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芸術は漠然だ!~斉と公平太のムダに考えすぎ~

「聖戦士ダンバイン」と「ウンベルト・ボッチョー二」!

2018年12月11日

突然ですが、皆さんは上記2つの画像を見て似ていると思いますか?

左はアニメ「聖戦士ダンバイン」に登場するロボのプラモデル(腕や羽は外してある)。で、右は「ウンベルト・ボッチョー二」の美術作品。30年前、僕はこの2つを見て似てると思ったのです。

今回は、その「似ている」と思った理由について書いていきます。


毎度毎度のことながら同じことを既に誰かが書いているといけないので、

「聖戦士ダンバイン」「ウンベルト・ボッチョー二」

という2つのワードを組合わせて検索しましたが、ないようなので書かせていただきます。(ウンベルト・ボッチオー二と表記している本も多くありますが今回はボッチョー二表記で書いていきます。)


◆ウンベルト・ボッチョー二(Umberto Boccioni1882~1916) 

ファブリ世界彫刻集〈10〉ウンベルト・ボッチョーニ (平凡社、1972年)


上記画像の本「ファブリ世界彫刻集〈10〉」の表紙の彫刻作品

タイトル「空間における連続性の唯一の形態」(1913)

この作品の作者の名前やタイトルは、知らなくとも美術の教科書等で、一度は作品を目にしたことがあるはず。
(注:本によっては「空間の中のユニークな連続の形態」と翻訳されているものもありますが、今回は「空間における連続性の唯一の形態」で書いていきます)

この作品の作者こそ、イタリアの芸術家ウンベルト・ボッチョー二さんなのである。

◆巨匠中の巨匠中の巨匠

ウンベルト・ボッチョー二は「巨匠中の巨匠中の巨匠」「巨匠中の巨匠」ではない、さらにその中の巨匠なのである。
僕が「巨匠中の巨匠中の巨匠」と言うのには理由がある。

その理由とは、まず大学の西洋美術史の講義の教材で使っていた「西洋美術史」(監修=高階秀爾 美術出版)という本に載っているからである。

「西洋美術史」(監修=高階秀爾、美術出版 注:付箋は筆者がつけたもの)


膨大な美術作家の巨匠の中から選び抜かれて残った美術作家なのだ。しかし、ここまでなら、まだ巨匠中の巨匠である。ボッチョー二さんはそれだけではない。

なんと、この本の付録の年表にも作品の図版が使われているのである。面積の狭い年表への作品掲載は、選ばれし者の中からさらに選ばれなければならない激戦区。これが巨匠中の巨匠中の巨匠のゆえんなのである。

「たった1冊の本を基準にきめるなよ!!」

と言われそうであるが、まあ、そう言うのももっともだと思うのだが、しかし聞いてほしい。それだけではないのだ。

◆「平等院鳳凰堂」と「ボッチョー二」

「日本の10円硬貨」と「イタリア 20セント ユーロ 硬貨 2002年」


このボッチョー二さんの作品「空間における連続性の唯一の形態」はイタリアの硬貨の図案に使用されているのだ。日本の硬貨で芸術作品が使用されているといえば、なんだろうか。そうだ!建築物の「平等院鳳凰堂」が十円玉に使用されている!「平等院鳳凰堂レベル」の作品だよ!これでボッチョー二さんを知らない人にそのすごさが伝わるだろうか?

「おい!!イタリアと日本の貨幣のデザイン採用基準は、同じじゃないだろ!」

という声は、今回とりあえず横においておく。

そんな、ボッチョー二とアニメ「聖戦士ダンバイン」となんの関係があるのか?ぶっちゃけ全く関係ない、無関係だ。がしかし、自分的には関係がある。


◆テレビアニメ「聖戦士ダンバイン」

聖戦士ダンバイン 1/72 ダンバイン プラモデル


そんな自分的な関係を説明する前に、聖戦士ダンバインについても知らない人のために少しふれなければならない。

1983年のテレビアニメである。
もう、古いアニメの範疇にはいるであろうか?35年前である。今回、コラム用にプラモを購入した。35年も前のアニメのプラモが、いまだに購入できることのすごさ。2017年には、DVDBOXも販売している。根強い人気があるのだ。

僕はアニメ研究家でも、アニメマニアでもなんでもない。テレビ放映時、リアルタイムでときどきぼんやり見ていただけなので、このアニメについて、何か書いたりする資格はない。知ったかぶりするつもりもない。ただ最低限、伝えなければいけないことは以下の放送枠の流れである。
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中京広域圏 名古屋テレビ(NBN)土曜 17:30 - 18:00

機動戦士ガンダム
(1979年4月7日 - 1980年1月26日) 
無敵ロボ トライダーG7
(1980年2月2日 ‐ 1981年1月24日)
最強ロボ ダイオージャ
(1981年1月31日 ‐ 1982年1月30日)
戦闘メカ ザブングル
(1982年2月6日 ‐ 1983年1月29日)
聖戦士ダンバイン
(1983年2月5日 ‐ 1984年1月21日)
重戦機エルガイム
(1984年2月4日 ‐ 1985年2月23日)

