができますが、特にミニマルアートが、この3つのポイントを強く感じるので、例としてあげました。厳密には、もっと細かい説明が必要だと思います。また、1960年代というのも重要なポイントですが、今回は割愛しました。
画像で取り上げた作品集詳細、画像左から
「Richard Serra Sculpture 1985-1998」
著者:Richard Serra
発売日 : 1999/6/1
出版社 : Museum of Contemporary Art
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「ミニマリズム」 (日本語版)
ジェイムズ マイヤー (編集)
翻訳:小坂 雅之
発売日 : 2011/5/1
出版社 : ファイドン
表紙の作品はカール・アンドレの作品[CopperRibbon]1969年
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「Donald Judd」
著者:David Raskin
発売日 : 2017/9/19
出版社 : Yale University Press