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芸術は漠然だ!~斉と公平太のムダに考えすぎ~

平安時代の将棋の駒を見て考えたこと。

2020年8月25日

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興福寺旧境内から出土した平安時代(11世紀)の将棋の駒(奈良県立橿原考古学研究所附属博物館蔵品)


上記の画像は興福寺旧境内から出土した平安時代(11世紀)の将棋の駒です。

昨年(2019年11月)東京の池袋にある古代オリエント博物館で開催された『奈良県立橿原考古学研究所附属博物館蔵品巡回特別展 しきしまの大和へ』で筆者が撮影したものです。(ちゃんと、奈良県立橿原考古学研究所附属博物館さんに掲載許可をもらいましたよ!)

興福寺旧境内から出土した平安時代(11世紀)の将棋の駒(奈良県立橿原考古学研究所附属博物館蔵品)


展示のクレジットには「将棋はインド発祥で平安時代に日本に伝わった。」と書いてあります。

興福寺旧境内から出土した平安時代(11世紀)の将棋の駒(奈良県立橿原考古学研究所附属博物館蔵品)


「将棋はインド発祥で平安時代に日本に伝わった。」と書いてある展示のクレジット


将棋もチェスも同じ古代インドの「チャトランガ」というゲームにルーツがあるらしいのです。

前回記事:緊急特別企画「祝!藤井聡太七段、最年少タイトル獲得」に便乗させていただきます

僕はこれまで
「各地で独自に将棋(チェス)に似たようなゲームが生まれていて偶然似ていた」と思っていました。

この展示を見て違うと知り、素朴な疑問が浮かびました。

それは、
『なぜ、日本(もしくは各国)で、将棋(チェス)に似たようなゲームが独自で生まれなかったのか?』という疑問です。

今回はこの理由について考えていきたいと思います。


僕がこの疑問について友人のHくんに話したら、

「それは、その当時の人たちは生きるのに精一杯で、それどころじゃなかったんだよ。オリジナルゲームを思いつく暇なんか、なかったんじゃないかな?」

という答えが返ってきました。これはあくまでも友人Hくんの推測ですが、まあ、それも一理あるかもと思いました。

ただ、古代インドでは、ゲームを思いつく余裕があったのか?という疑問もあり、ちょっとこの説明だけでは納得できません。

そこで、自分が考えたのは『人口が関係あるのではないか?』ということです。

当時、古代インドには日本より多くの人が生活していたはずです。(今もですが)。「3人寄れば文殊の知恵」ということわざがあるように、1人よりは3人の方が良い知恵が浮かびそうです。

とはいえ、ただ単純に人口が多ければ多いほど良いかといえば、そうでもない気もします。「烏合の衆」という言葉もありますし。

よって人口に「人口密度や、情報が移動できる速度」を含めたものが、アイデアの誕生に関係しているというのが私の推測です。

このことから
『うむ、この作品は人口密度が高いけど、全体の人口は少ないとこの作品だね、』
とか、
『この作品は人口密度は低いけど、人口は多い作品だね』
とかいう美術批評があるかも?ということです!

ただ、現在では通信が発達しているので、大昔のように人口の多さがイコール情報の多さと考えることはできません。

「結局この今回のコラムの結論はなんなのよ?!!」

と、中日新聞プラス担当者に怒られそうなので、結論を書きますと、

「本当の意味でオリジナルを考えるのは大変で、自分一人で考えついたつもりでも、実は多くの先人の知恵と知識の上でなりたっている。そして、それは国境や海を越えてきたものだったりする」ということです!