(Wikipediaと日本サンライズのホームページから抜粋引用)
ーーーーーー

これを見ても「なんのこっちゃ?」と言われてしまったら、どうしようもないが。

「機動戦士ガンダム」の認知度は、それなりに高いはずなので、ダンバインを説明するのに、このように紹介するしかない。つまり、ものスゴく大雑把にいうと、ガンダム以降の80年代ロボットアニメということが言いたいのだ。
「ロボットじゃないよ!!オーラバトラーだよ!!」というお叱りを受けそうではあるが、文中の進行上勘弁して頂きたい。


◆美術史の時間軸と個人の時間軸

1/72 ダンバインのプラモ仮組み中


さて、ようやく本題に入ろう。

今回、問題にするのは、このテレビアニメの監督や、ストーリーや演出、作画についてではない。登場するロボットのメカデザインである。

前述した通り、ダンバインの放送は1983年、自分が小学5年生のときである。現代美術にぼんやり興味をもちはじめる中学より前なのである。僕はボッチョー二の「空間における連続性の唯一の形態」をはじめて見た時(たぶん中学生)の感想は、

「これ聖戦士ダンバインやんけ!」である。

聖戦士ダンバインに登場するロボットのデザインとの類似性を感じたのだ。

ダンバイン プラモデル仮組み 無塗装


ここから2つの問題が浮上してくる。

これは、まず第一に「美術史の時間軸は個人の体験する順番とは無関係」という問題である。

先に「空間における連続性の唯一の形態」を知っていたら、
ダンバインを見た時

「これボッチョー二やんけ!」と思っただろう。

聖戦士ダンバインに登場するメカ「ライネック」 1/72スケール プラモデル


ダンバインに登場するロボをデザインしたのはメカデザイナーの「宮武一貴」氏と「出渕裕」氏、これまた巨匠中の大巨匠である。いろいろなアニメや特撮のメカデザインをしている。この影響力たるや、ものすごいものがある。

先にも書いたように、美術作品より先に目にするものがアニメやマンガである確率が高いからである。僕もこの両巨匠の影響を大いに受けている。個人的体験としては1913年より1983年が先なのである。

美術史の時間軸と個人が体験する順番を一致させることは現実的には不可能である。そんなあたりまえの事実。この事実が重要なことだと個人的には思っている。このとについては、また機会があれば、詳しく書いていこうと思うが、今回は省略。

しかし、今あらためてみると似てない。「ぜんぜん似てねーよ!」と思う。だいたい、その当時のダンバイン関連の本にもボッチョー二の影響云々なんて、話がでてきた記憶はない。無関係のはずである。

ということで、第2の問題は「似てないのに、どうして類似性を感じてしまったのか?」ということだ。


◆抽象化された人体像

ライネックのプラモデル 仮組み 無塗装


僕はそのとき、なぜ似ていると思ったのか。そもそもアニメは2次元、彫刻作品は3次元である。制作コンセプトも全く異なるので、普通に考えれば似ないはず。

ただ、この当時のロボットアニメは玩具化(プラモデル等)を前提にしたものが多い。つまり3次元ありきなのだ。よって、デザインも立体を想定したものになる。

一般的に工業製品をデザインするときは、現実的な使用目的へ向かってデザインされる。しかし、このアニメの中のロボットメカのデザインの場合、その設定される目的が、虚構の物語の世界観という抽象的なものなので、必然的に抽象化に向かっていかざるをえない。

こういった点から、アニメのロボットは「抽象化された人体像」という見方もできる。アニメのロボットデザインは、美術とは違う人体造形の抽象化のアプローチなのである。

そして「人体像の抽象化」を、人類に共通するようなある種の美の規範の中で制作すると、国や時代、ジャンルやコンセプトも飛び越えて、最終的に同じような形態になってしまうこともあるのだ。


これこそが、僕がダンバインとボッチョー二が似ていると感じた理由だ。


つまり、僕は「抽象化された人体」という共通性を「ダンバインのメカデザイン」と「空間における連続性の唯一の形態」に無意識に見いだしていたのである。

30年前は似ていると思い、今は似てないと思うのは、他にもいろいろ作品を見たり、美術に関する知識が増えたからである。

今回、検証のために聖戦士ダンバインにでてくるロボのプラモを「空間における連続性の唯一の形態」に近い色で着色してみた。腕と背中の羽を外しただけで、本当の意味で改造と言えるようなことはしていない。台座は「空間における連続性の唯一の形態」のように、右足と左足に独立したものを置いた。

ちなみに、コラムのトップ画像でボッチョー二と比較しているのが、ダンバインに登場するロボ「ライネック」で、下の画像に使用しているプラモがアニメのタイトルにもなっている主役のロボ「ダンバイン」である。

ダンバインのプラモ改造とボッチョー二比較


「やっぱり、似てねーじゃねーか!!!」

とか、

「無理矢理似せてるだけだろ!!」


と言われそうである。

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