大学名称変更騒動と「冗談が言えない時代」の到来
2020年1月23日
◉大学の同一名称変更騒動
昨年、京都市内にある私立大学「京都造形芸術大学」が同じく市内にある「京都市立芸術大学」の通称「京都芸術大学」に校名を変更すると発表して話題になった。京都市立芸術大学は日本でもっとも古い芸術大学と言われている。※参考リンク
京都造形芸術大学ホームページ
2019年8月27日(火)
開学30周年「グランドデザイン2030」と「京都芸術大学」への名称変更(2020年4月1日~)について
京都芸術大学ホームページ
【令和元年10月8日付】
京都造形芸術大学の名称変更について
この件で思い出したことがある。いまから30年前、高校の担任が
「私立〇〇大学(名古屋市内)の偏差値が上がってきているのは、県外市外からの受験生が、国立の名古屋大学と間違えて受験しているからだ」
という話をしたことだ。
◉30年前、高校生の時の思い出
その当時僕は
「んな、アホな、んなわけないだろ冗談いうなよ」
と聞いていた。しかも名前のかぶりは1文字だけ。
しかし、事実はどうかはわからないが、あのとき担任は本気で言っていたのかもと、この件を受けて思ったのである。また、昔見たギャグマンガの中で東大と名前が似ている大学を東大と間違えるというような話があった(マンガの名前は忘れてしまった)。
タイムマシーンにのって30年前に戻って、今回の騒動について自分に話したら、きっと
「いくらなんでも、大学がそんなギャグマンガみたいなことしないよ、似てるのならまだしも、名前を同じにするなんて」
と信じてもらえないだろう。
◉何故わざわざマイナスイメージになるようなことをするのか?その理由を推測する
この名称変更騒動について、メディアでみたかぎり変更に批判的な意見が多数だったと思う。某大学は、このような反応を予測できないはずはない。わかっていたはずだ。あきらかにイメージダウンである。それでもこのような名称変更を発表したのは何故か?
それは、やはり受験者数を増やすのが目的だと考えられる。
「ちょっと待てよ。なんで受験者数が増えるんだよ。イメージダウンになるようなことしてるんだから減るだろ」
と思うのが普通だ。では校名を変更すると、なぜ受験者数が増えるのか説明していこう。以下、個人的な推測である。あくまでもあくまでも推測である。
ポイントは3点
(1)よく調べないで受験する人が一定数いる。
(2)名前を同じにするとマジで間違える人がいる。
(3)悪名は無名に勝る戦略、炎上商法
この3点について、順に事例を挙げて説明していく。
まずポイント(1)
(1)よく調べないで受験する人が一定数いる。
僕の友人サラリーマンTくん(愛知県にあるA県立芸術大学卒)が、勤めている会社の採用試験の面接官をやったときのことである。受けにきたコの一人が愛知県内の私立美術大学卒だったので、Tくん「僕も美術大学だよ!A県立芸術大学だよ!」
と美術系ナカーマ的なフレンドリー感で、話しかけたらしいが、
「A県立芸術大学ってなんですか???」
と真顔で返されたという。
Tくん「いや、長久手にある・・・」
面接のコ「????ごめんなさい、知りません」
そのコはA芸術大学を存在を知らなかったのである。愛知県内にある美術系大学は3校。Tくん的には県立=国公立ということで県内の元美大生なら誰でも知っているであろうと思って話しかけたらしい。僕もこの話を聞いた時、驚いた。
これは他の美術系大学を調べずに受験しているということだ。そして、もうひとつは在学中の4年間、同級生との間でA芸術大学のことが話にあがってこなかったことになる。もしかしたら、同級生もA芸術大学を知らなかったのかもしれない。もしくは知っているが、話題にださなかっただけかもしれない。この面接にきたコは確実に他の大学を調べずに受験しているのは確かだ。実は、このコが特別なケースではないことは他の場所でも色々聞いている。
この話をもって、そのことがダメだという話ではない。
むしろ学歴にこだわらない素晴らしい姿勢だとも言える。
間違っても「最近の若い奴はダメ的な話」に落とし込んではいけない。
とはいえ、このような人が1人でも存在するということは、名称の変更はやはり有効だと思われる。
ポイント(2)
(2)名前を同じにするとマジで間違える人がいる