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補足と参考資料一覧

「最近人口と美術の関係が気になっているんすよ」と、お世話になっているK先生にメールしたら、また良い本を教えていただきました。

それが、上記画像の「文化進化の考古学」という本でして、この本には上記の疑問に対してヒントになるようなことがたくさん書いてありました。

「生物進化の考え方は、祖先から継承されてきた文化進化にもつかえる。歴史科学構築の基盤を提供する研究成果」
帯文より引用

非常に考え方の参考になる内容で、影響を受けたので2回前のコラムで直接引用していないにも関わらず、参考資料一覧の中に入れたくらいです。

まあ、しかし、この本の著者の皆さんがこのコラムを読んだら「全然内容を理解してないじゃん!」と怒られてしまいそうですが、まあ、作品作りのインスピレーションを得るという意味で、非常に影響を受けております。

もしこのコラムを読んでいる人の中で美術作家を志している学生がいたら、ぜひ読んで欲しい一冊です。

『奈良県立橿原考古学研究所附属博物館蔵品巡回特別展 しきしまの大和へ』図録


そして今回のコラムを書くきっかけとなった『奈良県立橿原考古学研究所附属博物館蔵品巡回特別展 しきしまの大和へ』、この展覧会もK先生に教えていただき見に行きました。

この展示を「古代オリエント博物館」というとこで見たということは、前述したのですが、僕はこの展示を見たあと、
「東京って本当にいろんな博物館や美術館がたくさんあるな〜、誰が見にいくんだろう?古代オリエント博物館って」という博物館に対して大変失礼なことを思い、東京近郊に住む友人Hくんにこの疑問を話したところ、

「斉藤くん、まず斉藤くんが見に行ってるじゃん。それにさ、それが文化ってもんじゃないの?それが東京ってとこの良さだよ」

と返されて、それもそうだよな〜と思った次第です。(単純に美術館、博物館の多さイコール文化の高さということは言えませんが)


今回コラム内で紹介した「しきしまの大和へ」は、現在巡回しているので興味のある方、下記のリンクを参照して見に行ってみてください(新型コロナの影響で日程に変更があるかもしれませんので、行く前にHPをご確認ください)。

奈良県立橿原考古学研究所附属博物館蔵品巡回特別展
「しきしまの大和へ」

九州国立博物館
https://www.kyuhaku.jp/
令和2年7月28日(火)~12月20日(日)

島根県立古代出雲歴史博物館
(2021年03月19日~2021年05月17日)
https://www.izm.ed.jp

今回のコラムで平安時代の駒を撮影した博物館
古代オリエント博物館のHP
http://aom-tokyo.com/

蔵品の平安時代の将棋駒の使用許可をくださった、
奈良県立橿原考古学研究所附属博物館のHP
http://www.kashikoken.jp/museum/top.html

奈良県立橿原考古学研究所附属博物館さん、ありがとうございました!

以下参考資料一覧

参考資料


画像左から

●『文化進化の考古学』
編著者:中尾 央 松木武彦 三中信宏
執筆者:有松唯 井原泰雄 田村光平 中尾 央 中川朋美 野下浩司 松木武彦 松本直子 三中信宏 山口雄治
発行:勁草書房
2017年8月5日第1版第1刷発行

●ものと人間の文化史110 『チェス』
著者:増川宏一
発行:財団法人 法政大学出版局
2003年1月30日 初版第1刷発行

●平凡社ライブラリー172 『将棋の起源』
著者:増川宏一
発行:株式会社 平凡社
1996年11月15日 初版第1刷

●小学館入門百科シリーズ40『早わかり 将棋なんでも入門』 
著者:原田泰夫 田辺忠幸
発行:株式会社小学館
1975年5月15日 初版第1刷発行
1991年1月1日  第41刷発行

●新潮選書『ヒトはこうして増えてきた 20万年の人口変遷史』
著者:大塚柳太郎
発行:株式会社新潮社
2015年7月25日発行

●『奈良県立橿原考古学研究所
附属博物館蔵品巡回特別展 しきしまの大和へ』図録
編集 :小栗明彦
発行 東京新聞
2019年10月5日発行 1版1刷
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参考にさせて頂いた著作の著者の皆様に感謝いたします。

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