ポイント(2)についての事例をいくつか紹介しよう。
例1)俳優の東出昌大さんを東大出身だと思ってる人が結構いるらしい(東大出身ではない)
「東出昌大 東大出身」で検索すると、関連記事が出てくる。東出昌大さんの名前は本名だ。徹子の部屋出演時に「東大出身だと思ってた」と言われて「よく言われます」と答えている。このように人名と大学名でさえ間違えてしまう。
例2)某国会議員が問題発言をした時、同じ名字の別の議員の事務所にクレームが寄せられた
2018年の日大アメフト部の騒動のときも関係のない日本体育大学に間違えてクレームが寄せられた。これと同じようなことは他にも聞く。犯人と同じ名字、不祥事を起こした会社と名前が同じという理由で、間違えてクレームを入れる。
クレームを入れるという能動的で正義感あふれる行為、電話番号を調べるという手間を惜しまないというような人でさえ、間違えてクレームを入れるのだ。大学の名前を同じにしたら、やはり間違える人は確実にいる。
ポイントの(1)と(2)を踏まえた上でのポイント(3)
(3)悪名は無名に勝る戦略、炎上商法
今回の騒動がニュースになったり話題になれば、この2つの大学を混同している層に対して、良い宣伝になると思っているのかもしれない。名前を同じにしたらどっちがどっちかわからなくなる。はっきりいって社会のほとんどの人が美術系大学そのものや、実技試験の難易度には興味はない。
このことから、今回の名称変更騒動のマイナスイメージで減る受験者数より、名称を変えた効果による受験者数増の方が上回ると判断したのだろう。
少子化の中で、お金のことだけを考えた判断としては間違っていない。
◉看板の取り替え工事費用、新ロゴデザイン費用
実は僕が卒業した大学も、名称の変更が2008年にあった。
名古屋造形芸術大学から名古屋造形に変更された。この変更自体は、まあ問題ない。しかし、噂で聞いた校舎の看板の取り替えやロゴデザイン変更の費用の額に驚いた。噂なので本当の金額はわからないが、無料ではないのは間違いない。ボランティアで看板の取り替え工事はしないはずだ。看板会社のホームページ等で相場を見たりもしたが、やはりそれなりの金額がする。
「そんな金があるなら今通ってる学生に還元しろよ」
と思ってしまう。まあ大学経営の部外者である僕個人の感想である。このような看板取り替え工事の出費よりも、名称変更による利益が勝ると予想しているのだろう。
ここまで読んで某大学の卒業生や在学生は、不愉快な気持ちになるかもしれない。非があるとすれば、名称を変更しようとする大学側だろう。その辺は誤解のないようにしたい。
大学教授や講師の中にも、名称変更をイヤだな~と思ってる人もいるだろう。「批判してクビにされたらな~」と言えないのかもしれない。「こんな大学こちらから辞めてやる」と思っている人もいるだろう。
すぐに次の仕事が決まる人やお金に困ってない人は良いが、そうでない人は大変だろう。
◉冗談が言えない時代
ここまで書いて、僕が結局言いたいことは、冗談が言えなくなるからやめてほしいということだ。たとえば、このコラムのタイトル「芸術は漠然だ!」は岡本太郎の「芸術は爆発だ!」のもじり、パロディである。
しかし、この大学という本来真面目であるべきところに冗談みたいな名称変更を本気でやられたら、このコラムタイトルでさえ、
「パクリだパクリだ!」と言われて、
「いえ、パロディなんです、」と返しても
「パロディといえば、許されると思うなよ!京都の美術大学の件もパロディだって許せるのかよ!」
ということになりそうなのである。
「本当はキミ、岡本太郎の言葉に便乗しようと思ってるんだろう。胸に手をあてて、正直に言え!良心はあるのかキミには!良心は!!」
と言われたら
「そーいや便乗しようと思ってましたわ、、す、すみません。」
と思わず謝ってしまうだろう。
パクリとパロディの違いを説明するのは、できなくもないわけじゃないだろうが難しい。そして、現実に単なるパクリをパロディだと言い逃れるケースもでてきている。
いまは、もうパロディは封印したほうがいいだろう。
昨今、現実のほうが冗談やパロディを遙かに越えてしまった気がするのである。
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